一般質問4日目の今日、登壇の機会を得られました。
質問の概要
道政執行方針において鈴木直道知事は「安心して住み続けられる地域」と、「北海道の魅力を世界へ発信」の実現のための予算案を提案しました。これらのビジョンを現実のものにするには、道行政を実施に担う道職員の皆様が高い士気をもって、仕事に邁進できる環境づくりが欠かせません。
この観点から、新規職員の入庁式を実施すること、留萌振興局の若手職員がruruメイトという組織を結成し、地域の魅力発信に努めていることを他の部局でも広めることが重要であると提案しました。
その他に、石川県能登半島地震の発生を受け、日本海側でも地震、津波への備えを強化すること、特に冬の時期に小平町から苫前町の海岸線の山側に多くのエゾシカが出てくることを踏まえて安全対策を強化すること等について、道の認識を伺いました。
また、全国的に賃上げへの機運が高まっている今、地域の企業を支える大事なプレーヤーである商工会議所、商工会への道の支援についても質問しました。
更には、昨年12月、留萌市において観測史上最大の降雪に見舞われたことを踏まえ、除排雪を担う事業者への支援の強化と、大雪を逆に観光資源と捉え地域振興を図ることに対する道の認識、今後の取組についても質問しました。
●得られた主な答弁内容
一(一)若手職員との対話について
数ある就職先の中から道庁を選んでくれた新規採用職員に対し、来年度は新たにオンラインも活用した「入庁式」を開催することとし、「北海道の確かな未来のため、私と一緒に挑戦をする職員になってほしい」との思いを直接伝えたい。
二(三)商工会議所・商工会への支援について
地域の中小・小規模事業者に寄り添う商工会議所や商工会は、支援機関としての重要性が高まっている一方で、急速に進行する人口減少より会員数が減少し、その運営を取り巻く環境は厳しさを増している。道として、商工会議所、商工会の運営基盤の強化に向けた取組や連携の支援に努めていく。
二(五)代替道道の整備について
今回の能登半島地震を受け、代替性が確保された道路ネットワークの構築が重要であると改めて認識した。道道苫前小平線は、国道232号の代替道路としての役割が期待されているが、多額の事業費が見込まれており、事業化に向けた課題も多いが、未開通区間の事業化に向けた研究会に対しては、道として今後とも必要となる資料などを提供して参る。
二(七)野生鳥獣対策・交通事故等の防止について
留萌管内では、越冬期、海岸部の道路際に餌を求めたエゾシカの出没が多発し、交通事故が発生していることを踏まえ、小平町からの要望を受けて令和4年度から捕獲事業を行っており、これまで35頭を捕獲している。道としては、今後とも市町村や猟友会などの意見を伺いながら、地域の状況把握に努め、交通事故や農林業被害の減少に向けて、捕獲対策の強化に取り組んでいく。
三(一)観光資源としての大雪の活用について
留萌地域では、留萌開発建設部が地域と協働して、大雪をはじめとした地域の観光資源を活用するための方策などについて検討していくと承知している。道としては、こうした地域の取組に対し、積極的に協力して参る。
質問と答弁
(浅野)
一 道職員の士気向上について
(一)若手職員との対話の機会について
道政執行方針において、鈴木直道知事は安心して住み続けられる地域づくりと、北海道の魅力を世界に発信する政策を掲げ、その実現のために予算案を提示されています。
これらのビジョンを現実のものにするには、私たち議会との真摯な議論を前提としつつも、道行政を実際に担う道職員の皆様の高い意識を持って仕事に邁進できる環境づくりがかかせません。
この観点から、以下、道職員の士気の向上について伺います。
はじめに、若手職員との対話の機会についてです。
令和元年第3回定例会で我が会派の村木中議員から、入庁式の実施について質問をし、知事からは「新たに入庁式の実施について検討する」との答弁がありましたが、その後、コロナ禍の蔓延により、実施できていないと承知しています。道職員としてのスタートを切る入庁初日は、道民のために頑張って働こうと意気込む若者にとって、人生の大きな節目に当たる日であり、知事から直接、歓迎の言葉や思いを伝える入庁式を実施することは、新規採用職員の士気を高め、希望と意欲を持ってそれぞれの職場で活躍してもらうための大切な取組と考えます。来年度の入庁式の実施に関する知事の考えを伺います。
また、入庁式にとどまらず、知事が職員に直接、語りかける機会をこれまで以上に増やすことは、若手職員のモチベーションを高め、長く道庁で働いてもらうためにも必要だと考えますが、知事の考えを伺います。
(知事)
