質問のポイント
2月24日にロシアによるウクライナ侵略が始まってから、北海道周辺の安全保障環境が緊張感を増しております。また3月5日には、人類史上初となる稼働中の原発施設への攻撃も行われたことを受け、泊原発施設の安全確保のあり方についても見直すべき点が残されています。
いたずらに道民の危機を煽ることは慎まなくてはなりませんが、道としても国、市町村等関連機関と連携し、道民の生命と財産を守るために不測の事態に備えなくてはなりません。
この点の対応を質問したところ、
- 「道自らもロシア軍の活動に対するアンテナを高く張って、必要な情報収集に努めていく」
- 「原子力施設に対する武力攻撃等による緊急事態への対処について、国に対して実効性のある対策を求めてきたが、今般の国際情勢も踏まえ、今後とも原発の安全性が確保されるよう国に求めていく」
- 「庁内関係部局や市町村、指定公共機関に対し、国民保護計画に基づく体制や対策などについて、今一度点検・確認を求めるなど、道民の安全・安心を守るための体制を整えていく」
との答弁がありました。
質問のやり取り
一 現在の国際情勢を踏まえた道の危機対策について
(浅野)
2月24日からロシアによるウクライナへの侵略が始まりました。これは、武力による現状変更を認めない国連憲章に違反する行為であり、知事としても道議会としても既に非難する声明を出しておりますし、政府としても複数の制裁措置を既に講じております。
この事態が発生してから、北海道の周辺で非常に危惧すべき事態が発生しております。3月2日午前10時には、根室半島南東沖の上空でロシア機とみられるヘリコプター1機が日本の領空を侵犯すると、これに対しては、政府が外交ルートを通じて抗議を行っております。また今月10日に北方領土で地対空ミサイル発射訓練を行ったと発表していますし、14日午前0時頃には、海上自衛隊の護衛艦が宗谷岬南東約130キロの海域を航行するロシアの海軍の駆逐艦や潜水艦6隻を確認していると。またロシアだけではなく、北朝鮮もこの間、今年に入ってから頻繁に飛翔体発射を繰り返しておりましたが、今月5日本年9回目となる飛翔体の発射を行っております。つい先日も失敗という報道がなされておりましたが飛翔体の発射を行っております。
武力侵攻が始まってから、本道を取り巻く安全保障環境は非常に厳しさを増しています。このことを踏まえ、以下質問いたします。
(一)現状認識について
本道周辺における、このような状況に対して、道としてはどのように認識しているのか伺います。
(危機対策課長)
ロシア軍の本道周辺における活動についてでありますが、先日の松野官房長官の記者会見では、ロシア軍はウクライナ侵略の動きに呼応する形で、2月以降、オホーツク海等における特異な大規模演習を行っていることや、戦略原子力潜水艦の活動領域である、オホーツク海の軍事的重要性の高まりも背景に、我が国周辺において活動を活発化させているとの認識が示されております。また併せて我が国として外交ルートを通じて、北方領土での訓練について抗議したほか、ロシア海軍艦艇の津軽海峡及び宗谷海峡通過を含め、ウクライナ情勢の中で、ロシア軍が我が国周辺で活動を活発化させていることに重大な懸念を持って注視している旨申し入れたとの政府の対応状況も示されたところであります。
道といたしましては、国において、こうした認識の下、引き続き、緊張感を持って、情報収集・警戒監視に万全を期していただき、毅然とした外交交渉を行っていただくとともに、自らもロシア軍の活動に対するアンテナを高く張って、必要な情報収集に努めていく必要があると考えております。
(浅野)
道としても防衛省等の関係機関との連携だけでなく、しっかりとアンテナを高く張って情報収集に努めるとの答弁を頂きました。昨日の夕刊から今朝の朝刊に出ているようにロシアとの間で言えば北方領土交渉を先方が打ち切るという態度に出ておりまして、一層、日ロ間でも緊張が高まっている状況にありますので、そうしたことも踏まえて対応をしっかり行っていただきたいと指摘します。
