道議会後期から建設委員会に所属することとなり、最初の質問です。建設業界における深刻な人手不足の解消のため、週休二日制の実現を柱の一つとして働き方改革が進められています。大いに進めるべきですが、季節的な制約の大きい北海道においてそれを実現する上では高いハードルがあることも事実です。これらの課題解決に向けた道の認識並びに取り組みを質しました。
建設委員会(平成29年7月6日)開催状況
開催年月日 平成29年7月6日(木)
質問者 北海道結志会 浅野貴博 委員
担当課 建設部総務課
建設部建設政策局建設管理課
建設業における人手不足対策について
近年特に深刻化が叫ばれております建設業における人手不足対策に対する道の取組について伺って参ります。
既に道議会でも諸先輩の議論で明らかにされておりますが、道内の建設業就業者数は平成7年から9年のピーク時の約35万人から、昨年の数字で言いますと約21万人まで減少しております。
年齢階層別構成比を見てみますと、平成11年と28年を比較すれば、29歳以下は約18%から約10%へと低下する一方、50歳以上の方々は約39%から約50%へと上昇しております。
若年者の減少と高齢化が進む産業としては、本道は特にこれまで農業が指摘されてきましたが、実は建設業も同じように、いやそれ以上に深刻な状況にあると言わざるを得ません。
昨年夏、本道を直撃した一連の台風被害への復旧などでは、いの一番に現場に駆けつけ、長きにわたり復旧復興作業にあたっていただくのが建設業の皆様でありますし、日頃、生活の基盤である各種社会インフラの整備、日常的な維持管理、地域への奉仕活動、何より幅広い雇用の受け皿として平時における地域経済への貢献等を考えれば、建設業が本道にとって欠かせない産業であることは誰もが異論はないところだと思います。
道としてもこのような認識をお持ちの下で、各種振興策に取り組んできているところと思いますが、この点を踏まえて、以下質問させていただきます。
1.質問:現状に対する認識について
まず、建設業における人手不足については、長時間労働が多いだとか、危険だとか、休日が少ないだとか、そうしたよくないイメージがあるとの原因が指摘されておりますが、それよりもその時の政治情勢により、公共事業の予算額や事業量が不安定な扱いをされてきたことが、この分野における人手不足を招いた一番の原因でないかと私は考えます。この点に関する道の認識をまず伺います。
答弁:建設業担当局長 板谷悟
人手不足の要因についてでございますが、平成27年度に実施いたしました建設業に従事する若年従業員に対するアンケートなどから、「業界のイメージが良くない」、「景気や政治に影響される不安定感」といった、建設業に対するイメージのほか、「他の業界と比べて休日が少ない」、「労働時間が長い」など、業界の就業環境の現状が人手不足の要因となっているものと認識しているところでございます。
また、建設投資額が、平成5年度をピークといたしまして、平成22年度までに大幅に減少してきたため競争が激化し、厳しい環境に置かれました企業がやむを得ず採用を控えてきた影響が現在まで続いていると認識しているところでございます。
指摘:
今、板谷局長が後段おっしゃった、建設投資額が大幅に減少してきたことが根本な原因だと私は考えております。
建設投資額、公共事業を潤沢に中長期にわたって安定的に確保する、それが人手不足対策の根本的な一番重要な政策だと思います。
それについては、先ほどご説明いただいたように、平成30年度建設部関係国費予算で前年度比165%の要望を、しっかり道として上げていただくことをご説明いただきました。
この点に関しては引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
この根本の理由を踏まえながらも、人手不足対策の各論について伺って参ります。
技術系学校卒業者の入職等について
2.質問:新卒者の就職状況などについて
まず、技術系学校卒業者の建設業の入職状況について伺います。
工業高校や技術専門学校など、大学等の建築や土木学科等の卒業後建設業への就職が見込まれる各種学校の新規卒業者の就職状況と、過去からの傾向を示すとともに、そのことに対して、道はどのように認識しているのか、まず伺います。
答弁:建設業担当課長 京田隆一