道職員の入庁式などについてでありますが、近年、人口減少に伴う労働力不足などにより、公務職場を含め人材確保が困難な状況となっている中、数ある就職先の中から道庁を選び、入庁していただく新規採用職員は、北海道の未来を担う貴重な人材であると認識をしております。
このため、これまで新規採用職員に対しましては、入庁初日に、訓示やビデオメッセージなどを通じて、私から、歓迎の意や道職員としての心構えなどを伝えてきたところでありますが、来年度は、新たにオンラインも活用した「入庁式」を開催することとし、「北海道の確かな未来のため、私と一緒に挑戦をする職員になってほしい」との思いを直接伝え、意欲を持って職員としての第一歩を踏み出していただきたいと考えております。
また、入庁式に限らず、職員研修など、様々な機会を活用し、全道各地の若手職員に北海道の価値や将来について語りかけるなど、職員一人ひとりが「これからの北海道を創る当事者である」という気概を持って、様々な行政課題に積極的に挑戦できるよう取り組んでまいります。
(浅野)
(二)若手職員の自由な発想による取組の推進について
次に、若手職員の自由な発想による取組の推進について伺います。
留萌振興局では、令和3年に庁内横断的に若手職員が集う組織「Ruru(ルル)メイト」が結成され、定期的に会議を持ちつつ、Instagram(インスタグラム)公式アカウント「rurutime(ルルタイム)」を通じ、天塩町、遠別町、初山別村、羽幌町、苫前町、小平町、留萌市、増毛町の留萌管内1市6町1村の自然、食、地域で頑張る方々の取組並びに、自身が所属する部署での仕事など幅広い魅力発信に取り組んでいます。
このように、若い職員たちが積極的に自分たちの発想でアイデアを出しながら、施策の発案や課題解決に向けた提案などを行い、地域の魅力や強みを発信するという取組は、北海道の魅力を世界に発信することはもちろん、道庁の人材確保にも繋がると考えます。
若い職員が自由闊達な議論を行える職場風土づくりに向けて、道は今後、どのように取り組んでいくのか伺います。
(職員監)
道職員の士気の向上に関しまして、若手職員の能力発揮に向けた取組についてでありますが、人口減少の進行などに伴い、様々な地域課題に直面している中、若手職員が、意欲を持って自由な発想で、課題の解決や地域の魅力発信に積極的に取り組める環境づくりがますます重要であります。
このため、道では、地域でのフィールドワークを通じ、具体的な政策提言を行う研修や、新たな道政課題に対し、政策提案を行う政策開発推進事業を実施しておりますほか、課題解決への優れた取組を行った職員の表彰制度を設けるなど、職員のモチベーションや組織活力の向上に向けた様々な取組を進めてきているところであります。
また、留萌をはじめ、各振興局では、SNSを活用した地域資源の情報発信や、市町村職員との合同研修など、地域の課題解決に向けた若手職員による独自の取組も行っているところであります。
さらに、新たに作成しました「管理職員のためのマネジメント・テキスト」を活用いたしまして、職場内での上司と部下の活発なコミュニケーションがとれるチームづくりにも取り組んでいくこととしており、道といたしましては、こうした取組を充実させながら、今後とも職員のやりがいを高め、新たな挑戦を後押しする職場風土づくりに取り組んでまいります。
(浅野)
(三)多様な人材の活用について
道行政を前に進める為には、若手職員のみならず、世代を超えて全ての職員の士気向上が必要です。道職員の定年延長が始まった今、年齢は高くともやる気に満ちた人材を積極的に活用することも重要と考えます。
例えばなかなか若手の応募がないへき地医療の現場においては、人生経験豊富な医師に活躍してもらえることが多く、令和元年、羽幌町天売島の道立診療所に、当時の定年を超えた70代半ばの方が意欲を示し、保健福祉部地域医療局と総務部人事局の担当者が知恵を絞り、常勤職員ではない形で勤務してもらう形を作っていただいた事例があります。
一方、地域医療振興財団で行っている各地における常勤医の募集サイトでは、例えば、道立焼尻診療所において募集する医師の年齢要件は70歳までとされています。過去の事例に鑑みても、募集年齢より高年齢の医師であっても気力、体力に優れた人物はいるものと思われることから、道が率先して、年齢のみで区切らない募集方法を検討すべきと考えますが、この点に対する道の認識を伺います。
(保健福祉部長)
道職員医師の確保についてでございますが、道は今年度、医師の定年を1歳引き上げ、66歳としておりますが、離島など人材の確保が難しい道立診療所の医師につきましては、特例として70歳としていた定年年齢を、同様に1歳引き上げ、71歳としております。
