質問のポイント
道庁は毎年、大卒者対象のA区分、高卒者対象のB区分、5年以上の社会人経験を有する者対象のC区分と、主に三つの区分で職員を採用しています。
ポストコロナにおいて、社会のあり方は大きく変わり、従来の発想にとらわれない政策づくりが道庁、道議会共に求められます。
学校を卒業した後にすぐ道職員となり、行政経験を積み重ねてきた職員ももちろんですが、他業種を経験し、多様な経験と知識を有する社会人採用職員が、自分の経験と専門知識を基に一層活躍できる環境づくりが、これからの北海道の為に求められると考えます。
DXや企業誘致、道有資産の有効活用、様々な地域づくり活動。社会人採用職員を中心に、一つの行政課題に対応するチームをつくるのも一案ではないかとも考えます。
総務部人事局に対し、これらの認識を質問しました。
人事局長からは最後に「C区分採用者と若手職員や市町村職員が交流・協働できる機会を積極的に創出するなど、人的ネットワークの構築や活躍の場を拡げる環境づくりを進める」との答弁を頂きました。
地域づくりは、結局人づくりです。今後の道における人材育成に期待します。
質問のやり取り
一 多様な経験を有する北海道職員の活用について
(浅野)
北海道総合計画の2021年改訂版が新たに策定されまして、ポストコロナの未来を切り拓くために3つの視点、今後道行政を進めていくという知事の強い意思が示されていると感じております。輝き続ける北海道を目指していくためには、道において多種多様な人材の発掘並びに育成が今後更に重要性を増していくと考えます。
このことを踏まえて、社会人採用の意義についてまず伺って参りたいと思います。
(一)社会人採用の意義について
道は毎年、民間企業等の社会人経験を5年以上有する方、C区分として人材を採用していると承知します。 高校や大学等の学校を卒業した後すぐ道職員となる方とは異なる多様な経験を有する方を採用することは、道行政を進める上で大いにプラスになるものと私は考えますが、道は社会人経験のある方を採用することの意義をどのように認識しているのか、まず伺います。
(人事課長)
社会人経験者の採用についてでありますが、道では、職員の年齢構成が偏り、将来の道政の中核を担う中堅職員が不足する中、民間企業等で培った知識・経験やマネジメント能力などを有し、即戦力となる人材を確保するため、職務経験を有する方を対象としたC区分採用試験を実施しておりまして、昨年度の試験においては、不動産業や金融、情報通信・サービス業など多様な職種から、一般行政職を88名、技術職を50名採用したところでございます。採用された職員は、配属された所属において、それまで培った柔軟な発想力や企画力、折衝力などを活かしながら活躍しており、周囲の職員に対しても大きな刺激となり、意識改革の醸成など道組織の活性化に繋がっているものと考えております。
(浅野)
ただいまご答弁にあった「柔軟な発想力、企画力、折衝力」、これまさにC区分採用で来られる職員に期待されるところだと思うのですが、具体的にそれらの発想力、企画力、折衝力などを道の政策において、どのような場で活かされて、具体的に、こういう成果が見れた、これまで道としてお示しいただけるものがあればお聞きしたいと思います。
(人事課長)
C区分採用者についてでありますが、採用された職員は、配属されたそれぞれの所属で、政策形成や事業推進における庁内外の関係者と調整する場面などにおいて、それまでの職務経験で培った折衝力やコミュニケーション能力を発揮され、即戦力として活躍されているものと認識しております。また、仕事の進め方や発想力、日常業務におけるプレゼンテーション能力などは、若手職員の良い手本として刺激となるほか、業務改善への意識を高めるなど、組織の活性化に繋がっているものと考えております。
(浅野)
ありがとうございます。折衝力というお言葉がありましたが、今、大雪被害が発生している中で、札幌市や自衛隊、関係機関との協議の中で必要とされるのが折衝力であると感じました。
(二)社会人採用職員の活用について
北海道総合計画の基本姿勢の中に「道民と協働で、人と地域の未来を創る」とあります。これは、行政と地域がより密接につながることによって、経済や文化など地域の総合的な力を向上させることを目的としているものと理解します。社会人経験を有する者を道職員として採用することに大きな意義がありますが、一方で、道職員の皆さんのお仕事は、新たな政策を創ることはもちろんですけれども、それ以前に日常的な許認可だとか、行政事務を滞りなく進めていくことも大きなウエイトを占めるんだろうと思います。多様な社会人経験を経て企画力や柔軟な折衝力を持った職員が、その経験・見識を活かせる環境を整えていくことが重要であるとも考えます。
