防衛施設等周辺の重要土地の取得に対する規制等について質問しました。(2021年6月14日)

 3月24日に続き、防衛施設等わが国の安全保障上重要な施設の周辺における土地の取引を規制することを目的とする「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」(いわゆる「重要土地法案」)について質問しました。3月の時点ではまだ閣議決定もされず、国会での議論がなされていない状況でしたが、同法案は6月1日衆議院本会議で成立し、当時よりも法案の内容が見えてきたことを受け、道の認識と今後の対応を質しました。

 「立法の必要性がない」という指摘も国会でなされていましたが、道庁は早くから何らかの規制が可能となる法整備の必要性を国に要請していました。安全保障に失敗は許されず、常に最悪を想定し、それを回避するための措置を考えておかねばならないものであり、私も規制のための法整備は必要だと感じております。私権制限が必要最低限のものでなければならないのは言うまでもありません。

 重要土地法案は6月16日未明に成立しました。今後具体的に地方自治体と連携した枠組みが構築されることになるでしょう。様々な懸念を払しょくし、わが国の安全保障がより確かなものとなるよう、国の作業に注目したいと思います。

 

 

(浅野)

防衛施設等周辺の重要土地の取得に対する規制等について

 いわゆる重要土地法案に関しましては、本年3月24日の総務委員会でも質問させていただきました。当時は、まだ閣議決定もなされておらず、衆議院、参議院いずれの議会でも具体的な議論が始まっていない状況でしたが、道の認識や現状などについて伺い、しっかりとした答弁をいただきました。現時点では、6月1日に衆議院本会議で同法案が成立し、参議院に送付されて、議論がなされている状況であります。国会の会期は、今月16日、明後日までとされております。3月時点よりは具体的な状況が進んでいるとの認識の下、以下伺ってまいります。

(一)本道における現状について 

 3月の総務委員会では、本道における防衛施設等周辺の森林の土地で、外国企業または外国人により取得されている状況については、令和元年度12月末時点で、35件、約218ヘクタールであり、航空自衛隊千歳基地や新千歳空港に隣接する苫小牧市内の山林を中国資本が取得する事例が発生した201412月当時と比較して、この7年弱で件数で約4倍、面積で約3倍強増加していることが明らかにされていました。この重要土地法案の内容が閣議決定されて、国会での具体的な審議が進み、衆議院が通過して成立の可能性が極めて高い状況になり、参議院での議論を残す段階となっている今、具体的な規制の形が作られる前に、いわば駆け込み的にこうした土地を取得してしまうという例が相次ぐことを、私は懸念しております。直近において本道における外国企業または外国人における重要土地の取得が増えている実情はないか、道として把握しているものがあれば教えていただきたいと思います。

 

(危機対策課長)

 本道の現状についてでございますが、道では、毎年1月から12月までの期間における海外資本等による森林取得状況を取りまとめ、公表しておりまして、道民の安全・安心な暮らしを確保する危機管理の観点から、この公表データをもとに、自衛隊や警察など国民保護に直結する機関の施設周辺における土地取得状況を把握しております。現在、海外資本等による森林取得状況として、道が公表している直近の状況は、令和元年12月末時点のものでございまして、自衛隊や警察などの施設周辺の直近の状況につきましても、これを基にしたもので、3月の本委員会でお答えした35件、約218ヘクタールであります。

 

(浅野)

 前回ご答弁いただいた令和元年末以降の取得状況については、まだ把握しきれていないとのことであり、なおさら一日でも早く法が成立して、適切に規制をかけられる状況になればと思うのですが。

(二)法案に対する道の認識について

 3月の総務委員会では、この重要土地法案成立させようとする政府の動きに対する道の認識を聞いたところ、道としては、安全保障上、日本の安全保障上の観点から重要な土地の区域を定めて安全保障上重要施設周辺等の土地取得利用の規制に係る関係法令の整備を行うよう、国に対して、重ねて要望してきており、今回の政府による法整備の意図や内容についても、詳細は未定であるものの、これまで道が取り組んできた土地取引の実態把握の目的と方向性を同じくするものであり、国への要望内容も一定程度踏まえられたものであると評価する旨の答弁がなされていました。一方で、衆議院の議論を振り返りますと、基地や原発に反対する市民活動の制限に繋がるのではないか、注視区域、特別注視区域における土地の取引や地価に影響が出るのではないかと、土地利用者の個人情報や思想信条にまで政府の監視が及ぶ個人に対する「無制限の私権制限が生じるのではないか」、又は法案提出のきっかけとされている土地の取引が見られた対馬市、また本道における千歳市から規制を求める要望が政府に特段出されていない。「立法の必要性がない」こうした批判が国会でなされており、その論調に同調するメディアもありました。これらの指摘に対する認識も含めて、道として重要土地法案についてどの様な認識を有しているのか改めて伺います。

 

(危機対策局長)

