〜日ロ首脳会談で示された「新しいアプローチ」について〜
5月6日に行われた日ロ首脳会談で「新しいアプローチ」が示されました。これに対する道の見解はどのようなものか、そして未だ「四島一括返還」という文言を知事が使っていることについては適切なのかと質問しました
平成28年北方領土対策特別委員会開催状況
開催年月日 平成28年5月11日(水)
質問者 北海道結志会 浅野貴博 委員
答弁者 北方領土対策本部 参事
水産林務部 国際漁業担当課長
5月6日の日ロ首脳会談について
1.質問 : 日ロ首脳会談について
橋本委員のただいまのご質問と重複する部分もございますが、以下数点伺ってまいりたいと思います。
5月6日、ソチで行われた日ロ首脳会談、様々な新聞報道なされまして、それぞれ評価がなされていますけど、道としては、今回の結果を全体的にどのように評価されているのか、まずその見解を伺いたいと思います。
答弁 : 東田参事
日ロ首脳会談についてでありますが、外務省から発表された概要によりますと、今回の会談では、両首脳間で、北方領土問題を含む平和条約締結問題をはじめ、政治対話や要人往来などの日ロ関係全般、経済、安全保障分野、文化・人的交流などの二国間関係、ウクライナや北朝鮮などの国際情勢全般について話し合いが行われたことは、停滞していた領土交渉を打開する上でも意義があるものと認識しています。
2.質問 : 「新しいアプローチ」について
この首脳会談で、日ロ両首脳は、「今までの発想にとらわれない『新しいアプローチ』で交渉を進めていくとの認識」を共有したとされています。伺いますが、「今までの発想にとらわれない『新しいアプローチ』」とはどのようなものか、道としてはどのような認識をしているのか。またこのことについて、政府から具体的な説明を受けているか伺います。
答弁 : 東田参事
「新しいアプローチ」についてでありますが、外務省の概要によりますと、これまでの交渉の停滞を打破し、突破口を開くため、「新しいアプローチ」で交渉を精力的に進めていくとの認識を両首脳で共有したとのことでありますが、その具体的な内容については、明らかにされておらず、今後、その動向を注視していく必要があるものと考えています。
3.質問 : 北方四島の一括返還について
「新しいアプローチ」、思い返せばメドベージェフ大統領のとき、当時日本は麻生内閣だったと思うのですが、同じような文言が出たこともありました。
少なくとも内容はわからないにせよ、これまでの取組ではない柔軟な発想で進めていくんだという両首脳の意気込みの表れだと私は認識をしております。その中で、高橋はるみ知事はじめ道が時折掲げる北方四島の一括返還という文言、このアプローチは、少なくとも今回の首脳会談で出た「今までの発想にとらわれない『新しいアプローチ』」とは合致しない、相容れないものだと私は考えるのですけど、道としては今後もこの四島一括返還という表現を用いていくのかどうか認識をお示しください。
答弁 : 東田参事
北方四島の一括返還についてでありますが、「新しいアプローチ」の内容は明らかにされていませんが、我が国固有の領土である北方四島の返還は元島民の共通した思いであり、道としては、生まれ育ったふるさとの一日も早い返還を切望されている四島それぞれの元島民の心情を考えると一括返還を願っているところであり、引き続き、粘り強く運動を展開してまいる所存であります。
指摘 :
元島民の方々などの心情を考えると一括返還を願っているという答弁いただきましたが、先ほど報告案件でいただいた要望書の中には、最後の段落で「領土問題が一歩でも二歩でも前進を遂げ、元島民をはじめ、私どもに希望を与えていただきますことをお願い申し上げます」、高橋はるみ知事の名前も入った要望書で一歩でも二歩でも前進をという、これまでになかったこれこそ新しいアプローチじゃないかなと私思うのですけど、こういう文言を掲げておられます。一歩でも二歩でも進めてほしいというのと、一方では道は、一歩でも二歩ではなく、いっぺんに四島、四島一括返還をこれからも求めるというのは、私は矛盾していると思うのです。こうした要望書、そして道の基本的スタンスの整合性を取ることをぜひ考えていただきたい。
ここで答弁を求めずに指摘にとどめますが、その点しっかりと道の認識を整理していただきたいと思います。
