10月半ば、ついにTPP交渉が合意に達しました。
質問した時点ではまだ交渉がまとまっていないという前提でしたが、合意される前から、道として様々な内容を想定し、準備をすべきでないかと質しました。
合意に達し、その内容が次第に明らかになってきた今、具体的な行動が何より求められています。
TPPに負けない強い道内農業をつくるのなら、基盤整備が欠かせません。農業農村整備事業の予算確保に向けた道の取り組みなどについても質しました。
平成27年第3回北海道議会定例会(予特)開催状況
開催年月日 平成27年9月28日(月)
質問者 北海道結志会 浅野貴博委員
答弁者 農政部長 土屋俊亮
農業経営局長 鳥海 貴之
農村振興局長 山田 恵二
政策調整担当課長 桑名 真人
農村設計課長 藤田 二
TPP参加を見据えた道の対応について
北海道結志会の浅野貴博でございます。いつも道農政部の皆様におかれましては、本道のかけがえのない産業である農業を振興し見守っていくために大変なご努力を重ねて頂いていることに、まず、心より感謝を申し上げます。皆様の日頃の取組に敬意を表しながら、大きく二つの項目について質問して参ります。
1.質問 :
一つ目は、現在交渉が進められているTPPに対する道の様々な認識というものを伺ってまいります。 TPPにつきましては、高橋知事も7月末にハワイにまで行かれまして、甘利担当大臣に対して、「国会決議が順守されるよう毅然とした交渉を国に強く求める」旨のコメントを随所で出されております。その国会決議、2年前の4月18日に衆参両院で議決されたものでございますが、その文言を改めて見直してみました。
例えば、いわゆる重要5品目については「引き続き、再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」と項目の一には書かれております。また項目の六には、「交渉に当たっては、二国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。」とされております。
これを踏まえまして、まず、道として、かつて政府の統一試算とは別に、TPP参加による本道への影響について独自に試算を行われていると承知しますが、その試算について改めて説明して下さい。
答弁 : 政策調整担当課長
TPPの試算についてでありますが、道では、平成25年3月に、TPPにより関税撤廃した場合の本道農業への影響について、国の試算の方法に準じて、試算を行っております。
具体的には、関税率が10%以上かつ道内生産額が10億円以上のコメ、小麦、牛肉、豚肉、乳製品などの農産物12品目を対象に試算した結果、農産物の生産額減少額が4,762億円、関連産業や地域経済をも含めた影響額合計では、1兆5,846億円との結果を公表しているところです。
2.質問 :
ただ今、桑名課長からご説明頂いた道の試算、仮に現実のものとなった場合、本道農業が持続な発展を遂げることは可能でしょうか。道の認識をお示し下さい。
答弁 : 政策調整担当課長
TPPの影響に関する試算結果についてでありますが、道が公表した試算は、国の試算方法に準じて、関税が即時に撤廃された場合としており、こうした試算によれば、本道農業や地域経済に対し、甚大な影響を及ぼすものと、考えているところでございます。
3.質問 :
その甚大な結果を及ぼすと思われる試算結果が現実のものとなった時に、道としてどのような本道農業の振興策をとるのか、そのシミュレーションはされていますでしょうか。
答弁 : 農業経営局長
試算結果を踏まえた道の対応についてでございますが、試算結果によりますれば、関税が即時に撤廃された場合、大変深刻な影響が生じる事態となりますことを踏まえ、道といたしましては、これまで、国に対し、様々な機会を通じ、農林水産物の重要品目の関税撤廃を認めないなどとされている国会決議の遵守などにつきまして、強く求めてきたところでございます。
4.質問 :
今の道の試算というのは、関税を撤廃するという国会決議に明白に反するものでありますから、現実にそういう形で交渉がまとまるということは無いと思いますが、それについて試算を行っていないという答弁だと思うのですけれど、繰り返し道がおっしゃってます、国会決議が順守される形で、TPPの交渉がまとまり、それが国会で批准された、実際にTPPが発効した際にですね、本道農業として、どのような影響が出るか、道として、その試算は行われているでしょうか。
答弁 : 政策調整担当課長
TPPの影響に関する新たな試算についてでありますが、TPPについては、現在、関係国で交渉が行われている中で、様々な報道がなされているところでありますが、具体的な内容に関する公表はなさていないところです。
道といたしまして、TPP交渉が締結された場合の影響試算については、前提となる交渉条件が明らかになっていないことから、現時点では、難しいものと考えております。
