ホタテ漁、遊漁船の安全確保について質問しました。(2023年12月7日予算特別委員会第二分科会)

目次

質問の概要

 道議会第四回定例会は、本日から議論の場を予算特別委員会に移りました。

 私は正式な委員にはなれませんでしたが、地元留萌管内漁業の大きな部分を占めるホタテの稚貝生産と、遊漁船の安全確保について水産林務部の認識と今後の取組について質問したく、水産林務部所管の審査時間を他の委員から分けて頂き、質問に立たせて頂きました。

(一)ホタテ漁について

 留萌管内は全道のホタテ稚貝生産の約3割、全道で売買される稚貝のうち約6割を生産する、一大稚貝生産地であり、オホーツクや太平洋に出荷しています。道東で行われるホタテ漁は、海中に稚貝を撒き、3年ほどかけて育てる地撒き生産がメインであり、北海道のホタテ漁は、稚貝生産と成貝生産の役割分担が地域によって明確になされているという特徴があります。

 東京電力福島第一原発のALPS処理水の海洋放出が本年8月24日から始まったことを受け、中国は日本産水産物の輸入停止措置に踏み切りました。昨年の道産水産物の輸出は総額833億円であり、そのうちホタテの金額は618億円と圧倒的シェアを占めています。そのうち中国に輸出された金額は447.5億円であり、本道のホタテ輸出の7割以上が中国向けでした。

 これがストップしたことによる痛手は計り知れず、政治、行政の支えが必要不可欠です。

 一方で、直接中国に輸出はしていないものの、輸出地域の生産の土台を支えてきた留萌管内への影響も大いに懸念されます。留萌管内の様な地域にもしっかりと光を当ててほしく、道の認識と今後の取組を伺いました。

◎得られた主な答弁
「東京電力の賠償の対象は、水産物の価格下落による逸失利益に加え、風評被害で負担を余儀なくされた追加的費用により損害額を算定するとしているが、地域の実態に応じた賠償を実施できるよう、関係者と協議の上、適宜見直しを行い、適切に対応するとしております。  道はこれまで国に対し、迅速かつ適切に賠償が実行されるよう東京電力を強く指導することを繰り返し要請してきたところであり、留萌管内のホタテ稚貝生産者を含む、道内漁業者の賠償の対応を一括して担う北海道漁連と連携し、必要に応じ国への要請を行うなど、被害に遭われた漁業者の方々に、本道の実情を踏まえたきめ細やかな賠償が行われるよう引き続き努めて参る」

(二)遊漁船の安全確保について


 昨年発生した知床沖の旅客船の事故を受け、旅客船は令和6年4月から、遊漁船は同7年4月から、救命いかだの設置等の安全対策強化が義務付けられる見通しです。

 しかし、旅客船を所管する国交省の補助は3分の2、遊漁船を所管する水産庁の補助は2分の1と、現時点で補助率に差がある形で予算要望がなされていることに、留萌管内の遊漁船操業者から不満と疑問の声が私の元に寄せられました。

 旅客船も遊漁船も、船の大きさや乗せる人数の違いはあれど、本道の海の魅力発信を担っている点で違いはないはずです。この点に対する道の認識と今後の取組について伺いました。

◎得られた主な答弁
「船舶の安全対策の強化は、人命を保護する観点から必要であるが、本道の遊漁船業者は沿岸漁業との兼業者も多く、小型船舶で釣り客を乗船させ、漁場に案内する零細な経営も多いことから、救命いかだ等の設備の導入には多大な経費を要し、経営に大きな負担が生じるものと認識している。このため道は、国に対し遊漁船の安全設備導入についても旅客船と同様の支援制度となるよう補助率の嵩上げを要望した」

質問のやり取り

(浅野)

一 本道漁業の課題について
(一)ホタテ漁について
 本道産のホタテは、北海道の食品の海外輸出の主力となっており、オホーツク並びに太平洋側で主に成貝などが生産されて中国に輸出されていますが、私の地元の留萌管内をはじめとする日本海側は、その基となる稚貝を育てています。 このように本道のホタテ漁は、地域ごとに明確な役割分担がなされている、他県には無い特徴を持っていると考えます。
1 稚貝の価格について
 まずホタテ稚貝の価格について伺います。
 留萌管内では全道で生産されるうちの約3割、漁業者同士で売買されるものの約6割のホタテ稚貝が生産されています。
 今申し上げたように、本道水産物の輸出の主力であるホタテの生産を支える土台となっている地域が留萌管内であると、私は地元の議員として自負しているものであります。
 近年は特に人件費や各生産資材の高騰等による経費が上昇しており、稚貝生産者の経営を圧迫する大きな要因となっておりますが、ホタテ稚貝の価格は必ずしもコストに見合ったものではないという悩みがあります。
 それに加えて本年8月24日から東京電力福島第一原発から発生するALPS処理水の海洋放出が行われたことを受けまして、今年9月に開催されたホタテ稚貝の価格交渉においては、中国向け輸出の再開時期が見通せず、今後のホタテ生産の先行きが見えないということから、稚貝単価の引き上げはできないとの回答があったと聞いております。
 これらの価格交渉はホタテ漁業振興協会が取り仕切り、あくまで民間事業者同士で決められるものでありますので、道はじめ行政が関与するものではないということは承知しておりますが、道としてホタテ稚貝のこれまでの価格の推移をどのように把握されているのか伺います。