(二)防災と国民保護について
(浅野)
道は危機対策局の皆様が中心となって、主に災害から道民を守る防災と、武力攻撃事態等から道民を守る国民保護、この2つの観点から施策を講じていると承知をしますが、防災と国民保護の違い並びにそれぞれにおける道の対応について改めて説明を頂きたいと思います。
(危機対策課長)
防災と国民保護についてでありますが、地震や台風などの自然災害や大規模な事故から道民の皆様の生命や財産などを守る防災は、災害対策基本法に基づき、道と市町村が対応の主体となり、自らの判断で対策本部を設置して、応急対策を実施することが基本とされております。一方、弾道ミサイル攻撃や航空機による自爆テロなどの武力攻撃事態等から、道民の生命や財産などを保護する国民保護は、いわゆる国民保護法に基づき、国が対応の主体となり、道は、国の指示などにより対策本部を設置し、避難や救援の措置等を行うとともに、市町村や指定公共機関等が行う措置について道全体としての統一的な対応となるよう調整を行うこととされております。
(三)これまでの対応について
(浅野)
ロシアによるウクライナへの武力侵攻が始まって以来本道周辺で起きている事態の対応というのは、防災ではなく国民保護法に基づく対応に該当すると承知をします。ただ今答弁いただいた国民保護における道の役割に基づいて、この間、道としてはどのような対応を取ってきているのか伺います。
(危機対策課長)
これまでの対応についてでありますが、本年1月に発表された防衛省の資料によりますと、極東方面や北方領土におけるロシア軍は、軍備を強化し、中国との共同活動など、軍事活動を活発化する傾向にあるとされております。こうした背景も踏まえ、道では、今般のウクライナ情勢下におけるロシア軍の本道周辺での活動に関する情報については、速やかに道防衛局や陸上自衛隊北部方面総監部に確認を行うとともに、これに対する政府の認識や対応について情報収集を行っており、把握した情報については、庁内関係部局と情報共有を行っているところでございます。
(四)原発の安全確保について
1 現在の想定並びに今後の対応について
(浅野)
今月4日ロシア軍が、ウクライナ南部にある欧州最大級のザポリージャ原発を砲撃したと報道がなされております。稼働中の原発に対する攻撃というのは、報道を見る限り人類史上初めてであると、世界各国が厳しく非難しているところであります。本道には現在停止中でありますけども泊原発がありまして、同施設の安全確保も道危機対策局がメインで担っていらっしゃると承知をします。
道は先ほど代替オフサイトセンター開設・運営訓練の実施結果についての報告をいただきましたように、設備の故障による事故や大地震等の自然災害が発生して電源が喪失するケース、または、テロリスト等に原発施設が制御されることを想定して、周辺自治体等と連携した避難訓練を行う、そうした備えはこれまでも積み重ねてきていると承知しますが、他国もしくは武力集団から原発施設が直接攻撃を受けるケースというのはおそらく想定していないんじゃないかと思います。政府においても、二国間の紛争による武力攻撃、軍事攻撃を原発が受けるという、そうした想定はまだ行っていないと承知します。
このようなことが実際に世界の事例で起きたわけですが、道としては、武力集団から泊原発が攻撃を受けるケースについて、どのような想定の下どのような備えをしているのか伺うと同時に、今回のウクライナでの事例を受け、今後どのような対応を取る考えでいるのか伺います。
(環境安全担当課長)
原発への武力攻撃事態等についてでありますが、原子力発電所の安全については、原子力規制委員会が定めた新規制基準により、原子力発電所への航空機の衝突などのテロを想定して、必要な対策を事業者に求めているところであります。一方、ミサイル攻撃などの武力攻撃事態等に対しては、自衛隊による活動のほか、事態対処法や国民保護法等の枠組みの下で、関係機関が連携して対処することとされております。道といたしましては、原子力施設に対する武力攻撃等による緊急事態への対処については、国に対して、実効性のある対策を求めてきたところでありますが、今般の国際情勢も踏まえ、今後とも原発の安全性が確保されるよう国に求めてまいります。