新卒者の就職状況などについてでございますが、道内の建設系学科がある学校からの聞き取りや教育庁の資料によりますと、建設系の大学、工業高等専門学校、専門学校、高校の本年3月の卒業生のうち、就職者数は1,178人、そのうち建設業への就職者数は807人で、就職者の割合は68.5パーセントとなっており、データを取り始めた平成23年3月卒業生の48.9パーセントと比較しますと、上昇傾向にあるところでございます。
しかしながら、建設業における人材確保は、依然として厳しい状況にあることから引き続き、こうした建設系学校卒業生の一層の入職促進に取り組んでいくことが必要と認識しているところでございます。
3.質問:建設業への就職が進まない背景などについて
本年3月15日の予算特別委員会で自民党道民会議の千葉議員が質問されたかと承知していますが、そのとき平成28年3月での同じ就職状況を伺ったときに全体で54.1パーセントと答弁がなされていました。
それに比べれば今回は68.5パーセントと確かに上昇していると考えます。
また、こういう技術を学んだ学校の卒業者の7割弱がそうした業界に入職するということは低い率とは言えないのかもしれませんが、学校で学んだ技術を一番活かせる業界に若い方々があまり入職していない現状についてどんな要因があるのか、道として何らかの分析を行っているでしょうか。
また、その分析を行った上で是正に向けた取り組みはされてますでしょうか。
答弁:建設業担当課長 京田隆一
建設業への就職が進まない背景などについてでございますが、建設系の大学、工業高等専門学校、専門学校、高校に在学する学生に対し、平成27年度に実施したアンケートでは、建設業のイメージで、「きつい仕事」、「経験を積むには時間がかかる」、「危険な仕事」、「女性が活躍しにくい」、「勤務時間、休みの自由度がない」との回答が多くなっているところでございます。
道としては、こうした結果も踏まえ、就業環境の改善に引き続き取り組むことはもとより、建設業への理解を深めていただくとともに、イメージアップを図ることが必要と考えており、これまで高校生を対象としたインターンシップのほか、札幌駅前通地下歩行空間において「建設産業ふれあい展」を開催するなど、広く道民の皆様に建設業の役割や魅力のPRを行っているところでございます。
また、こうした取組を効果的に進めるため、国、建設業団体、商工団体などで構成する「北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会」を設置し、関係機関との情報共有などに努めるとともに、建設業団体や教育機関、市町村等で構成する地域会議を開催し、地域の実情に応じた担い手対策の検討を進めてきたところでございます。
4.質問:地域会議の開催などについて
ただいま、幅広く若年者の確保に向けた取組を進めるために「北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会」を設置して、関係機関との情報共有を進めて、さまざまな検討を行ってきたと答弁をいただきましたが、ここでおっしゃる地域会議は、道内に何カ所設置されて、それぞれ年にどのくらいの頻度で会議が開催され、具体的にどのような担い手対策が話し合われてきているのか、実行されてきているのか伺います。
答弁:建設業担当課長 京田隆一
地域会議の開催などについてでございますが、道では、地域における担い手対策を検討するため、地域での会議を先行実施していた室蘭・帯広建設管理部管内に加え、平成27年度には小樽・稚内・網走の3建設管理部管内、28年度には札幌・函館・旭川・留萌・釧路の5建設管理部管内で、それぞれ3回、地域会議を開催したところでございます。
地域会議においては、インターンシップ、現場見学会などの実施や建設業のイメージアップのためのPRの充実のほか、保護者や学校関係者に対して建設業の理解を深めていただくことも担い手確保に重要であるとの共通認識が図られ、建設業団体や教育機関、市町村等において、連携強化して担い手対策に取り組んでいくことが確認されたところでございます。