道ではこれまで、この特例を活用し、道のホームページや医師の求人サイトで幅広く募集を行いますとともに、定年年齢を超える医師から応募の意向が示された場合には、臨時的任用職員として採用するなど、確保に努めてきたところでございます。
今後とも、道立診療所における、医師の確保にあたりましては、求人サイト等の活用はもとより、定年年齢を超えた医師の採用に向けては、年齢制限のない任期付職員としての募集や臨時的任用職員としての採用を検討するなど、様々な手段を講じながら医師の確保に努めてまいります。
(浅野)
二 安心して住み続けられる北海道づくりについて
(一)コロナ後の地域医療について
コロナ対策が終了した今、空床補償等のコロナ補助金は本年をもってなくなります。総務省は公立病院経営強化ガイドラインを発出し、各公立病院に対して、公立病院経営強化プランを策定することを求めています。
ガイドラインの中では、「役割・機能の最適化と連携強化」、「医師・看護師等の確保と働き方改革」などが謳われていますが、留萌管内は、留萌市立病院が管内で唯一急性期機能を有し、隣接する空知地域からも急病患者を受け入れているように、機能分化が既に出来上がっているものの、慢性的に医師、看護師不足に苦慮し、さらには今後も減少の危機に立たされている現状にあります。
また、医師が少ないがために、患者の受け入れを制限せざるを得ず、患者受け入れの制限が症例の減少を招き、キャリアアップを望む医師が着任を敬遠し、更なる医師不足を招くという悪循環に陥り、病院経営、安定した地域医療の維持がそもそも大変厳しい地域にあります。
コロナ禍以後、本道の公的・公立病院の経営は厳しさを増すことが予想される中、地域の公的・公立病院においては、独自の経営努力のみでは限界があり、国、道が医師、看護師等の確保に力を入れる等して経営を下支えすることが必要であると考えます。 道の認識並びに今後の取り組みについて知事の所見を伺います。
(保健福祉部長)
地域医療の確保についてでございますが、公立病院では、救急や小児・周産期などの不採算医療を担うほか、昨今の新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響も受けるなど、厳しい経営状況が続く中、経営強化プランの策定に取り組んでおりますが、地域では、医師や看護師などの確保に苦慮しているものと承知をしております。
このため、道では、地域の中核的な公立・公的医療機関を地方・地域センター病院として指定し、医師派遣等を行っているほか、地域医療支援センターからの医師派遣、地域枠医師や自治医科大学卒業医師の配置など、医師の偏在対策に取り組むとともに、修学資金貸付制度やナースセンター事業、院内保育施設への支援などの看護職員確保対策を行ってきたところでございます。
道といたしましては、今後とも、地域で必要とされる医療を担えるよう、地域医療介護総合確保基金等を活用した支援を行いますととともに、医療対策協議会などのご意見を伺い、実効性のある医療従事者確保施策の推進に努めるなど、医育大学や関係団体等との連携を図りながら道民の皆様が、道内のどこに住んでいても、必要な医療が受けられるよう地域医療の確保に取り組んでまいります。
(浅野)
(二)子ども政策について
令和5年4月に施行されたこども基本法の中では、全ての子どもが個人として尊重され、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会を確保されることなどが謳われています。
この基本理念を踏まえ、道は「こどもの意見反映推進事業」として、道内14振興局の中から小中高をそれぞれ一校ずつ選択し、道政全般に対する子どもの意見の聴取し、道政に反映させる考えでいると承知します。
このこと自体は、非常に重要と考えますが、他の都府県と比較しても広域分散という特徴を持つ本道において、意見聴取を行う地域の選定に当たっては、公平性維持のために慎重な検討を要すると考えます。
また、道政上の課題について意見を求める際に、子どもの発達段階に応じた分かりやすい設問の設定が求められ、大人が答えを誘導するようなことがあってはなりません。 子どもの意見反映に考えられる懸念、課題について道はどのように認識し、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
(知事)
子どもの意見反映についてでありますが、こども基本法に基づき、本道の未来を担う子どもたちが意見を述べ、社会に参画できる場や機会をつくることは、道の施策の質の向上にもつながるものであり、重要な取組であります。
