ラピダス社の進出並びに北海道バレー構想が北海道の地方創生にどのような効果をもたらすか?―人口減少問題・地方分権構造改革等調査特別委員会で質問しました―(2023年7月13日)

 世界最先端の半導体の量産を目指すラピダス社の千歳市への進出が決まり、地元関係者はもちろん全道的な話題となっております。


 ラピダス社の進出並びに同社の小池淳義社長が掲げる北海道バレー構想は、製造業をはじめとする二次産業の比率が低く(北海道17.6%、全国平均26.5%)、大規模な雇用を作り出す上で長年課題が指摘されてきた北海道の産業構造を大きく変える大チャンスです。何よりも、半導体という現代社会に欠かせない技術をめぐり世界各国がしのぎを削り、特に中国などの覇権主義国家が主導権を握ろうとしている中、日本、アメリカ、韓国、台湾といった自由と民主主義を旨とする国々が手を取り合い、それに対抗していくことは、世界の平和と安定に良い影響をもたらすものです。それに北海道が大きく参画できることは、本道にとってこの上ない発展のチャンスです。

 千歳市から離された日本海側の留萌管内を選挙区とする私ですが、ラピダス社の進出には非常に期待をしている一人です。しかし、短期的に見て、働き手が道央圏に集中してしまうのではないかという地元の皆様から寄せられる懸念についても大いに共感し、危機感を共有しております。

 当該委員会は人口減少問題をはじめとする地方創生について議論する委員会であり、担い手対策等は経済委員会が主管となります。あくまで北海道の地方創生にとってラピダス社の進出並びに北海道バレー構想がどのような効果をもたらすか、またそれが道央圏だけでなく全道に地方創生の効果をもたらすための取組として今後どうするのか、質問しました。

 道からは、ラピダス社の進出並びに北海道バレー構想が道央圏の人口動態にどのような影響を及ぼし得るか、現時点では確たることは言えないとしつつも、地域の不安の声を受け止め、「市町村と連携しな、地域特性を生かした産業の振興や雇用の創出、地域に対する愛着の醸成など、人口減少下においても住み続けたいと思える地域づくりに取り組む」との答弁がありました。

 

(浅野)
一 次世代半導体産業と地方創生について
(一)ラピダス社の進出による地方創生への効果について 
 北海道バレー構想をはじめとするラピダス社の北海道進出が本道の地方創生について、どのような効果をもたらし得るかということを以下伺いたいと思います。
 このことによって、これから北海道における人口の増加も見込めるでしょうし、道税収入が上がることも期待されます。何よりも太平洋を隔てた遠いアメリカとかではなく、本道に世界最先端の次世代半導体を量産する施設があるということは北海道の地方創生にとって大きな効果があるだろうと考えております。
 改めて地域創生局の皆様方としては、北海道の地方創生にとってラピダス社並びに北海道バレー構想がどのような効果をもたらすと考えているのか認識を伺います。

【地域創生担当課長】
 ラピダス社の進出による地方創生への認識についてでございますが、デジタル化は、様々な分野でイノベーションをもたらし、地球温暖化やエネルギー問題など、地域が直面する課題の解決に欠かすことのできない技術であり、そうしたイノベーションの鍵をにぎる次世代半導体の量産製造を目指すラピダス社の立地を契機として、道では、半導体の製造、研究、人材育成等の複合拠点の実現に向けた今後の取組の指針となる「仮称・北海道半導体産業振興ビジョン」を年度内をめどに取りまとめることとしたところでございます。
 道といたしましては、このビジョンのもと、産学官が緊密に連携し、企業誘致や人材の育成・確保など各般の施策を戦略的に推進することにより、道央圏のみならず、本道全体の経済活性化と持続的発展につなげていくことが、本道の地方創生にも資するものと認識してございます。

(浅野)
(二)道の移住政策について
 今定例会では、道は「未来をつくる 未来を担う人づくり」として約6.1億円の人材確保・育成並びに北海道移住促進のプロモーションを行う事業を私どもに予算案を提示されていますが、ラピダス社の進出並びに北海道バレー構想を、この取組にどのようにリンクさせる考えでいるのか伺います。