その結果、旭川建設管理部管内では、小学生と保護者を、網走建設管理部管内では、工業高校の保護者を対象として現場見学会が開催されたほか、稚内建設管理部管内では、小学生などを対象とした職業体験イベントである「わくわくワークフェス」に新たに測量設計協会や技能士会が参加するなど規模を拡大し、また、留萌建設管理部管内では、地域主体の関係機関に新たに開発建設部が参加し推進体制の強化が図られるなど、地域会議の成果を踏まえた担い手対策が進められているところでございます。
5.質問:道の社会人採用制度について
地域会議の活用について今ご説明いただきましたが、担い手不足に悩んでいるのは民間企業だけでなく、道も同じだと思います。
そこで建設業に関連する技術を有した職員を確保するために、道としても近年、社会人を対象とした新たな採用試験を実施しています。
これについては、道内の民間企業が発掘し、採用して、手塩にかけて育て、様々な経験を積ませて技術を身につけさせた人が取られてしまうと、民間の人材不足を招いているという懸念も私は実際聞いたことがあるのですが、このことに関して、道の認識並びに取り組みについて伺います。
答弁:総務課長 田中勝
社会人を対象とした道の採用試験についてでございますが、近年、本道の建設業におきましては、若年者の入職が大きく減少し、土木技術者が不足している一方、道におきましても、平成17年度以降の職員数適正化計画などにより、新規採用者数が抑制された結果、特に、人材育成や技術力の伝承を担う中堅層の職員が不足し、通常業務のみならず、災害時の対応などにも支障をきたしかねない状況にあり、土木技術者の確保は、官民を通じた課題と認識しているところでございます。
このため、道におきましては、平成26年度から、土木技術職員について、社会人を対象とした採用試験を実施し、不足の解消に取り組んできているところでありまして、採用実績につきましては、26年度の試験では、4名の採用者のうち2名、27年度の試験では、5名の採用者のうち3名、28年度の試験では、6名の採用者のうち5名が、道内企業からの転職となっている状況でございます。
今後の職員の採用にあたりましては、首都圏等で開催するU・Iターン転職フェアなどの場を活用し、道外からの人材確保に努めるとともに、その際、建設業団体などと連携しながら、道内企業の情報などについても、積極的にPRしてまいる考えでございます。
指摘:
今の答弁の中で、26、27、28、それぞれ2名、3名、5名が道内の企業から道職員へ転職となったとご説明頂きました。
2名、3名、5名という数字が多いと受け止めるか少ないと受け止めるかは人それぞれかと思いますが、いずれにしても民間企業において、厳しい状況のもと会社の未来のために育てた人材が、民間企業の立場からみれば道に取られたという状況には変わりないわけです。
一方で、道としても技術を有した職員を確保しなければいけないというのは喫緊の課題であるのも理解できます。
そうしたことを踏まえて、今後は、道外からの人材確保をメインに努めるとのご答弁かと理解いたしましたので、道内民間企業の事情に十二分に配慮した上で、道の有意な人材確保に努めて頂きたいと、指摘をいたします。
6.質問:労働環境改善に向けた取組について
労働環境改善に向けた取組について伺います。
建設業における人手不足に関しては、これまで何度もイメージがよくないということが指摘をされておりました。
そのイメージの改善はもとよりも、労働環境の改善が重要との認識は皆一致していると思います。
道としては就業改善への取組として、25年度から5年連続して設計労務単価の引き上げをしていると、他には道の競争入札参加資格者には、社会保険等の加入者に限定すること、ほかには土日作業となる依頼を行わない、昼休みや夕方5時以降の打ち合わせを行わないなどの労働環境改善プロジェクトの実施などを進めてきていると承知をしております。
答弁:技術管理担当課長 坂野伸治
労働環境改善に向けた取組についてでこざいますが、公共工事設計労務単価につきまして、道内における全職種の平均労務単価は、平成24年度の1万5千125円から、平成25年度以降、毎年上昇し、平成29年度は2万2千531円となり、平成24年度に比べると、49%の伸びとなっているところでございます。
