医療連携ネットワークシステムの整備とメディカルウイングについて
患者のカルテ等を電子化してネットワークシステムで繋げ、医療機関同士が情報交換できるものとして医療連携ネットワークシステムがあります。全道における整備状況と、医療資源の限られている留萌管内等の地域における整備の意義、整備に向けた取り組みについて質問しました。またメディカルウイングについては、利尻島、礼文島、奥尻島と違い、空港を持たない天売島、焼尻島にとってどのような意義があるのか等について質問しました。
成29年第1回北海道議会定例会 保健福祉委員会(最終日前日)開催状況
開催年月日 平成29年3月22日(水)
質問者 浅野貴博 委員
答弁者 村木一行
粟井是臣
地域医療構想担当局長 大竹雄二
竹内德男
竹澤孝夫
本道における医療連携ネットワークシステムのあり方等について
他の都府県と比較して、広域分散化が著しい本道においては、全体の医療資源においても限りがあります。医療資源を全体のパイを増やすことと同時に偏りを平準化していく取り組みを進めながらも、偏在を前提としつつ、道内各地、特にへき地における医療を確保する工夫を凝らしていく必要があると考えます。
以上を踏まえ、以下質問させていただきます。
1.質問:本道医療機関の医療連携ネットワークシステム構築の状況について
患者のカルテ等を電子化して複数の医療機関で共有をし、急病時に迅速な対応をとること等を可能とする医療連携ネットワークシステムの取組は道内各地で行われていると承知をします。このシステムの本道各地における整備状況は現時点までどのようになっているか、更には同システムが本道医療に対してどのような意義を持つのか改めて道の認識をお伺いします。
答弁:地域医療構想担当局長
ICTを活用した医療機関のネットワーク構築についてでございますが、広域分散型で医療資源が偏在する本道におきましては、地域医療の確保に向け、ICTを活用して患者情報の共有化を進めるなど、限られた医療資源を効果的に利用していくことが重要であり、道では、これまで、地域医療介護基金などを活用して、医療機関相互のネットワークの構築を支援してきているところでございます。
こうした取組などを通じ、現在まで、600以上の医療機関等が参加をし、二次医療圏ばかりでなく三次医療圏を範囲とするものも含めまして、20か所を超すネットワークが構築され、診療情報を共有することによる正確な診断や患者・家族の負担軽減などの効果があったものと考えております。
2.質問:道立羽幌病院等の取組について
オーダリングシステムの運用状況について
2年前の2015年6月15日の保健福祉委員会で、「道立羽幌病院を含む留萌管内の各医療機関とで医療ネットワーク連携システムを構築すべきではないか、また、既に構築されている旭川市・上川管内の『たいせつ安心i医療ネット』に参画をするなどして、留萌管内の医療体制の更なる整備に努めるべきでないか」と質問させていただきました。
これに対して、2015年度より検査や処置に関する情報を電子化するオーダリングシステムを羽幌病院において導入する、医療連携ネットワークシステムについては、費用対効果を勘案しながらその必要性を検討する旨の答弁をいただきました。
その後、2016年2月にオーダリングシステムが実際に羽幌病院において導入されていると承知をしますが、現時点に至るまで、オーダリングシステムの導入によって具体的にどのような成果が得られたのか、その運用状況について説明を願います。
答弁:道立病院室 竹澤参事
羽幌病院におきますオーダリングシステムの運用状況についてでございますが、羽幌病院では、昨年4月からオーダリングシステムの運用を開始したところでございまして、このシステムにより、医師が看護師や薬剤師など医療技術者に対して行う指示内容が検査や薬局等関係部門へ迅速に伝達できますことから、患者の方々の待ち時間の短縮、重複検査や重複投薬の防止、職員の伝票搬送業務の省力化、診療報酬請求事務の効率化など患者の方々はもちろん、病院職員にとっても利便性が高まったものと考えております。
3.質問:医療連携ネットワークシステム参画に対する認識について
その上で伺いますが、オーダリングシステムを導入していただいて1年以上が経過いたしましたが、羽幌病院の旭川市・上川管内の「たいせつ安心i医療ネット」、この医療連携ネットワークシステムへの参画について、現時点で道はどのような認識を有しているのか伺います。
答弁:道立病院室 竹澤参事
羽幌病院の医療連携ネットワークへの参画についてでございますが、現在、羽幌病院では、平成21年度に旭川医科大学が実施をいたしました遠隔医療モデル事業を活用して、画像診断や遠隔医療相談が可能なシステムを整備いたしますとともに、旭川市内の医療機関を中心に運用されております「たいせつ安心i医療ネット」に情報参照施設として参画しております。
