質問のポイント
予算特別委員会で総務部に、北方領土問題について質問しました。日ロ政府による領土交渉の展望は全く開けませんが、北方領土隣接地域の振興はしっかり進める必要があります。この点に対する道の認識を質問しました。
質問のやり取り
一 北方領土問題について
(一)現状認識について
(浅野)
今定例会の各会派代表質問の中でも鈴木知事は、現在の国際情勢、日露関係に鑑み、特に2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵略、こうした情勢を受け、現時点で、非常に北方領土交渉が進むことは厳しいという認識を知事も示されております。実際に日本政府は、3月7日に対ロシア制裁に踏み切っておりまして、それに対してロシアの非友好国リストに入れられることとなっております。また9日、ロシアは北方四島を含む地域に進出する日本企業並びに第三国企業への課税を原則20年間免除するという、我が国の領土に対する立場に照らし、とても受け入れられない措置を講じており、これに関しては道としても、3月10日、早急に抗議する旨の、対応を求める旨の通知を政府に対して行っていると承知します。これらの北方領土に関連する直近の動きに対するものも含めて、現状に対する道の認識をまず伺います。
(北方領土対策局長)
北方領土問題についてでございますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、2年続けて四島交流等事業の見送りを余儀なくされてきた中、国際秩序の根幹を揺るがす、ロシアによるウクライナへの侵略は、人道的見地から行われてきた墓参や四島交流、いわゆるビザなし交流で培ってきた日本人と四島在住ロシア人との相互理解と信頼関係をも損ないかねず、断じて容認できないものと考えております。
また、ロシア側が一方的に北方四島への「特恵制度」の導入に踏み切ったことについても、日本の立場や首脳間の合意に基づき日露間で議論してきた共同経済活動の趣旨と相容れず、到底容認できないことから、先般、3月10日、ロシア法に基づく四島への投資などが行われないよう、国に対して緊急要望を行ったところでございます。現在、政府は、「平和条約交渉等の展望について、申し上げる状況にない。」としており、交流等事業や共同経済活動はもとより、領土交渉そのものの具体的な再開時期を見通すことは難しい状況と認識しております。
(浅野)
ただいま局長が、具体的な再開時期を見通すことは難しいという認識を示されましたが、まったくそのとおりだと思います。こういった状況になった原因はロシアによる暴挙でありますので、それが収まらない以上、日本側から北方四島の交渉を持ち出せる状況にありませんし、道としても推移を見守るしかないという認識は正しいと思います。
しかし、領土交渉が動かない状況の中でも、道がこれまでやってきた根室管内1市4町隣接地域の振興はしっかり行うべきであり、また各振興局でも署名等の活動が行われていますが、元島民の方々や領土交渉に関わってこられた方、望郷の想いを年々強くされている方々に対するケアの意味も込めた地道な世論啓発も行っていくべきだと考えております。
(二)北方領土隣接地域振興等基金積立金について
1 運用状況について
(浅野)
いわゆる北特法第10条に基づき、道が国からの補助を受けて設置して、運用している北方領土隣接地域振興等基金積立金について伺います。平成28年12月に、私が当時行わせていただいた質問に対しては、平成29年の運用益が約9,800万円であったことを明らかにし、30年度、そして令和元年度はそれぞれ約7千万円、5千万円となる見通しを示しておりました。現在は基金の原資を取り崩して補助財源を確保していると承知しますけれども、平成30年度以降の実際の運用益を含めた補助金額はどのようになっており、それを用いてどのような事業を行ってきたのかを伺います。
(北方領土対策課長)
基金運用益と補助実績についてでございますが、平成30年度以降の運用益は、最も多い平成30年度で7千9百89万6千円、最も少ない令和2年度で5千1百63万8千円となっており、また、基金補助金は、平成30年度で7千8百97万円、令和元年度で3億8千7百90万円、令和2年度で3億6千2百71万円となっております。これまで、水産資源の増大など地域の基幹産業の振興に向けた事業、北方領土問題についての世論喚起に向けた啓発事業、元島民の方々の各種活動を支える援護事業などへの支援を行ってきたところでございます。
2 今後の運用並びに活用のあり方について
(浅野)
令和元年度から基金を取り崩して、大幅に金額を増やして、様々な支援事業、援護事業を行ってきたとのご答弁をいただきました。冒頭申し上げたように、今まったく領土交渉はどうなるかというのは先行きが見えない状況でありますけれども、先ほど申し上げたように、領土に隣接する根室管内、その地域の振興、これからもしっかり行っていくべきだと承知します。特に昨年以来、根室地域では赤潮被害も出ておりますし、ご答弁の中にあった水産資源の増大など、やるべきことはたくさん増えていると思います。こうしたことも踏まえて、道は補助財源の確保並びに基金活用のあり方について、どのように取り組んでいくのか伺います。