新たに実施する事業は、道の様々な分野の施策をテーマとし、全道の子どもたちから、インターネットを活用して幅広くご意見を伺うほか、それを具体化して施策に反映できるよう、地域に出向き、子どもたちと直接対話することとしておりますが、その際、地域バランスなどに配慮するとともに、年齢等に応じ積極的に意見を言える環境をつくることなどが課題であります。
道としては、今後国から示されるガイドラインや他県の取組を参考としつつ、子どもの未来づくり審議会で、効果的で実効性のある事業となるよう検討を進めるほか、社会全体で子どもの主体的な社会参画を後押しする気運の醸成にも努めながら、子どもたちの意見を尊重することができる環境づくりに取り組んでまいります。
(浅野)
(三)本道経済の底上げについて
1 道内版政労使会議について
本年2月7日、道内版政労使会議が開催され、賃上げを主眼に置いた議論がなされたと承知します。
ラピダスの進出をはじめ半導体関連産業の集積が今後期待される道央圏と、直接その恩恵が及びづらいと考えられるその他の地域とでは経済状況も異なっており、全道的な賃上げをいかに進めていくのかが今後の課題であります。
今回の政労使会議の議論を踏まえ、道として全道的な賃上げ実施に向けた課題にどのようなものがあると認識しており、その課題解決に向けて今後どのように取り組むのか伺います。
(知事)
賃上げについてでありますが、本道は、全国より早いスピードで人口減少や少子高齢化が進展し、人手不足が深刻化するとともに、道内の従業員の8割以上の方々が働く中小・小規模企業にあっては、原油・原料価格の高騰が長期化するなどの影響を受け、経営環境が一層厳しさを増しております。
こうした中、道内の企業が物価上昇に負けない持続的な賃上げを行っていくためには、労務費を含むコスト上昇分の「適切な価格転嫁」や企業の「生産性の向上」が重要であります。
このため、道では、関係機関と連携し、下請取引の適正化などに取り組む「パートナーシップ構築宣言」の普及を推進するほか、働き方改革の推進はもとより、伴走型の経営相談や専門家の派遣など、きめ細かい支援を行うとともに、賃上げ機運が全道に広がるよう、この度採択された共同宣言について、全振興局を通じ、道内中小・小規模企業に周知するなど、政労使一体となって道内全体で賃上げしやすい環境の整備に取り組んでまいります。
(浅野)
2 商工会議所・商工会への支援について
次に商工会議所・商工会への支援について伺います。地域の事業者と確かな人間関係を築き、親身な経営指導に当たっている商工会議所と商工会に対して、道は小規模事業指導推進費補助金の交付等を通じ、経営指導員等の人件費を補助していると承知します。
一方で道は、各地域における小規模事業者数をベースに、人件費を補助する経営指導員等の人数を定めており、令和7年度以降、相当数の商工会議所が定数減となることが見込まれています。また直ちに定数減とはせずとも、現在の人員が退職等した場合には新たに補充しない方針が示されている商工会議所もあります。
本道において一過性でない持続的な賃上げを実現する上では、道内企業への経営支援が重要であり、商工会議所、商工会に求められる役割は一層重要性を増します。 この観点から、小規模事業指導推進費補助金の金額並びに設置定数の拡充等の支援が必要であると考えますが、道の認識を伺います。
(経済部長)
商工会議所・商工会への支援についてでありますが、エネルギーや原材料価格の高騰が長期化するなど、道内の中小・小規模事業者の方々の経営環境の厳しさが増す中、事業の継続や持続的な賃上げの実現に向けましては、事業者の経営基盤の強化が重要でございまして、地域の中小・小規模事業者に寄り添う商工会議所や商工会は、支援機関としての重要性が高まっております。
一方で、急速に進行する人口減少や後継者不足などにより地域の商工業者数や会員数が減少するなど、商工会議所等の運営を取り巻く環境は厳しさを増していると認識しております。
道といたしましては、こうした実情をしっかり踏まえ、今後も商工会議所や商工会が地域の中小・小規模事業者への経営支援をしっかり行っていけるよう、運営基盤の強化に向けた取組や連携の支援に努めてまいります。
(浅野)
(四)日本海側の防災体制強化について
地震地質研究推進本部が2020年に公表した予測数値では、石川県能登半島で今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は「0.1%~3%未満」とされており、本道の日本海側の大半の地域でもほぼ同等の確率とされています。
このことを受け、道としても高い確率での発生が予想される日本海溝・千島海溝地震、その太平洋側地域はもちろんですが、日本海沿岸においても、住民意識の向上や避難路の確保等の備えを強化する必要があります。