4.経済協力などについて
続けて、この首脳会談でなされた8つの経済協力について伺いますが、例えば「健康寿命の伸長」だとか、「快適・清潔で住みやすい都市づくり」だとか、様々な「極東の産業振興・輸出基地化」など、8つ掲げられておりますが、「健康寿命の伸長」などということであれば、特に北海道のおいしい食物だとか自然環境をいかして、そういう取組にしようという議論がなされていることだと思います。
今回掲げられた協力プラン、これは北海道としても特にサハリン州、ロシアの極東地域と地理的に近く、経済や人材交流が既に進められている北海道が大きな貢献ができることだと思うのですね。政府間で進められるにしても、これらのプランについて、他の都府県よりも本道が遅れをとることはあってはならない。むしろ北海道が全国を引っ張っていくような活動をしていただきたいと思うのですが、道としてこのことについて今どのような認識を持っているのかお示しください。
答弁 : 東田参事
経済協力などについてでありますが、道では、総合政策部が中心となって、「経済協力発展プログラム」に基づき、ロシア極東地域との経済交流や友好交流に取り組んでいるところであり、日ロ両国民の相互理解の促進を図り、領土問題の解決につなげていくことが重要であることから、この度示された協力プランを参考の上、一層経済交流が促進されるよう関係部に協力を要請してまいりたいと考えております。以上でございます。
指摘 :
これらの協力プランは、領対本部よりも各部いろいろ部がまたがる話だと思います。今日の新聞報道に出ておりましたが、明日12日、サハリン州知事と高橋知事が会談をされる。その際に様々な北海道とサハリン州としての交流のあり方を議論すると。当然、今回の首脳会談で示された8つの協力プランについても話が出るものと思いますので、そこで北海道としても政府間の交渉は交渉としても、北海道とサハリン州で州、地域レベルでしっかり進めていこうという高橋はるみ知事からそのような話が出ることを私は期待しております。このことについては、次回の委員会で質問したいと思っておりますが、領対本部としても明日の知事同士の会談をしっかりと支えていただきたいと思います。
5.質問 : さけ・ます流し網漁業の代替漁法について
昨年の今頃は、ちょうど北海道の漁船の拿捕事件が起きて、みなさん不眠不休で救出に向けての活動にあたられたことかと思います。あれから1年が経ちまして、さけ・ます流し網漁業ができなくなる、水産林務部のみなさんからすれば、大変な事態が続く中で、日頃から活動していただいていることに感謝申し上げます。
そこで伺いますが、先ほど橋本委員からもお話がありましたが、今回の首脳会談でも、プーチン大統領としては日本側と漁業分野の協力に取り組んでいく旨の話があったと伺っておりますが、流し網漁業の代替漁法の検討が進み、具体的な操業機会の確保が現実となるように、道としては今後どのような取り組みをしていくのか伺います。
答弁 : 中島課長
代替漁法への転換に係る今後の取り組みについてでありますが、道では、これまで、関係漁業者などと協議を行い、希望する漁法や時期などの操業条件を国に要望してきたところです。
これを受けまして、国では、本年度におきまして、試験操業により漁獲効率や経済性など、操業の可能性を検討することとし、水産研究・教育機構と海洋水産システム協会に対し調査を委託しているところであります。
代替漁法による試験操業につきましては、昨日からモスクワにおいて開催されております操業条件を話し合う日ロ政府間協議において実施の可否が明らかになる見込みのため、道では担当職員を派遣し、情報収集や意見具申に努めているところであり、引き続き、関係団体と連携し、漁業者の意向が反映された操業が早期に実現するように取り組んでまいる考えであります。
指摘 :
今、答弁いただいたように、日ロ政府間協議に道の担当職員が入りまして、情報収集や意見具申に努めているというところが非常に重要だと思います。
ぜひとも、根室・釧路、道東の方々をはじめ、この漁法が禁止されたことによって、大変な深刻な影響を受けて、不安を感じている方々の思いを、この日ロ政府間協議で道の担当職員の方がしっかりと代弁をしていただいて、一日も早い代替漁法、操業開始に向けて取り組んでいただきたい、そのことを申し上げまして質問を終わります。