C区分を通じて採用された職員の所属部署並びに担当業務の決定に際して、その職員が社会人時代に積み重ねて得てきた経験はどのように考慮されるのかを伺います。それと共に、その職員が社会人時代の経験を道行政に活かし、道の総合計画の基本姿勢にある「道民と協働で、人と地域の未来を創る」ための業務を行える環境は十分に整っているのか伺います。
(人事課長)
C区分採用者の配置等についてでありますが、民間企業等において職務経験を有するC区分採用者には、その経験を最大限に活かし、存分に活躍していただくことが重要であります。このため、採用にあたって、可能な限り、それまで培った知識や経験を業務上で活かすことができるよう配置しますとともに、一定の年齢や経験を有する方については、採用当初から役付職員としての任用も行っているところであります。
また、採用時においては、道の組織や政策の内容、社会人経験者として期待される役割などを学ぶ研修を実施するほか、採用4年目には、職務経験を公務に活かす考え方や手法を学ぶとともに、民間経験を持つ先輩管理職員から実践的な助言を受けられるフォローアップ研修を実施するなど、C区分採用者に特化したカリキュラムを導入し、その能力、経験を十分に発揮できるよう、環境整備に努めているところでございます。
(浅野)
(三)「経験不問枠」について
道は2020年度からC区分の中に、「経験不問枠」としていわゆる就職氷河期に社会人を迎えた世代の採用にも積極的に取り組んでいると承知をします。この制度の概要を伺うとともに、来年度以降の「経験不問枠」試験の実施について、どのように考えているのか伺います。
(人事課長)
いわゆる就職氷河期世代を対象とした採用試験についてでありますが、道では、従前から実施しております、民間企業等での職務経験が5年以上ある方を対象としたC区分採用試験に加えて、令和2年度から、国の要請などを踏まえ、就職氷河期世代の方々を対象とした、職務経験を不問とする採用試験を実施しまして、多様で有為な人材確保に努めているところでございます。就職氷河期世代を対象とした職務経験不問枠の採用試験につきましては、国と同様に、3年間の集中的な取組として、来年度も実施することとしておりまして、それ以降の取扱いにつきましては、国や他都府県の動向を注視するとともに、3年間の実施結果も踏まえ、人事委員会と協議してまいる考えでございます。
(浅野)
国の要請を踏まえてということで、3年間の集中的な取組として、この経験不問枠試験を採用するという認識を示していただきました。それ以降については、国や他府県の動向を注視するとともに、実績、結果を踏まえて、どうするか協議をするとのことですが、就職氷河期世代の方は本当に大変な想いを経験されて、職場経験の中で十分なキャリアを積むこともできなかった、そうしたことができる環境ではない中で働かざるを得ない方が多かったと思います。そうした経験を道行政に活かすことも非常に重要かと思いますので、国や他府県の動向を注視するのもわかりますけれども、道独自の考え方のもとでですね、3年度以降も実施することを検討していただきたいと思うのですが、この点についての認識を伺います。
(人事課長)
就職氷河期世代を対象とした採用試験についてでありますが、道では、職務経験を不問とする採用試験を、国と同様に、3年間の集中的な取組として実施してきたところでありまして、その後の取扱いについては、3年間の実施結果を踏まえますとともに、従前から実施しているC区分採用試験のあり方と併せて検討するなど、中長期的な視点に立ち、多様で有為な人材の確保について、人事委員会と協議してまいりたいと考えております。
(浅野)
是非協議して、道独自の視点というものも盛り込んだ対応を検討していただきたいと思います。
(四)社会人採用職員の更なる活用について
北海道総合計画改訂版の基本姿勢に「北海道ならではの個性あふれる地域」という文言が示されています。基礎自治体である市町村の職員は、業務を遂行する上で地元住民と密接に関わる機会を得られやすい立場と考えますが、道は広域自治体でありますから、市町村間、また国と市町村、先ほどの大雪被害のように関係機関との調整等の連絡調整を担うことが多い。その結果、市町村職員と比較すれば、地域住民と直に触れ合い、地域の実情を肌感覚で知る機会は、振興局の職員はまだしも、本庁の職員の方はどうしても少なくなってしまうのかなと考えます。