【移住交流担当課長】
 道の移住促進策についてでございますが、道におきましては、コロナ禍における地方への関心の高まりや、新しい働き方の進展など、人々の意識や行動の変容を的確に捉え、首都圏における移住の総合相談窓口である「どさんこ交流テラス」の運営や、移住フェアによる道内各地域の魅力・暮らしの情報発信などの取組を進めてきたところでごさいます。
 ラピダス社における「北海道バレー構想」につきましては、道のデジタルや再エネ関連産業の集積に関する取組と親和性が高いものと考えており、まちづくりにも繋がるよう戦略的に取り組むことが重要でございます。
 道といたしましては、こうした機会を捉え、本道への転入人口の増加に向けて、オンラインと対面でのイベントを組み合わせた若年層や子育て層向けのプロモーションや、北海道型ワーケーションの推進などにより、住みやすく働きやすい北海道の魅力を伝え、市町村の皆様や事業者の方々などオール北海道で道内に人を呼び込む取組を推進してまいる考えでございます。

(浅野)
三)札幌をはじめとする道央圏への人口集中について
 多くの他の議員の皆さんも本定例会で質問をされていたように、北海道全体で見れば人口が増える大きなチャンスですが、増えた人口が千歳市をはじめとする道央圏に集中するのではないかという懸念もあるわけです。
 私の地元でも、特に日頃から人手の確保に非常に苦労されている建設会社の方々とお話をすると、関連施設の建設作業が始まる頃には、その建設作業員の方々だとか関連する様々な下請け企業もそちらにほとんど行ってしまうのではないか、人口の一極集中が進んでしまうのではないかという懸念が寄せられているところです。
 北海道の人口は平成9年以降、全国よりも先駆けて人口減少の局面に入っている一方で、札幌市の人口は増え、1970年では同市への集中度合いは19.5%だったものが2015年では36.3%まで高まっています。
 これを是正すべく道としては、「道と札幌市の連携による人口減少対策共同プログラム」というものの策定による取組を行っていると承知しておりますが、そもそも本道人口が道央圏に偏在することは本道の地方創生にとってどのような影響があると道は認識しているのか伺います。
 また先ほど申し上げたように、道央圏への偏在が年々高まってきたこの流れが、ラピダス社の進出によって一層拍車がかかることに対する懸念があります。これに対する道の認識を伺うとともに、こうした懸念を踏まえつつ、道央圏への人口の一極集中という課題に、今後道としてどのように取り組んでいくのか伺います。

【地域振興監】
 道央圏への人口集中などについてでございますが、本道は、若年層をはじめとする地方からの人口流出によりまして、札幌市への人口集中が年々増加傾向にあり、こうした状況は、基幹産業であります一次産業を中心とした担い手不足や地域医療、身近な交通手段の確保が懸念されるなど、地域の経済や暮らしに大きな影響があるものと認識しております。
 道では、今般のラピダス社の立地を契機といたします経済効果を、道央圏のみならず、北海道全体の経済活性化と持続的発展につなげていくため、年度内に取りまとめることとしております仮称ではありますが、「北海道半導体産業振興ビジョン」のもと、地域の声などを踏まえながら、各般の施策を総合的に推進していく考えでございますが、一方、現時点におきましては、人口動態などに関します詳細な情報が明らかとなっていないため、道央圏の将来の人口への影響を見通すことは難しいと考えてございます。
 いずれにいたしましても、道といたしましては、道央圏への人口集中の緩和に向けまして、市町村と連携しながら、地域特性を生かした産業の振興や雇用の創出、さらには地域に対する愛着の醸成など、人口減少下におきましても、住み続けたいと思えます地域づくりに取り組んでまいります。

(浅野)
 現時点においてラピダス社の進出が道央圏の人口動態にどのような影響を見通すかが現時点では見通しをたてることが困難とのことでした。何度も申し上げたように、現時点でも、人材の確保に大変な苦労をされている、道央圏以外での地方の事業者が非常に不安を抱いているということ、懸念を持っているということ受け止めて頂きたいと思います。
 また地方の私たちもラピダス社の進出を驚異と捉えるだけではなくて、同じ県内に世界最先端の技術を担う施設ができることをいかに自分たちの地域の利益に繋げるか、知恵を絞らなければいけません。
 それを含めて、全道各地にラピダス、北海道バレー構想がもたらす地方創生の効果を波及させるには、市町村の努力もそうですけれども、やはり道の知恵、とくに振興局の存在が大きくなると思います。 現時点で見通しを立てるのが難しいという認識も私は理解いたしますが、改めて今後、ラピダス社、北海道バレー構想が道央圏のみならず、全道にとっても地方創生の大きな力となるような取組をしていただきたい、その事を申し上げて質問を終わります。


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