新たな病院事業改革推進プラン原案におきますネットワーク化に関しまして、羽幌病院につきましては、高度急性期患者の搬送対応のほか、他圏域の医療連携ネットワークを活用した情報の共有など、高度医療機関との連携強化を図ることとしております。
今後、他圏域の高度医療機関との連携につきましは、病院現場の医師の意向なども踏まえながら、医療連携ネットワークへの参画や救急患者に対する高度医療機関からの診療支援など具体的な方策について、更に検討を進めてまいる考えであります。
指摘:
羽幌病院の医療連携ネットワークシステムへの参画について重要だと思うのは、私の地元留萌管内羽幌町は、天売島・焼尻等という医療資源の限られている離島を抱えている地域だということがあります。
4.質問:天売島及び焼尻島での救急患者発生時の対応などについて
天売島及び焼尻島については、道立診療所を設置し島民の医療を確保していただいていますが、この2島における救急患者発生時の体制について伺ってまいります。今月11日、焼尻島で急病患者が発生した際、患者のレントゲンを焼尻島に赴任している医師がCDに焼き付け、それを持たせたという事例があると伺っております。現在、天売島には常勤の医師がおらず、急病患者が出た際に医師不在の中で看護師等が対応しなくてはならない状況にあります。今のところ「大雪安心i医療ネット」は情報参照施設として参画しているとのことですが、それは天売島、焼尻島の患者さんの電子カルテを旭川側の医療機関が直ぐに見られる状況ではない、逆に旭川側から羽幌側に情報提供できるのみという、双方向のシステムとはなっていないと伺っております。常勤の医師もいない、非常に医療資源の限られている離島等において、いざ急病患者が出た際にはこのような「大雪安心i医療ネット」のシステムに参画した上で、お互いの患者情報のやり取りのできるような対応をすることが必要だと考えますが、この点について道の認識を伺います。
答弁:地域医療構想担当局長
天売島及び焼尻島での救急患者発生時の対応などについてでありますが、道ではこれまで離島における救急医療に備えまして、市町村消防からの要請を受けて、ドクターヘリや道の消防防災ヘリによる島外の医療機関への救急搬送体制を整備するとともに、ドクターヘリなどが悪天候や、他事案への出動中などの理由により対応できない場合は、道警や自衛隊などに航空機の出動を要請し、重篤な患者の迅速な救急搬送に努めてきているところでございます。
医療情報を共有できるネットワークシステムに参画することにつきましては、離島において適切な医療を提供していくうえで有益な面もございますけれども、費用面などの課題がありますことから、現状においては、常勤医師の確保や計画的な医療機器の整備を行うことなどにより、道立診療所における医療提供体制の確保に努めてまいる考えでございます。
メディカルウイングの活用について
メディカルウイング運航の実現について
5.質問:メディカルウイングの意義について
平成23年度より道が研究を進めて来たメディカルウイングに関して、来年度予算案で79,861千円が計上され、来年度中の運航実現が見込まれていると承知をいたします。メディカルウイングが本道の医療にとってどのような意義があるのか、改めて伺います。
答弁:地域医療推進局長
メディカルウイングの意義についてでございますが、広域分散で医療資源の偏在が著しい本道において、どこに住んでいても必要な医療を受けることができる体制を確保する上で、メディカルウイングは、重度の心疾患など高度専門医療を必要とする患者を、医師が継続した医学的管理を行いながら、短時間で専門の医療機関へ搬送する手段として極めて有効であり、道といたしましては本道の医療提供体制の確保に大きな意義があるものと考えております。
6.質問:運航開始に向けた取組について
非常に本道の医療に意義があるメディカルウイングの研究運航を平成23年度から地道に積み重ねてきていただいたことには感謝を申し上げたいと思います。研究運航の段階では、丘珠空港や新千歳空港を基地空港としていたと承知しますが、空港を持たない天売、焼尻などの離島へのアクセスや、様々な機関の航空機が札幌圏に集中していることを勘案すれば、メディカルウイングの基地空港を、ほぼ北海道の真ん中にある旭川空港とすることも選択肢ではないかと、重要ではないか考えるところであります。
今後、道は運航体制の整備に向けて、どのような取り組みを行うのか、また来年度のいつごろからの運航開始を目指しているのか伺います。
答弁:地域医療推進局長
メディカルウイングの運航に向けた取組についてでございますが、道におきましては、新年度、国が新設した事業を活用し、メディカルウイングを全国に先駆けて導入するために必要な予算を本定例会に提案しております。