一方で道の強みは、道内全179市町村の実情を把握し得る全道域に渡るネットワークを持つことであったり、これまで議論してますC区分で採用された職員をはじめ多様な経験を持った職員を多く有することだと考えます。このような道の強みを更に強く発揮させるには、金融、不動産、各種サービス業、IT業等の多様な専門知識や経験を持ち、更に人と接することを他の試験区分で採用されたABの職員よりも多く経験した社会人採用職員を更に活用して、能力を発揮させて、全ての道職員の能力を底上げしていくことが重要かと考えます。
そのための方策の一つとして、専門知識や経験、人脈を持つ社会人採用職員を中心としてひとつのチームを作り、仕事をさせることも有効ではないかと考えます。例えば、IT企業で直接その技術を持つ職員を活用するだとか、企業誘致も行っているかと思いますが、企業経営や営業を経験した者に、どういう地域であれば企業として進出したいか、企業側の心理が分かっている方に施策立案をさせる。私の地元にも旧留萌高校の庁舎がそのまま手つかずで残されており、全道各地に遊休資産というものがあると思いますけれど、それをどう活用するのか、それについては、不動産業や金融業を経験した職員の知見が活かされると思います。
また今後、北海道総合計画の「地域づくりの基本的な考え方」の中で、これまで以上に地域の特性を活かした取組が持続的に進められることが必要であると、そのために官民連携、多様な主体と連携・協働していくことが重要であるということが謳われておりますけれども、例えば、観光振興などの幅広い観点からの地域経済活性化のための事業は、企業や行政のみならず、例えば、青年会議所、商工会議所青年部、商工会青年部など、地域に住む若手の経済人が主導となって、本業以外の時間をやりくりして行っていることも多くあります。道として、これらの団体の活動に地域づくり交付金の交付をはじめとする各種支援を行っていると承知をしますが、社会人採用職員を中心にこれらの組織との人脈を構築させて、ポストコロナを見据えた地域振興策を考案させる。こうしたことを行える専門チームを作るのも私はひとつかなと思いました。
社会人採用職員の更なる活用と道職員全体の更なる能力向上に向け、今後どの様に取り組むのか伺います。
(人事局長)
C区分採用者の活用についてございますが、道では、社会情勢の変化や、高度化・多様化する行政ニーズに的確に対応していくためには、C区分採用者の多様な職務経験と幅広い知識を最大限に活用することが、大変重要であると認識しており、これまで、役付職員への積極的な任用など、適材適所の人事配置を進めるとともに、効果的な研修の実施に努めてきたところでございます。
道といたしましては、今後、ポストコロナを見据えた様々な地域課題に対応していくためには、C区分採用者の活躍の場を拡げていくことが効果的であると考えておりまして、道職員全体の能力の底上げに繋げていくことはもとより、広く地域全体との連携や協働により相乗効果を図っていくため、C区分採用者と若手職員や市町村職員が交流・協働できる機会を積極的に創出するなど、人的ネットワークの構築や活躍の場を拡げる環境づくりを進めることにより、C区分採用者の能力を一層活用するとともに、道組織の活性化や新しい職場風土づくりに繋げてまいる考えでございます。
(浅野)
「C区分採用者と若手職員、市町村職員が、交流・協議できる機会を積極的に創出する」と、また、「人的ネットワークと活躍の場を拡げる環境づくりを進める」とご答弁いただきました。この若手職員、市町村職員と交流・協働できる機会、いつまでにどのようなものをお作りになるお考えなのか、また道職員間、道職員と市町村職員との交流というのも重要かと思うのですけれども、地域の民間の方々、地域住民との交流の場・協働の場も必要かと思うんですけれども、その場をつくることについてはどう考えているのか、最後に2点伺って終わります。
(人事局長)
C区分採用者の活躍の場の創出等についてでありますが、道では、これまで、道職員や市町村職員、さらには民間企業等の職員が集まり、具体的な地域課題をテーマに演習を行う研修を実施するなど、相互の情報交換や、官民連携に向けた人的ネットワークの構築に取り組んでおりますほか、地域で活躍する民間のゲストを招き意見交換するなど、道政の諸課題等について調査研究するグループ活動への支援を行っているところでございます。C区分採用者につきましては、職務経験などを十分考慮し、適材適所の人事配置に努めておりますが、今後、こうした取組などに参加する機会を積極的に創出し、多様な連携・協働による地域課題の解決や人的ネットワークの構築につなげるなど、C区分採用者が配属された所属で効果的にその能力を発揮できる環境づくりを進めてまいります。