 (水産食品担当課長)
 ホタテガイの稚貝の価格動向についてでありますが、留萌管内で生産されたホタテガイの稚貝は、毎年、約10億粒のうち一部は自前の本養殖に向けられますが、多くは放流用種苗としてオホーツク海や野付などの根室海域を中心に出荷され、本道のホタテガイ漁業の生産を下支えする重要な役割を果たしております。
 留萌振興局の調べによりますと、稚貝の価格動向について、平成29年以降の5年間は、キログラムあたり300円台となっており、年ごとの増減はあるものの、単価は上昇傾向となっております。                          

(浅野)
2 東電の賠償について
 留萌管内のホタテ稚貝の生産に関してですが、ALPS処理水の海洋放出に関連した東電の賠償のあり方は、風評被害等により価格が下落した場合に算定される逸失利益を基に算定されると伺っております。本道産ホタテの輸出再開の見通しが立たないことから、その生産基盤である稚貝の価格も下落する、または上昇基調だったものが据え置かれるということになれば、稚貝生産に対しても逸失利益が生じたとみなせますので、補償、支援が必要だという声が地元から寄せられております。この点に対する道の認識と今後どのように対応されるのか伺います。

水産基盤整備担当局長
 東京電力による賠償についてでございますが、東京電力は、令和4年12月、ALPS処理水の放出に伴い風評被害が発生した場合の賠償基準を公表し、賠償の対象は水産物の価格下落による逸失利益に加え、風評被害で負担を余儀なくされた追加的費用により損害額を算定するとしておりますが、地域の実態に応じた賠償を実施できるよう、関係者と協議の上、適宜見直しを行い、適切に対応するとしております。  
 道では、これまで、国に対し、迅速かつ適切に賠償が実行されるよう東京電力を強く指導することを繰り返し要請してきたところであり、留萌管内のホタテ稚貝生産者を含む、道内漁業者の賠償の対応を一括して担う北海道漁連と連携し、必要に応じ国への要請を行うなど、被害に遭われた漁業者の方々に、本道の実情を踏まえたきめ細やかな賠償が行われるよう、引き続き、取り組んでまいります。


(浅野)
(二)遊漁船の安全確保について 
 次に遊漁船の安全確保について伺います。 2022年4月、知床沖で重大な旅客船事故が発生したことを受け、国交省は船舶安全法施行規則等の一部を改正する省令案に小型旅客船等の安全対策を盛り込み、救命いかだを載せることなどの義務付けをするとのことであり、旅客船については来年の4月から、遊漁船については再来年の4月から見込んでいると思いますが、これを踏まえて現状を伺います。
1 現状について
 国交省の改正案の内容について、旅客船に対しては国交省から3分の2の補助がなされるが、遊漁船に関しては所管する水産庁による補助のあり方が明確ではないとの懸念が寄せられており、混乱が及んでいるものと考えられます。国交省が検討している内容について現時点で道が把握しているものはどのようなものか説明願います。

(サケマス・内水面担当課長)
 国の検討状況についてでありますが、国では、令和4年4月に発生した知床遊覧船事故を踏まえ、小型旅客船等の安全対策を強化するため、船舶安全法施行規則等を年内に改正し、旅客船に加え、遊漁船に対しても、無線設備の見直しのほか、非常用位置等発信装置や、救命いかだなどの安全設備の搭載を義務化する方向で検討を進めているところであります。
 このような中、本年11月20日に国主催の都道府県担当者を対象とした説明会が開催され、国土交通省では、旅客船への安全設備の導入に対しては、補助率3分の2を上限とする支援制度を既に創設しているが、遊漁船を支援対象としていないこと、また、水産庁から令和6年度概算要求において補助率2分の1を上限とする支援事業を要求しているとの説明があったところでございます。

(浅野)
 なぜ、補助率が省庁によって異なるのか、道として理由を把握しているのか伺います。

サケマス・内水面担当課長
 補助率の違いについての理由は、道として説明を受けておりませんので把握してございません。

(浅野)
 地元の遊漁船経営者の方が水産庁に聞いてみたところ、自分たちもよくわからないというような回答をされたとのことであります。
2 今後の取組について
 最後に今後の取組について伺います。
 北海道の海の魅力発信を、旅客船と同様に担う遊漁船に対して補助率が違うというのは非常に不公平感が生じる上に、多くの遊漁船業者の経営が厳しくなることが懸念されますが、これに対する道の認識と、道としてこれらの声をどう受け止め、今後どのような取り組みを行うのか伺います。

(水産林務部長)   
 今後の取組についてでありますが、近年、小型船舶を利用した海洋性レクリエーションが盛んとなる中、海難事故も多く発生しており、これら船舶の安全対策の強化は、人命を保護する観点から必要な措置と考えていますが、本道の遊漁船業者は、沿岸漁業との兼業者も多く、小型船舶により、釣り客を乗船させ漁場に案内する零細な経営の方々も多いことから、救命いかだ等の設備の導入には、多大な経費を要し、経営に大きな負担が生じるものと認識しております。
 このため、道では、国に対し遊漁船の安全設備導入についても旅客船と同様の支援制度となるよう補助率の嵩上げを要望したところであり、引き続き、あらゆる機会を通じて、遊漁船業における安全対策が円滑に進むよう、国に要望してまいります。

(浅野)
 ぜひ不公平感が生じないように、また、零細な経営の多い遊漁船業者が廃業を選ばざるをえない状況とならないよう国に働きかけていただきたいと思います。

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