5.質問 :
今、答弁ありましたように、そもそも、交渉が行われて、いろいろ新聞報道では漏れ伝わってますけれど、政府として公式に公表したものがひとつも無い。そんな中で、どういう対応とるのか難しいというのはよく分かるのですが、そもそも国会決議の文言、一と六を見ても、例えば関税が撤廃しないものとされていますけれど、撤廃しないならどの程度まで下げるのを良しとするのか、そうしたことに、なんら明確にされていないことも事実であります。
交渉に臨む以上、あらかじめここまで関税を下げるのを、日本として良しとして、その交渉に臨むといったこと、情報を漏らす事はもちろん出来ないのですが、また我が国の、北海道の農業のあり方、関税のみで農産物の輸入物の価格が決まるものではないというのは理解出来るですが、例えば道の見解として、この国会決議にも書いてます「引き続き再生産可能となるように」若しくは「聖域の確保を最優先する」と、国会決議のこの一と六に書かれているもの、関税措置に限っていえば、どの程度の重要5品目、米や麦や乳製品、牛肉、豚肉ありますけれど、どの程度の関税水準であれば、本道にとって「再生産可能」となり「聖域の確保」と言えるのか、道としての見解をお示し下さい。
答弁 : 農業経営局長
国会決議についてでございますが、TPPにおきましては、農産物の市場アクセスに関しまして、関税率のみならず、輸入量が急増した場合に関税率を引き上げるセーフガード措置なども含めて、交渉されているものと承知をしております。
また、輸入される農産物の価格や数量については、こうした国境措置のみならず、国際市況や為替レート、さらには輸送コストなどの様々な要因によりまして検討するもので、国内への影響、いわゆる再生産の可能性などに関しまして、関税水準のみで、一概に論ずることは難しいものと考えているところでございます。
いずれにいたしましても、交渉の結果いかんによりましては、我が国の農業に、大きな影響を及ぼすことが懸念されますことから、重要品目の関税撤廃を認めないなどとする国会決議を遵守し、毅然たる姿勢で交渉していただくことが重要と認識しているところでございます。
6.質問 :
いろいろと過去の新聞記事を見直しましたら、米に関しては、米国産の米を無関税で輸入する枠を、協定発効そうそう直ちに新設をして、それを10年かけて、5万トンから7万トンにするだとか、牛肉の関税を、15年かけて、38.5から9%に下げるだとか、豚肉の従量税を、1キロ当たり482円を50円にまで段階的に下げるとか、バターや脱脂粉乳は、生乳換算で7万トンの特別輸入枠を設けるだとか、いろんな情報が出てます。
それが正式に決まったものではないし、本当に交渉がなされているものかどうか確かめようがないにしろ、こうした様々な行く末というものを情報として、当然皆様方もキャッチしているものと思います。 道として、関税水準のみで一概に論ずることは出来ないという今の答弁は最もなんですよ。関税に関してはこういう流れがいろいろと出てきている、流れを受けて、現実の国境措置として、こうしたものが実際のTPPの交渉を行って、それが発効して、効果を得ていくとしたらどうなのか、本道農業はどんな影響を受けるのか、その影響を避けるために、道としてどんな農業政策を打っていくのか、外部につまびらかに出来ないにしても、農政部の皆様を中心として、知事、そうした方々と、さまざまな、頭の体操を、想定対応ぶりを、今から考えて頂くことが必要だと思うのですが、それについての道の認識は如何ですか。
答弁 :
本道農業への影響についてでありますが、国はまさに今、交渉参加国との間で、農産物貿易をめぐり、国会決議を踏まえ、毅然とした姿勢で、厳しい交渉を行っているものと承知しております。
こうした中で、現時点において、交渉内容が明らかになっておらず、輸入価格や数量についても、様々な国境措置などにより影響されるものであることから、本道農業への影響や対応について検討することは難しいことでありますが、報道などの限られた情報の中で、懸念される事項などについて、いろいろと「頭の体操」を行っているところであります。
7.質問 :
予算委員会が始まる前に、会派の部屋にもご挨拶に来て頂いたのですが、荒川副知事が、今月の30日からアトランタで始まるTPP閣僚会合に合わせて訪米されていろいろ情報収集に当たられるとの話でございます。
今、桑名課長がおっしゃったように、なかなか検討するのは難しいにせよ、様々な部内での意見交換といいますか、頭の体操はされているとのことですけど、残念ながら、TPP交渉は妥結に向けて進んでおります。
私はあくまでもTPPに日本が入ることはあってはいけないと考えてはおりますが、現実に交渉が進んでいる中で、今後いつまでに交渉がまとまって、国会での批准作業に入って、実際に発効して、いつ頃までに本道農業にどんな影響が出るのか、道が直接の交渉の当事者たりえない中で、ある程度のスケジュール感を想定して、また、様々な考えていることを、議会を始め、外部にひとつひとつ、つまびらかにすることではなく、十分な頭の体操をして、心づもりを今からして頂きたいと思うのですが、それについては見解は如何ですか。