石川県能登半島地震の発生を受け、本道の日本海側における防災体制の強化に対し、これまでの対応を踏まえ、今後道はどのような取組を行うのか伺います。
(知事)
今後の地震津波対策についてでありますが、地震や津波から道民の皆様の命を守るためには、防災教育の充実や地域における避難経路の確保など、様々な対策に取り組んでいくことが重要であります。
このため、道ではこれまで、市町村が行う防災訓練への支援や一日防災学校の開催など、各種の防災教育を実施するとともに、一般道路による避難が困難な場合などには、道が管理する急傾斜地崩壊防止施設や治山施設の管理用通路を市町村が避難経路として使用できるよう取り組むなどしてきたところでございます。
こうした取組に加え、来年度は、日本海沿岸の市町村が実施する訓練に、これまで以上に積極的に支援・参画することとし、地域ニーズに応じて、専門家による防災講話や段ボールベッドの組立訓練などを実施するほか、早期避難の重要性を住民に伝える講師の養成講座を開催するなど、防災訓練や防災教育の充実強化を図り、日本海沿岸における地域防災力の向上につなげてまいります。
(浅野)
(五)代替道道の整備について
今回の石川県能登半島地震において初動を含めた政府の対応を著しく困難にした最大の要因は、半島という地形的特徴を持つ同地域の国道が遮断され、交通アクセスが制限されたことであると言われております。一つの国道が止まった時に地域の交通がストップするという事態を避けるべく、本道においても備えを進める必要があります。
留萌管内の苫前町と小平町の間には、昭和59年に道道認定された道道苫前小平線がありますが、その中の約9kmの区間が事業化に至らず、未開通のまま残されております。国道232号線では、過去幾度となく大雨による土砂崩れ等により通行止めが生じており、代替道道の整備が求められています。
同未開通区間の事業化を目指し、地域にとってこの区間の事業化がなぜ必要かを、様々な角度から検討し、事業化に向けた研究を進める組織「道道苫前小平線未開通区間事業化研究会」が令和4年12月に結成され、現在に至るまで、地元留萌建設管理部の親身なサポートを受けながら、現地視察や実務者協議等の活動を積み重ねております。
道として、石川県能登半島地震の発生を受け、同じく日本海側の留萌管内における代替道道の整備の必要についてどのように認識をしているのかを伺うと共に、留萌管内における代替道道の整備に向けて今後どのように取組むのかを伺います。
(建設部長)
代替道路の整備についてでありますが、このたびの能登半島地震の被災地の状況を目の当たりにし、災害時に集落の孤立を防ぎ、救急搬送や支援物資の輸送を可能とするには、代替性が確保された道路ネットワークの構築が重要であると改めて認識をしたところでございます。
道道苫前小平線は、国道232号の代替道路としての役割が期待されておりますが、未開通区間においては急峻な山地を通過することなどから、多額の事業費が見込まれており、事業化に向けた課題も多いところでございます。
こうした中、地域の関係者の方々による未開通区間の事業化に向けた研究会が開催されており、道では、今後とも必要となる資料などを提供してまいります。 近年、全国各地で頻発・激甚化する自然災害などを踏まえ、道としては、災害時における道路交通機能の確保に向け、国道の代替道路としての道道整備のあり方について検討を進めますとともに、引き続き、令和2年度から整備が進められている国道232号の防災事業をはじめ、国道における防災・減災対策を国に強く要望するなどして安全安心な道路ネットワークの構築に向けて取り組んでまいります。
(浅野)
(六)除排雪体制の充実について
1 事業量の確保について
昨年12月下旬に留萌市では観測史上最大の降雪に見舞われ、市内を運行するバスが運休になる等、市民生活に大変な不便が生じました。
本年2月20日時点の道内各地の積雪の深さを平年比でみると、留萌市は157%と道内随一の高さとなっております。
除排雪をはじめとする道路維持業務を担う事業者は、除排雪に必要なダンプなどの車両を保有していますが、冬季間のみならず雪の降らない春、夏、秋においても安定した公共事業が確保されてこそ、車両の維持が可能となり、冬の除排雪への対応が可能となります。
道として一年を通じて安定的に車両の維持が可能となるよう、公共事業予算の確保に努め、道民生活を守る上で欠かせない除排雪という使命を果たしている事業者の経営を支えるべきと考えますが、認識を伺います。
(建設部長)
