3月に入り、朝の日出も早くなり、少しずつですが春が近づいていることを感じられるようになりました。
世界を見渡せばロシアによるウクライナへの攻撃はまだ止まらず、不透明感が漂っています。多少の困ったことはあっても、銃声が鳴り響くこともなく、住んでいる家が破壊されることもない環境で生活できることの有り難さを認識しなくてはいけないと感じます。多くの日本人にとって当たり前のものである平和を維持するには、相当の覚悟と努力が必要なのです。
そんな気持ちで定例会の質問の準備をしていると、初山別村の秋山直人さんからメールが来ました。
第60回全国青年農業者会議の意見発表部門で、日本一である農林水産大臣賞を受賞したとの知らせです。
秋山さんは私よりも干支一回り若い31歳。しかし農業に対する情熱、見識は非常に優れており、私は秋山さんを「先生」と呼び、日ごろから様々教えを頂いております。
【左から3人目が秋山直人さん】
昨年12月22日に開催して頂いたJAるもい青年部の皆様との意見交換の場でも、積極的な発言をしてくれていました。意見交換の場に着くと、一人だけ赤い髪の方が背筋を伸ばして最前列に座っている姿が見えました。まるで漫画『北斗の拳』の初期に出てくるキャラクターのようで、少し驚いたものでした(笑)。本人曰く、「何事もパンチ力が大事です」と。
秋山さんのすごいところは、見た目で強烈なインパクトを与えるだけでなく、中身でも人を圧倒する見識があることです。
秋山さんは全国会議に先立って行われた北海道での青年農業者会議でも最優秀賞を受賞しています。留萌管内では20年以上ぶりの快挙だそうです。
ちなみに、今は髪の色を黒くしているそうです。
【今年2月3日付留萌新聞】
水田活用の直接支払い交付金の運用見直しが昨年農水省から示され、現場の生産者の中には大きなお戸惑いを感じている方がいます。留萌管内も同様で、秋山さんも今後の営農のあり方を大きく見直す岐路に立たされていると、先週の土曜日2月26日、電話で話した時に、心情を打ち明けてくれました。
「それでも自分は諦めていないです。水活交付金は今後5年のうちに見直しに対する対応を決めていかないといけませんが、自分は5年と言わず、『100年続く農業』を確立したいんです」
不安の中にも希望を捨てず、一層大きなビジョンを示してくれた秋山さんのような若手を何とか支えなくてはならないと、私は強く感じました。
今日の受賞の知らせの後に、秋山さんが発表内容をメールで送ってくれました。
「初山別に改革を!~夢をかなえるために~」というタイトルの発表では、冒頭次のような問いかけがあります。
「あなたの夢はなんですか?私には『地域の農業を守る』という大きな夢があります。」
秋山さんは、農家戸数の減少が深刻な問題になっている初山別村の農業を守るため、自分が地域農業を守るモデルになることを決意し、就農7年目に法人を設立しました。そして法人化にあたって、次の三つの目標を設定しました。
① 新規参入者を採用し、農業人口の減少に歯止めをかけること。
② 法人就農を推進し、通年雇用と安定収入を保証すること。
③ 自由な発想で初山別村にはなかった農業の形をつくっていくこと。
具体的な目標は設定したものの、周囲の目も温かいものばかりではなく、秋山さん本人も強いプレッシャーを感じることが多かったようです。
しかし、後戻りはできない。秋山さんは覚悟の下、具体的な行動を起こします。
まずは2名の研修生を迎え入れ、農業指導を行いながら、自分の農業に対する想いを伝えていきます。他には修学旅行生の農泊受入や体験型農業、冬野菜の栽培など、今までの初山別村にはなかった1年を通して農業ができる仕組みや、新しい農業の形を一緒につくり始めました。
道北の厳しい冬でも農業ができることを証明したことは、初山別村の宮本憲幸村長も高く評価し、村にとっての大きな希望であると、先日お会いした際に話されていました。
それが今までの初山別村の農業のイメージを変え、今では画期的な通年雇用の形として、冬野菜の栽培を勧める取り組みが村をあげて行われるようになりました。
更に秋山さんは、自分についてきてくれた研修生と、共に研鑽を積み、自分を励ましてくれた4Hクラブの仲間に感謝の気持ちを伝え、現在1100人ほどの初山別村の人口減少の緩和に貢献できる地域農業の確立へ、意を強くします。
更に、
「たった1戸の農家しか残らないはずだった私の地区に、社員たちが新築一軒家をバンバン建てられるような法人になっていくこと」
という新たな目標を立てます。
そして最後に、
「いつか若者たちが初山別で、留萌管内で農業がしたいと思えるような未来を、農業に夢が持てる未来を私は創っていきます」
「あなたの夢はなんですか?夢を実現させられるかどうかは、私たちの行動次第です。私は夢を夢で終わらせない。諦めてたまるもんか。こんなワクワクする仕事は他にないんだから。」
と力強く締めくくります。
他者への感謝、地域への責任感、夢を必ず実現させるという前向きな思い。どれも素晴らしく、日本一を獲るにふさわしい感動的な内容でした。
こういう農業者が地元にいること、こういう方を支える同志がたくさんいること、これは留萌管内のみならず北海道にとっての大きな財産です。
プレッシャーを行動への力に変え、夢を諦めるのではなく必ず実現させる。秋山さんの快挙に、私も大いに啓発されました。
秋山さん、本当におめでとうございます。地域の為に頑張って下さったこと、私からも心から感謝申し上げます。
私の夢は「北海道、日本を元気にする留萌管内をつくること」です。夢の実現のため、一層勉強し、仲間を大切にして、共に行動して参ります。