 法案に対する認識でございますが、我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等における外国資本による土地の買収は、安全保障上の課題でございまして、道といたしましても、こうした課題に対応するための法整備は必要との考えから、これまで、全国知事会などとも連携して、国に対し、様々な機会を通じ要望してきたところでございます。現在国会では、この法案に基づく措置が実施される場合の私権の制限や市民生活に与える影響などについて、議論が交わされているところでございますが、規制の対象となる区域や行為、土地の調査などに関する詳細は、法案成立後に整備される基本方針や政令などにより、今後、具体化されるものと承知してございます。法案では、法に基づく調査や規制などは、個人情報の保護に十分配慮し、必要最小限のものとすることが定められておりまして、道といたしましても、こうした考え方に基づき、国において、具体的な制度設計がなされるべきと考えているところでございます。

 

(浅野)

(三)「注視区域」、「特別注視区域」への道の関与について

 改めて今、このような法整備は必要とのご認識を道から示していただきました。規制の対象となる区域、行為、土地の調査などに関する詳細は、今後、具体化されるものだろうということでしたが、この「注視区域」、「特別注視区域」は、本道において何か所が指定され得るのか、道の認識についてまず伺います。6月6日付けの、北海道新聞では想定される区域として具体的な道内に所在する基地の名称なども挙げられておりますけれども、そうしたことが、現時点で正式に指定されることになるのか、まず伺いますとともに、まずそれぞれの区域における土地の取得については、利用者に対する、氏名、国籍、利用実態等の調査が行われることになることが想定されます。そのための国の窓口を作るという話しも出ておりますけれども、具体的な実務は政府だけで担え得るとはちょっと考えづらく、当然都道府県や市町村の関与も求められるのではないかと考えますが、道は今後どの様な役割が求められ得るのか、現時点での認識を伺います。

 

(危機対策課長)

 区域指定などについてでございますが、法案では、国は、防衛関係施設や海上保安庁施設などの重要施設の周辺1キロメートルの区域内や、国境離島等の区域内で特に対策が必要なものを「注視区域」として、また、このうち、司令部機能や警戒監視機能等を有する自衛隊基地などの特定重要施設に係る区域などを「特別注視区域」として指定することとされております。これら区域の指定につきまして、国では、個々の重要施設の周辺や離島ごとに、法律の要件や、今後策定される基本方針の内容に照らして評価し、土地利用審議会の意見を聞いた上で、必要最小限の原則を踏まえ、個別に判断することとしておりまして、現時点で、道として、道内の指定区域やその数を見込むことは難しく、今後の国の動向を注視していく必要があるものと考えております。また、これらの区域における土地の利用や取得などに関し、国が行う調査内容につきましては明らかではありませんが、道や市町村が保有する情報について、国から提供を求められることがあるものと考えております。

 

(浅野)

(四)今後の取組について

 3月の総務委員会では、土地水資源については、平成24年に道が全国に先駆けて保全条例を作り、道庁内に担当部署を設置して、総合政策部の中に政策局土地水対策課が適切な保全を現在も進めてきていることを指摘しました。ただいまの答弁でありましたように、今後、国が行う調査に関連して、道や市町村の保有する情報の提供を求められることがあり得ることも踏まえ当然道としても、具体的な事務に関わることも想定されます。そのことを踏まえて、重要土地法案の成立を見据えて、道庁内に担当部局を新たに設置することや条例制定も含めた今後の対応について、現時点から様々なことを想定していくべきだと、質問しました。3月の委員会では、それに対して、今後明らかとなる国、道、市町村それぞれが担うべき役割など、そうしたものを道としても、本道の実情に適ったものとなるか否か引き続き国の動向を注視し、情報収集に努めながら、想像力を働かせながら、庁内関係部局と時機を逸することなく適宜適切に協議して対応してまいる旨の答弁がなされていたところであります。

 この法案が成立すれば、適用されるのは来年の4月以降と言われております。道庁の体制を整えるにしても、決して十分な時間があるとは言えないと考えます。現在の喫緊の課題は、なんと言っても新型コロナウイルス感染症対策でありますが、道民の生命と財産に関わる安全保障の問題については、感染症がまん延している時もそうでない時も、休みなく進めなくてはならないものであり、適宜適切に時機を逸することなく態勢を整えていかなくてはいけない課題であると考えます。法案成立に向けて最終ステージに入った今、成立を見据えて、道は今後の本道の重要土地の適切な保全に向けて、どのように取り組んでいくのか、最後に伺います。

 

(危機管理監)

 今後の取組についてでありますが、道民の安全・安心な暮らしを確保する観点から、防衛関係施設等周辺の土地利用に関するリスクを未然に防ぐための法整備は必要であり、道としても、法案審議の状況を注視しているところでございます。法案成立後、施行に向けて、今後、国において、基本方針や政令の策定などが進められ、規制対象となる区域や規制の内容、道や市町村の役割などが、具体化されるものと考えられるほか、報道によりますと、内閣府に、関係各省の協力のもと、防衛関係施設等の土地に関する情報を一元的に管理する新たな組織が設けられ、地方出先機関も活用した調査実施体制も整備されることと承知しております。このため、今後とも、道といたしましては、国の動向を注視し、情報収集を積極的に行い、法の施行に適切に対応できるよう、庁内関係部局の連携を図りながら、必要な準備を進めてまいる考えでございます。

 

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