除排雪体制の確保についてでありますが、除雪などの道路維持業務を行う本道の建設業は、地域の経済・雇用を支えるとともに、安全で円滑な交通の確保や災害時における緊急対応など、地域の守り手として大変重要な役割を担っていると認識しております。
このため道では、除雪体制を安定的に維持するため、これまでも、除雪オペレータなどの労務単価やダンプトラックなどの機械経費の引き上げ、さらには、少雪時における最低保証費の見直しなどを行ってきましたほか、除雪業務における課題などを把握するため、関係業者で構成される「北海道維持管理業務連絡協議会」などとの意見交換を実施しているところでございます。
道としては、引き続き、こうした取り組みを進めるとともに、公共事業の実施にあたっては、ゼロ道債や補正予算を活用するなどして、施工時期の平準化を図るほか、国に対して必要な予算を要望するなど、財源確保に努め、建設業の持続的・安定的な経営が確保されるよう取り組んでまいります。
(浅野)
2 自衛隊との連携について
道は地域防災計画に基づき、大雪や暴風雪などの災害に対処するため、「北海道防災会議雪害対策連絡部」を設置しており、また令和4年2月に発生した、札幌駅発のJRがすべて運休になる等の事態を引き起こした札幌圏での大雪を受け、雪害時に災害派遣要請が必要となる事態が発生した場合、道は自衛隊との連携も含め、降雪期に備えてきているものと承知します。
今冬の観測史上最大の降雪を受け、留萌市民はじめ管内住民からは「今回の大雪は災害級であり、自衛隊に支援を求めるべき」との声が寄せられました。
しかし、自衛隊は国防を本来業務とする組織であり、自衛隊の出動以外に対応できる手段が他にない状況とならない限り、道としても出動要請を行わないものと理解しております。
道として、豪雪時に自衛隊へ出動を要請する際の基準、目安というものを道民に示し、自衛隊出動を求める地域住民の声を受け止めつつも、自衛隊が担っている国防という業務への理解促進を進めるべきと考えますが、道の認識を伺います。
(危機管理監)
自衛隊の災害派遣についてでございますが、災害時における自衛隊の派遣は、知事からの要請等を踏まえまして、「公共性」「緊急性」「非代替性」の3要件を総合的に勘案し、応急的な救護活動の必要が認められる場合に行われることとなってございます。
道内外を問わずこれまでも、雪害時の自衛隊派遣は、孤立集落の発生や大規模な車両立ち往生による人命救助、道路の通行障害により、緊急搬送に支障が生じる場合などに3要件を踏まえ、実施をされておりますことから、道といたしましては、地元の市町村におきまして、災害対策本部を設置している状況等の下、3要件の該当性を十分確認をした上で、要請内容を明確にし、派遣要請することを基本としているところでございます。
道といたしましては、こうした災害派遣要請の考え方につきまして、市町村を対象とした研修会で自衛隊と共同で周知するとともに、道民の皆様に対しましても、ホームページなどで丁寧に発信するなど、今後とも、災害派遣に関する認識や理解の向上を図ってまいります。
(浅野)
(七)野生鳥獣被害対策について
1 交通事故等の防止について
野生鳥獣被害対策に関連し、まず交通事故等の防止について伺います。本年に入り、留萌管内増毛町の果樹園でリンゴの木の皮がエゾシカによって食べられるなどの食害が生じており、エゾシカやアライグマ等の野生鳥獣により、一次産業への被害は拡大の一途をたどっております。国道232号線では特に小平町内の沿線において、冬季間は山側の斜面に多くのエゾシカが現れ、食物を食べ、時に道路側まで降りてくる個体もおり、道路交通上、大変危険な状況になっております。
現在、道はポイントに箱罠を仕掛け、捕獲する取組を行っていると承知していますが、現在までの効果について伺います。 また、国道232号線は、地元住民のみならず多くのドライバーが通行するため、十分な注意喚起を行う必要がありますが、道並びに道警本部の認識を伺います。
(環境生活部長)
道によるエゾシカの捕獲についてでございますが、道では、国の交付金を活用した指定管理鳥獣捕獲等事業によりまして、鳥獣保護区や銃の使用が禁止されている道路周辺など、市町村による有害捕獲が困難な場所におきまして、道自らが捕獲を行っております。
留萌管内では、越冬期、海岸部の道路際に、餌を求めたエゾシカの出没が多発し、交通事故が発生していることを踏まえまして、小平町からの要望を受けて、令和4年度から大椴・花岡地区等において、道による捕獲事業を行っており、事業開始から、これまで35頭を捕獲しているところであります。
道としては、今後とも、市町村や猟友会などの意見を伺いながら、地域における出没や被害の状況把握に努め、交通事故や農林業被害の減少に向けて、捕獲対策の強化に取り組んでまいります。