(北方領土対策課長)
北方基金の運用などについてでございますが、道ではこれまで、基金に属する現金を金融機関への預金など最も確実で有利な方法により運用するほか、金利低下による大幅な運用益の減少や隣接地域の意向を踏まえ、財政支援の強化を国に要望し、平成30年7月には、北方基金の取り崩しを可能とする改正北特法が成立し、補助財源の確保を図ってきたところでございます。道といたしましては、限りある基金原資を有効活用する観点からも、今後、必要な財源の確保や隣接地域の一層の振興に向けて、国や地元1市4町と十分協議を重ね、引き続き隣接地域の振興などが着実に図られるよう、国に要望してまいる考えでございます。
(三)「北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画」について
(浅野)
隣接地域の振興が着実に図られるように国に要望するというご答弁をいただきました。現在8期目の最終年を迎えようとしている北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画について伺います。第8期の最終年に向けて、このような大変な国際情勢の変化が起こるとは誰も予想していなかったと思うんですけれども、この計画は、北方四島共同経済活動の中心的存在として役割を担っていくことが期待されている隣接地域が、引き続きこうした役割を果たしていけるように振興に取り組むために道が計画を作ったものと承知します。道として第8期計画の今後のあり方並びに第9期計画のあり方について現時点でどのような認識を有しているのか伺います。
(北方領土対策課長)
振興計画についてでございますが、来年度は、第8期振興計画の最終年度であることから、現行計画策定時に定めた「活力ある地域経済の展開」をはじめとする6つの基本的な柱に基づき、隣接地域1市4町では、目標の達成や隣接地域の発展に向けて、計画している各般の施策を着実に推進していくものと認識しております。また、第9期振興計画につきましては、今後、令和4年度において、策定に向けた具体的な検討を行うこととしており、現行計画の評価・検証や、隣接地域における新たな課題などにつきまして、地域の皆さまと十分に意見交換を行うほか、国や庁内関係部局と連携しながら、より実効性の高い計画となるよう、取り組む必要があるものと認識しております。
(浅野)
北方領土問題は日本国家の問題でありまして、日本国民等しく考えていかなければいけない問題でありますが、海の向こうに島を望む根室管内、隣接地域の方々が、最も身近にその問題を感じているところでありまして、引き続きしっかりと振興に臨んでほしいと、第9期計画に関しても、北方領土問題が最終的に解決するまでしっかり隣接地域を振興していくんだという下で新たな計画を作ってもらいたいと思います。
(四)今後の取組について
(浅野)
最後に今後の取組について伺います。
領土交渉の今後がまったく見通せないことはこれまでの質問の中でいろいろ述べましたが、知事としても代表質問の答弁などで交流事業については様々な状況を見ながら再開できるように準備をしていくこと、啓発事業については効果的な手法を活用しながら引き続き積極的に取り組む旨、答弁をされていました。道は、2月7日の北方領土の日のイベントや8月27日の北方領土返還要求北海道・東北国民大会など、節目となる会合を開催することの他に、日常的に署名集めなども行っております。今後も両政府の領土交渉の再開時期は見通せませんが、日常的な啓発活動と隣接地域の振興は今後も同様にしっかり行っていくべきと考えます。これらのことを含めて、領土問題の世論喚起に向けた今後の道の取組について最後に伺います。
(北方領土対策本部長)
今後の取組についてでございますが、ウクライナ情勢により、領土交渉の展望も見通せない状況下にありましても、元島民の方々はもとより、長年にわたり北方領土の返還を切に願ってきた道民の皆さまの思いを支える啓発活動や、隣接地域の振興の取組は、領土問題解決の促進に向けて大変重要であると認識しているところでございます。北方領土を行政区域の一部とする道としては、我が国固有の領土である北方四島の一日も早い返還に向け、地元自治体や関係団体の皆さまと一層連携し、北方領土に関する歴史的事実や我が国への帰属の正当性について、改めて周知するなど、領土問題に対する意識の向上と、北方領土返還に向けた世論の一層の喚起が図られるよう、ICTなど効果的な手法も活用して、啓発活動を行ってまいります。
(浅野)
相手方との交渉が見通せない時期だからこそ、我が国の内部を固めることが大切で、特に元島民の方々をはじめ、関係者の方々へ寄り添う姿勢をしっかり示していただきたいと思います。
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