運航開始に向けては、運航事業者の選定、運航調整委員会などの事業運営組織の設置、空港までの搬送方法や拠点空港の選定など、運航体制の整備が必要でありますことから、予算成立後、速やかに、北海道航空医療ネットワーク研究会などの関係団体と連携しながら、運航体制の構築に向けて具体的な検討を進め、一日も早い運航を目指す考えでございます。
7.質問:既存の搬送手段との役割分担について
現在道では、ドクターヘリや防災ヘリ、道警ヘリ等による急病患者等への対応が図られていると承知をしますが、こうした既存の患者搬送手段とメディカルウイングはどのようなすみわけがなされるのか改めて伺います。
答弁:地域医療課医療参事
患者を搬送する航空機の役割分担についてでございますが、ドクターヘリや防災ヘリなどは、重度の熱傷や脳出血性疾患など、重症重篤な救急患者等を搬送するものです。
一方、メディカルウイングは、緊急を要しないが、高度専門医療及び搬送時における医師の継続的な医学的管理を必要とする患者を対象として、あらかじめ、医療機関や消防機関、航空事業者などの関係機関が出動時間や搭乗医師、搭載機器等の調整を行った上で計画的な搬送を担うこととしております。
研究運航を踏まえた今後の取り組みについて
8.質問:積雪時の運航に係る課題解決について
研究運航中に計134件の要請がなされて、実際に出動したのは85件、キャンセルは11件、未出動は38件であったと資料でうかがいましたが、未出動となったもののうち、大半は冬の積雪時に滑走路が使えなくなったことが原因だったと。正に本道特有の天候不良が原因になったと承知をしております。本格運航に向けて、この課題解決に向けて、どのような取り組みを行うのか伺います。
答弁:地域医療課医療参事
積雪時の運航についてでございますが、道が参画する北海道航空医療ネットワーク研究会が平成23年度から平成25年度に行った研究運航において、搬送要請に対して出動できなかった49件のケースのうち6割の29件は、積雪期における滑走路の凍結や天候不良が原因であり、冬期間、出動率が低くなることが課題でありました。
このため、研究会において、積雪期の訓練で得られた離着陸時の種々のデータについて、検証を行い、関係省庁と協議を重ね、平成27年5月から凍結滑走路での離着陸条件が緩和されたところでありまして、今後のメディカルウイングの運航につきましては、冬期間の出動率の向上が見込まれておりますけれども、道といたしましては、冬期間の出動率の一層の改善に向けて航空事業者への働きかけや空港管理者への除雪強化に係る要請などについて検討していく考えでございます。
9.質問:空港を持たない離島に果たす役割について
最後に伺います。研究運航では、利尻島・奥尻島などの離島への運航にあたっては、研究運航チームの医師が搭乗したことで、それら地域の医師不在の回避につながったこと等、地域の医療資源の確保に大きく貢献したとされていると伺っております。本道が抱える5つの離島のうち、利尻島、礼文島、奥尻島の空港を持つ離島においてはメディカルウイングが直接その場に発着することも可能と考えられますが、天売、焼尻などの空港を持たない離島に対しては、メディカルウイングが本格運航されたとして、どのように役割を果たすことができるのか明確ではないという声も聞かれるところであります。この点に関する道の認識を伺います。
答弁:保健福祉部長
メディカルウイングの役割についてでありますが、道が運航を計画しておりますメディカルウイングは、地域センター病院など、地域の中核的医療機関に入院されている重症の患者に対して、より高度な専門医療を提供するため、計画搬送という方法により医師による継続した医学的管理のもとで、長距離を短時間で都市部の高度専門医療機関へ航空搬送するものであります。
空港が整備されていない離島などに住む方々が重症の疾患に罹患した場合、必要に応じてヘリ等により地域の中核的医療機関に搬送され、入院中に、より高度な専門医療が必要とされた場合は、メディカルウイングを活用して道外を含めた高度専門医療機関へ搬送することから、メディカルウイング導入により、離島を含む全ての道民の方々が等しく高度専門医療を受ける機会が拡大されるものと考えており、提案しております予算案が議決していただけましたら、早期に運航が出来るよう進めてまいる考えでございます。
指摘:
村木部長ご答弁ありがとうございました。離島を含む全ての道民の方々が等しく高度医療を受ける機会が拡大されるんだと、離島を抱える地域の者としても、離島に住む皆様にとっても、とても希望の持てるご答弁いただきました。
一日も早い運航実現に向けて私たち道議会も協力しなければならないと思いますし、非常に厳しい地域に住む方々にとって大きな希望となるような運航体制の実現に向けて取り組んでいただきたい、村木部長の想いをしっかりと後任の方にも引き継いでいただきたい、そのことを申し上げて質問を終わります。