(道警本部長)
交通事故の防止についてでありますが、昨年、道内におけるエゾシカが関係する交通事故は、約5,300件発生し、5年前の平成30年と比較いたしますと、約90パーセント増加していることから、ドライバーに対する注意喚起が重要であると認識しております。
このため、道警察では、ホームページや電子メールによる交通安全情報の提供やSNSを活用した啓発動画の配信を行うとともに、道路管理者等の関係機関・団体やテレビ・新聞等の各種メディアに対して、事故分析資料の情報提供を積極的に行っているほか、 レンタカー会社等と連携し、交通事故の多発地域や注意点を記載したチラシ・リーフレット等を活用した啓発活動を推進しております。
道警察といたしましては、引き続き、効果的な情報発信や啓発活動に努めていくほか、道や道路管理者等の関係機関・団体と連携し、交通事故の防止に取り組んでまいります。
(浅野)
2 市町村との連携について
市町村との連携について伺います。エゾシカをはじめ有害鳥獣の駆除を進める上では、多くのハンターに、より多くの頭数を狩猟しやすい環境整備が欠かせず、その一環として捕獲後の残滓処理が重要です。留萌管内にでは、増毛町、留萌市、小平町の3市町で南部衛生組合を組織しており、エゾシカの残滓の受け入れを行っていますが、それは平日に限られています。多くのハンターが狩猟活動を行えるのは土日祝日が多く、残滓処理がネックとなって十分な駆除が進まないおそれがあります。こうした状況を踏まえ、道と市町村が連携して対処していくことが重要であると認識しますが、この点に対する道の認識を伺います。
(環境生活部長)
エゾシカの捕獲個体の処理についてでございますが、道は、これまで振興局ごとに設置している市町村や猟友会などを構成員とする地域連絡協議会において、各地域の残滓の受入体制が、狩猟者にとって利便性の高いものとなるよう、市町村に働きかけるとともに、狩猟者に対し、処理施設の受入情報を掲載した冊子を配布するなど、捕獲個体の適正処理に取り組んできたところであります。
道としては、こうした取組のほか、国の交付金を活用しました回収ボックスの設置事例を紹介するなど、引き続き、地域連絡協議会などを通じ、市町村や関係機関と一体となって、地域の実情に応じた取組を進めてまいります。
(浅野)
(八)総合的な防衛体制の強化について
国において、令和4年12月に国家安全保障戦略を閣議決定し、防衛力の抜本強化を打ち出すとともに、「研究開発」や「公共インフラ整備」等の4分野における取組を推進し、総合的な防衛体制を強化するとしています。
このうち、公共インフラ整備については、安全保障環境を踏まえた対応を実効的に行うため、インフラ管理者との間で「円滑な利用に関する枠組み」を設け、これらを「特定利用空港・港湾」とすることとしています。
その上で、国は、それらの空港・港湾について、あくまで民生利用を主としつつも、自衛隊・海上保安庁の航空機・船舶の円滑な利用にも資するよう、必要な整備や既存事業の促進を図ることとしていますが、自衛隊や海上保安庁の航空機や船舶が空港・港湾を利用しやすくなることで、大規模災害への迅速な対応が可能となるほか、例えば、自衛隊の船舶が道内の港湾に寄港した場合には、給油や給水などの物資補給や乗組員の消費活動によって、地域経済に大いに寄与することが期待されます。 私の地元留萌においても、経済界などから、こうした港湾の有効活用に期待する声も寄せられているところでありますが、以下、知事に数点伺います。
1 道の認識について
報道によりますと道内では、室蘭港、苫小牧港、釧路港、留萌港、石狩湾新港の5港がこの候補になっているとされていますが、この「円滑な利用に関する枠組み」を設けることについて、知事はどう受け止めているのか伺います。
(交通企画監)
道の認識についてでございますが、国は、国家安全保障戦略に基づき、安全保障環境を踏まえた対応を実効的に行うことを目的に、平素より自衛隊及び海上保安庁が訓練等で円滑に空港や港湾を利用できるよう、国と各施設管理者との間で連絡・調整体制を構築するため、国が進める「円滑な利用に関する枠組み」の対象として、道内の5港を選定したと承知してございます。
また、本枠組みを設けた施設は、「特定利用空港・港湾」と位置づけられ、民生利用を主としつつ、 自衛隊及び海上保安庁の艦船や航空機の円滑な利用にも資するよう、必要な整備又は既存事業の促進が図られるものと聞いてございます。
(浅野)
2 今後のスケジュールについて
また、本枠組みを設ける作業は、今後どのようなスケジュールで進むのか伺います。
(交通企画監)