答弁 : 農業経営局長
今後の手順についてでございますけれども、まずTPP交渉が大筋合意となった場合につきましては、署名後は、国内手続きとして、国会で承認をされた後、参加国間で、批准書を取り交わすことによりまして、協定の締結となるわけでございます。
また、協定発効までのスケジュール感でございますがすが、例えば、日豪EPAでは、昨年4月に大筋合意をし、3か月後の7月に署名、国会承認を受けた後、12月に協定を締結し、9か月後の本年1月に発効したところでございます。
TPPは、多国間の協定でございまして、相手国が1か国の日豪EPAに比べまして、署名などまでにより多くの日数を要するともいわれていますが、単純な比較は出来ないわけでございますが、そのスケジュール感を見通すことは現時点で困難と考えておりますが、状況を注視いたしまして、情報収集に努めてまいりたいと、そのように考えております。
8.質問 :
大変ていねいなご答弁ありがとうございます。実際に日豪EPAの流れをそのままTPPに適用できないというのは十分に私も理解は出来ます。
繰り返しますが、現実的に残念ながら、TPPの交渉に、日本が入って2年になります。妥結に向けて進んでいるわけですから、妥結して日本が入ってしまうのか、それとも仮に国会で否決されて入らなくてすむのか、いろんな事を、今後の流れを想定して、十分な対応がとれるように、何よりも本道農業がこれからも、北海道だけではなくて日本国民全体の食料を担っていく極めて重要な産業として、こからも持続的に発展していけるように、特に道の農政部の皆さんには大変な重責をこれからも担って頂きたいと考えております。
このような流れを受けて、TPPの行く末を見据えて、今後、本道農業をどのように振興していくのか、最後に農政部長の決意を伺いまして、質問を終えたいと思います。
答弁 : 農政部長
本道農業の振興についてでありますが、これまで知事が、衆参両院の国会決議の遵守などを要請してきた際に、甘利経済再生担当大臣、あるいは林農林水産大臣からは、「国会決議を遵守したと評価されるよう努力する」旨の発言があったところであり、重要5品目すべて抱えるこの北海道の思いを、しっかりと受け止めていただき、国として、交渉されているものと考えているところでございます。
一方、現時点では、交渉は継続中でございまして、その内容も、一切公表されておりませんことから、道として予断をもって、試算や具体的な対応を検討することは難しいというふうに考えております。
いずれにいたしましても、先人のたゆみない努力の積み重ねの上に、現在のように、発展を遂げてきた、この北海道の農業が、今後とも将来にわたって、持続的に発展していくためには、現下の高齢化や担い手不足といった課題に対応しながら、安全・安心な農産物の安定的な生産、供給や付加価値の向上などに取組むことによりまして、生産力と競争力の強化に努めていくことが何よりも重要であると考えており、そういった意味で、農政部として、今後とも、しっかりと取り組んでまいる考えでございます。
指摘 :
具体的な試算や対応を検討することは難しい、それは分かります。重ねて申し上げますが、いろんなケースを想定して、せめて部内での職員の皆様での、こんな事もあり得るかな、こうするかな、そうした頭の体操を、より活発にして頂いて、具体的な検討、試算をいざしなくてはいけない時に、すぐに迅速な対応をして、道民をあげて本道農業を守っていける、これまでの150年の北海道農業が続きましたけれど、これからの150年、300年も、北海道農業が日本国民を食わしていくんだという、それぐらいの気概を持って、これまで対応して頂いていると思いますが、改めてその思いを強くして頂ければと思います。
TPPにつきましては以上で終わりまして、次に農業農村基盤整備事業について質問して参ります。
農業農村整備事業について
9.質問 :
農業農村整備事業に関してですが、残念ながら、平成26年度補正予算、大変な、想定をはずれる予算が減らされてしまいまして、私の地元の留萌管内でもそうなんですが、道内各地の農業関係者に大きな不安を与えていると承知をいたします。
このような現状に対して、現時点で、どのような認識をお持ちでしょうか、ご説明願います。
答弁 : 農村振興局長
農業農村整備予算に係る認識についてでございますが、 農業農村整備は、安全で良質な農産物を安定的に生産することはもとより、異常気象にも強い農業を確立する上でも重要な役割を果たしておりまして、農地の大区画化や排水対策の強化、さらには、施設等の長寿命化などの基盤整備に対しまして、地域からは多くの要望が寄せられております。