また、平成27年8月から試行しております「労働環境改善プロジェクト」につきまして、受注者に対し実施したアンケート調査の結果では、「月曜日を期限とする金曜日の作業指示」につきまして、「無かった」とする割合が、平成27年度の83%から、平成28年度の96%へ13ポイント上昇し、「昼休みや午後5時以降に行った発注者との打合せ」につきましても、「無かった」とする割合が、平成27年度の66%から、平成28年度の81%へ15ポイント上昇しているところでございます。
こうした取組により、昨年度取りまとめた下請状況等調査におきまして、賃金が設計労務単価を下回っている割合が前年度より若干改善されていることや労働時間縮減に対する発注者側の意識改革が進むなど、一定の効果があったところでございます。
意見:
今の答弁であるように道のさまざまな取組により労働環境は着実に改善されているものと承知をします。
その労働環境改善の一つの目玉として、今盛んに取り上げられているのが建設業における週休二日制の実現並びに定着かと思います。
今日の北海道新聞にも記事出ておりました。
道発注工事週休二日検討という記事が出ておりますが、今年の6月8日にポールスター札幌で開催された日本建設業連合会と北海道開発局、道建設部、札幌市などとの公共工事諸課題に関する意見交換でも若手の技能者の確保のために週休二日の実現による処遇改善が提案されていると承知をします。これに関して、6月9日付け北海道建設新聞を読みますと、モデル工事の試行にあたって、開発局として、国としては週休二日を実施する発注者指定型、受注者希望型とも、間接工事費の補正を行い、工事成績評定の際に評価しているとし、一方で道は、工事成績で加点は考えているが、道内建設業の意見を考慮したいとの意向を示していると記事で書かれておりました。
他には休日が増えることにより労務者の方からすれば、収入が減ると、そういう実状もあります。
そうした、技能労働者への給与補填については、道としては休日拡大に向けて各建設業協会と意見交換を行って来たが、冬期工事が制約される地域事情や工期延長に伴う経費の拡大、労働者の収入減など課題も多く出されていると、道としては慎重な意見を述べたとされております。
7.質問:週休二日の実現について
週休二日実現に向けては、道外の他地域と異なり、やはり冬は、大きく雪が降るまた、気温も非常に下がる、積雪寒冷または広域分散という本道の特徴並びに工種の中でもいろいろな違いがあると思います。
特に農業土木などは天気や農業者の作業開始時期などに特段の配慮をしなくてはいけません。
そうした条件がかさなっている中で、天気がいい中で、週休二日制、休ませなければいけないとそうした対応がなかなかとれないと、工種によるそれぞれの事情もあるかと思います。
こうした課題を踏まえながら、道として各建設業協会との意見交換で出された課題の解決に向けて、どのような対策が必要であると考え、週休二日制の実現に向けて、どう考えて、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
答弁:建設業担当局長 板谷悟
週休二日の実現についてでございますが、道では、建設業における担い手の中長期的な確保・育成に向けて休日の確保などの働き方改革を進めることが重要であると認識している一方、これまでの建設業団体との意見交換におきましては、現場経費の増加や適切な工期の確保、日給制労働者の収入の減少などを懸念する意見も多いところでございます。
週休二日の実現に向けましては、休日を確保する適切な工期設定や積算のあり方などのほか企業や労働者へ与える影響などの課題を把握するためのモデル工事の導入につきまして、国の動向を見きわめるとともに関係団体とも調整を図りながら検討を進めるなど、地域の実情を踏まえ、取り組んでまいる考えでございます。
以上でございます。
指摘:
先ほども触れました今日付けの北海道新聞では、道がモデル工事の導入を検討していることがわかったと書かれていますが、道自身がモデル工事を行う前に、今、国が行っているモデル工事の様子を、まず横から見てじっくりと研究するという段階なのかなと、今の答弁で受け止めました。
いずれにしても、週休二日というのは全ての工種で行えるものなのかどうかもわかりませんし、実現に向けてハードルは高いかと思いますが、人手不足対策の一つの目玉として道としてもしっかり前向きに実現に向けて取り組んで頂きたいと思います。以上で私からの質問を終わります。