今後のスケジュールでございますが、国では、年度末を目処に「円滑な利用に関する枠組み」に係る調整が整った各施設管理者との間で文書を取り交わした上で、閣僚級の会議を開催することとしており、その際、「特定利用空港・港湾」として、空港や港湾の具体的名称とともに、今後の運用・整備に係る基本的な方針を示した「運用・整備方針」を策定・公表する予定と聞いております。
(浅野)
3 今後の対応について
ロシアによるウクライナ侵攻から2年が経過し、未だ停戦の兆しが見えません。北朝鮮は拉致問題の解決に真摯に取り組むこともなく、ミサイル発射を繰り返し、中国は軍拡を進め武力による台湾統一の方針を隠さずにいます。
このように我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な状況にあります。総合的な防衛体制の強化は、我が国が早急に取り組まなくてはならない重要な課題であると考えます。このことを踏まえ、知事は石狩湾新港管理組合の管理者の立場から、また、苫小牧港及び石狩湾新港管理組合の構成団体である道の知事の立場から、国が進める「円滑な利用に関する枠組み」を設ける取組に協力すべきと考えます。知事の認識を伺います。
(知事)
今後の対応についてでありますが、今般、国が進める「円滑な利用に関する枠組み」は、自衛隊及び海上保安庁が安全保障環境を踏まえた対応を実効的に行うためには重要であるものと認識しておりますが、本取組に対し、不安や疑問を抱く方もいることと思います。
このため、道では、国に対し、先月、港湾の利用者や周辺の住民はもとより、広く道民の皆様に対し丁寧かつ十分な説明や周知を行うよう要望したところであり、国は、本取組に関する説明や周知を行うため、一昨日、質疑応答集を公表するとともに、対応する窓口を示したところであります。
私としては、こうした国による周知の状況を見極めるほか、関係自治体の意向や港湾運営への影響などを考慮しつつ、議会での議論も踏まえながら、石狩湾新港の管理者として、また、苫小牧港管理組合の構成団体である道として、「円滑な利用に関する枠組み」について、適切に判断をしてまいります。
(浅野)
三 世界に向けた本道の魅力発信について
(一)観光資源としての大雪の活用について
最後に、世界に向けた本道の魅力発信に関し、観光資源としての大雪の活用について伺います。
先ほど述べたように、昨年12月以降の留萌市における大雪は全国的に報じられることとなり、留萌はとにかく吹雪の多い、雪の大変な町として全国的に知られることとなりました。これはまさに、地域振興の大きなチャンスと捉えるべきと私は考えます。
国土交通省が策定する、第9期北海道開発計画では、各開発建設部が地元の関係機関と連携して地域発展を図る「地域共創チーム」の結成が謳われており、留萌開発建設部では「観光振興」、「物流」、「ゼロカーボン」の3テーマを主眼としたチームが今後結成される見通しです。その中の「観光振興チーム」では、今冬の大雪を受け、大雪、吹雪を観光資源の一つとして観光振興を検討する議論が進むことが今後期待されています。
例えば、温暖化によって世界的に雪が少なくなり、不足している中、通常の降雪に見慣れた海外からの観光客にとっては、安全を確保しながらも、大雪やホワイトアウトを実際に体験し、更には独居老人宅や商店街における雪かきを行ってもらうといった観光メニューも新鮮に映るかもしれません。例えば、札幌雪まつりに集う方々に留萌管内への周遊を促すことで、オーバーツーリズムの解消並びに全道の観光の底上げにつながることも期待できます。
道は大雪を観光資源として活用しようとすることに対してどのような認識を有し、今後どのように取組むのかを伺います。
(経済部長)
観光資源としての雪の活用についてでありますが、本道は、雄大で四季折々の変化に富んだ自然に恵まれており、とりわけ、冬季の雪を活用したウィンタースポーツやイベントなどは、国内外の観光客の方々にとって大変魅力的な観光コンテンツであり、雪は北海道観光の大きな強みであると認識しております。
これまで、道では、スノーゴルフやスノーモービルといった雪上アクティビティを提供する体験プログラムの開発や旅行商品の造成など、地域の取組を支援してきたほか、冬季のアウトドア体験を安全に楽しめるよう、ガイドの育成・確保などに取り組んでまいりました。
こうした中、留萌地域では、留萌開発建設部が地域と協働して、大雪をはじめとした地域の観光資源を活用するための方策などについて検討していくと承知しておりまして、道としては、こうした地域の取組に対し、積極的に協力してまいります。
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