(浅野)
3月19日付の日経新聞が報じていますが、政府としても国家安全保障戦略や防衛大綱、中期防衛力整備計画などにより、原発が軍事攻撃を受けたときにどう対応するかということも想定に盛り込むとの、そういう検討をしているとの報道がありました。これは道をはじめ、原発を抱える県の知事の皆様方の要請、これまで行ってきた要請の効果が出てきているものとも考えます。しっかりと必要な対策を引き続き国に求めていただきたいと指摘を申し上げます。
2 警備にあたる専門部隊について
(浅野)
3月14日の参議院予算委員会で岸田文雄総理が、日本各地の原発に対して、福井県警の取組に触れた上で、警備にあたる警察の専門部隊を配置することについて議論をすると言明をされています。泊原発の安全確保には、道警も365日、24時間体制でしっかりと役割を果たしていただいていると承知をしますが、日ごろどの様な対応をされているのか改めて伺うと共に、岸田総理が言及した専門部隊の配置等、新たな対応のあり方も含めて、今後どのような対応を考えているのか伺います。
(警備部長)
泊発電所の警戒警備についてでありますが、国会におきまして、原子力施設に対する専門部隊による警戒に関する発言があったことは承知しているところであります。道警察では、泊発電所において、現在、自動小銃、サブマシンガン、耐弾仕様の車両等を備えた原発特別警備部隊を常駐させて、365日・24時間体制で警戒警備を実施しているところであります。また、専門部隊である、原発特別警備部隊の隊員につきましては、所要の訓練を積んだ機動隊員を配置しており、専門的な体制を備えているところであります。道警察といたしましては、引き続き、治安情勢に応じた装備資機材の充実、訓練等を通じた対処能力の向上を図り、泊発電所の警戒警備に万全を期してまいる所存であります。
(五)今後の対応について
(浅野)
今のウクライナ情勢が今後どのように収束していくのか全く見通せない状況でありますし、特定の国家が本道にどのような攻撃を加えるか実際にまだ分からない中で、徒に危機を煽り、道民に不安を感じさせるような言動は慎むべきであると考えます。しかし現在の状況を踏まえ、道としても現行の対応について不足点がないかをしっかりチェックをして、市町村をはじめ関係機関との連携を強化する等、道民の生命と財産を守る為の体制強化を進める必要があると考えます。
このことに対する道の認識を伺うと共に、今後どのように危機対策を強化していくのか、今後の取組について最後に伺います。
(危機管理監)
今後の対応についてでありますが、道では、国民保護計画に基づき、武力攻撃事態等が発生した場合には、直ちに知事を室長とする緊急事態連絡室を設置し、被害等の情報を収集し、被害の最小化を図るための必要な措置を行います。その後、政府による対策本部の設置を受け、道も直ちに国民保護対策本部に移行し、国の指示の下、市町村や指定公共機関等と連携協力して、避難や救援等の措置を行うこととしております。
道といたしましては、現下の国際情勢を踏まえた対応が必要と考えており、国に対し、警戒監視並びに緊急時の迅速かつ的確な対応に万全を期すよう求めるとともに、庁内関係部局や市町村、指定公共機関に対し、国民保護計画に基づく体制や対策などについて、今一度点検・確認を求めるなど、道民の皆様の安全・安心を守るための体制を整えてまいります。
(浅野)
今一度点検・確認を求めていくという永山危機管理監の力強いご答弁を頂、心強く感じます。万が一の備えが実際に発動されないことが一番なのですけども、万が一に備えた体制をしっかり強化していただきたいと思います。
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