しかし、昨年度の補正予算も含めました今年度の事業予算につきましては、地域の整備要望に十分には応え切れておりませんで、必要な予算総額の確保が課題であるというふうに考えています。
10.質問 :
その必要な予算の確保、予算総額の確保に関しては、道は、道独自のみならず、他府県との連携もとられていると、道内市町村も当然ですけども、他府県との連携をとられていると承知しますけども、その他府県との連携とは具体的にどのような形の連携であるのか、あらためて説明してください。
答弁 : 農村設計課長
他府県との連携についてでありますが、本道の農業農村整備予算を確保するためには、国全体の事業予算が十分措置されていることが必要と考えます。
このため、道といたしましては、農業農村整備の全国代表者会議において、他府県と共に、国に予算の確保を要望したほか、全国知事会や北海道東北地方知事会の国への提案・要望において、他府県とも連携を図り、農業農村整備予算の確保を「重点事項」として盛り込むなど、必要な予算総額の確保について、国に強く求めてきたところでございます。
11.質問 :
今、ご説明いただいた他府県と連携しながらの国への予算総額確保に向けての働きかけですが、具体的に国のどういった機関に、どんな働きかけをしているのか、あわせて説明してください。
答弁 : 農村振興局長
国への働きかけについてでございますが、道では、国の概算要求前の7月末と概算決定前の11月末に道議会と合同で、当初予算を基本といたします予算総額の確保につきまして、農林水産大臣や国土交通大臣をはじめ、両省の幹部、さらには北海道選出国会議員などに対しまして、アポを取るなどいたしまして、直接要請をしております。
今年の取り組みを具体的に申しますと、7月末に知事を筆頭に農林水産省などに農業農村整備予算総額の確保を要請いたしましたほか、先程の答弁でも触れましたが、全国知事会の要請におきましては、特に重点的な要請事項ということで、初めて、農業農村整備予算の確保を盛り込むとともに、北海道東北地方知事会の提言におきましては、基盤整備の強化について、新たに項目を立てるなどいたしまして、農林水産大臣に要請したところでございます。
さらに、事務レベルにおきましては、農林水産省や国土交通省の担当者に、北海道における大区画化や暗渠排水など、基盤整備の必要性ですとか、その効果、及び、地域が要望しております整備の内容について説明をいたしまして、予算総額の確保について、強く求めてきたところでございます。
12.質問 :
農業農村整備事業、これは先程申し上げたTPPに、今後、日本が入る入らないを別として、本道農業の持続的な発展のために是非とも欠かせない事業だと考えてございます。
今、ご説明いただいたような様々な手を尽くして、いろんな関係機関にですね、道として、予算総額の確保の要請をされている中で、来年度におけるこの農業農村整備事業の予算確保、実際の手応えは如何か説明を願いたいと思うのです。
というのは、どの地域でもそうですけど、自分が生きている代に、当初終了する予定だった事業が、これだけ大幅に予算が削られて完了時期が延びれば、自分が生きている代、自分の代ではとても、もう事業の完了を見ることができないんじゃないかと、大きな不安と落胆に見舞われている方々がいます。
道の皆様の取組が具体的に来年度はどのような実を結びそうなのか、その手応えを最後にお伺いしたいと思います。
答弁 : 農政部長
農業農村整備事業に係る現時点での予算状況などについてでございますが、本年、6月30日に閣議決定されました、いわゆる「骨太の方針」におきましては、土地改良事業につきまして、農地の大区画化・汎用化や維持・保全等を一層推進するということが初めて明記をされました。
また、先ほど局長等からも答弁したとおり、道をはじめ、他の府県からも強く、同様の要請を国にしてきたところでございまして、これらを受けて、農林水産省では、来年度の概算要求におきまして、農業農村整備関係予算総額について、国費ベースでは対前年比1,000億円増となる4,588億円の概算要求ということでの、積極的な内容となっているところでございます。
本道の農業が持続的に発展していくためには、農作業の効率化に向けたほ場の大区画化や、農作物の収量、或いは品質を高めるための暗渠排水などの農業農村整備を計画的に推進することが何よりも重要と考えておりまして、道といたしましては、年末の概算決定に向けて、必要な予算の確保を関係団体と一体となって、国に強く求めてまいる考えでございます。
指摘 :
国費ベースで、対前年比1,000億円増の予算要求がなされていると、非常に心強い限りですけど、これが現実のものとなるように、道の農政部の皆様だけでなくて、私たち道議会議員もですね、声を上げていかなくてはならないと思っております。
TPPの対応をはじめ、道庁内で最もお忙しい部所になるのかと思うのですが、是非とも、今後とも、土屋部長はじめとする農政部の皆様の更なる取組みをお願いしまして、質問を終えたいと思います。