平成30年12月6日 第四回定例会予算特別委員会(水産林務部)

一 木造船の漂着について (浅野)北朝鮮籍と見られる木造船漂着の事案に対する道の取り組みなどについて伺って参ります。 本年10月以降、この事案が急激に増えていることを、これまで多くの委員の方々がすでに一般質問などでも取り上げているところでありますが、私からも質問させていただきます。

(一)現状への認識について

(浅野)何故、10月に入ってこのような事案が急激に増えているのか。その背景に何があるのか道の認識を伺います。 (矢本漁業管理課長)漂流船増加の要因などについてでありますが、水産庁によりますと、本年は、5月中旬から日本海中央部の大和堆周辺において北朝鮮の漁船が確認され、7月下旬以降、北方に操業海域を拡大し、10月17日には、多数の漁船が津軽海峡西方の我が国「排他的経済水域」に侵入したため、放水等により、我が国水域からの追い出しを行ったとのことであります。 また、海上保安庁によりますと北朝鮮籍とみられます木造船の漂流、漂着の増加は、9月から10月に日本海を通過しました台風により、我が国周辺で操業していた多くの木造船が遭難したとのことであり、それらが潮流に乗って、10月以降、本道の日本海側に集中して漂着しているものと考えております。 (浅野)答弁いただいたように、9月10月の台風によって、それがタイムラグを持って11月まで集中といった分析は納得できるものであり、12月に入ってから、事案が出てこないということは、一段落付いたものと思われます。しかし私の住んでいる留萌市は 、夕日の街でありまして、黄金岬という観光スポットがありますが、そこに木造船があるだけで、不安と言うことに加え、景観を損ねるといった負の影響が出ております。

(二)処理に向けた取組について

(浅野)漂着船の処理は一義的に流れ着いた市町村が行うこととなっておりますけれども、大変な財政負担が不安視されております。 それに対しては、国や道からの直接的な補助に加えて、特別交付税措置がなされ、市町村負担はない形での処理が見込まれていると思いますが、この点について水産林務部として把握していることを教えていただきたいと思います。 (黒澤総務課長)漂着船の処理についてでありますが、漂着船の引き上げや処分は、市町村が国の補助事業を活用して行うことが可能であり、特に、朝鮮半島からの漂着船につきましては、特別交付税措置と合わせて、実質的な財政負担はないものと把握をしております。 当該事務については、現在、関係部におきまして、市町村の申し出に応じ、手続きを進めていると聞いており、当部といたしましては、漂着船の引き上げや処分までの過程におきまして、漁港施設を使用する可能性もありますことから、市町村が一時保管等を行う場合の漁港の使用料につきまして、免除することとしております。 (浅野)道としても漁港の使用料の免除という対応をしていただいているとのことですが、今日の道新にも積丹町の事例についての記事が出ておりまた。重油入りの容器が壊れて周辺の海岸を汚す可能性があるとして、町が重油の回収作業を行っていると。 船の処理だけではなく、船の中のいろんな備品の処理などさまざまな費用がこれからも出ることが懸念されますので、しっかりと状況把握し、対応していただきたいと申し上げます。

(三)漁業者の安全確保について

(浅野)漁に出る漁業者がいつ何時、漂流船にぶつかってしまうかと、それがレーダーに映らないことに対する不安が一番強いと言われています。 このことについては、例えば、レーダーに反射する反射板を漂流している船に、漁港に曳航できた船はまだ良いとしても曳航できず漂流したままの船に対しては、そういう対応をして欲しいと。 反射板を付けるなどをしてくれたら少しは安心できると声を聞いたことがございますが、このことについての道の認識と対応を伺います。 (黒澤総務課長)漁業者の安全確保についてでありますが、漂流船の回収に当たりましては、第一管区海上保安本部におきまして、沿岸に接近する漂流船を優先して回収し、近隣の港まで曳航した上で、市町村が手配した船舶等へ引き渡すこととしております。 また、海上保安本部におきましては、気象条件等により速やかな曳航が困難な場合には、海の安全情報としてメール配信するほか、航行警報等により情報を提供し、注意喚起を実施するとともに、可能な限り、発光する簡易標識灯を漂流船に設置し、夜間の視認性を確保しております。 道といたしましては、レーダーに反応する反射板につきましては、設置が難しいといった課題があると聞いておりますが、夜間の視認性を確保する対策の一つとして考えられますことから、引き続き、漁業者の安全確保を期すための方策について、船舶の安全航行を所管している海上保安本部と協議を進めてまいります。 (浅野)レーダーに反応する反射板の設置、難しいけれども対応の一つということで、検討していただけるということですから、しっかりと引き続き安全確保を考えていただきたいと思います。

(四)地域の安全確保について

(浅野)昨年11月、松前町で発生した事案と同じようなことが起こるのではないかというのが大きな不安だと思います。 船に乗っている人が上陸してきて、備品を盗む、それに加えてもしかしたらその中に武装組織の人間が加わっているかもしれない。様々な不安があるわけであります。 この漂着事案は一段落した雰囲気もありますけれども、引き続きこれからも漁業者並びに地域の安全確保のために、道としても警戒を緩めることなく、先般、私も地元の留萌海上保安部の方々に対応状況などについてご説明を頂いたのですが、海上保安庁、水産庁などと連携をして未然防止をはじめ今後の対応をしっかり強化していただきたいと思いますが、この点に関して道はどのように認識し、政府の関係機関とどのように連携して取り組んで行くのか伺って参ります。 (浦島水産林務部次長)地域の安全確保についてでございますが、本道周辺海域で漂流します木造船や我が国、排他的経済水域内における違法操業船の急増は、漂着船を装った外国人の不法上陸が懸念されますほか、漁業者から航行の安全確保や操業の支障などの不安の声が寄せられておりますことから、国による監視・取締をさらに強化し、違法操業船の進入を未然に防止するなどの対応が効果的と認識をしております。 このため、道といたしましては、これまでも、全国知事会による要望など、機会あるごとに漂着船に対する万全な対策について国に要望してきたところでございまして、先月下旬の国への要望におきましても、不審船の監視、警備体制の強化のほか、領海侵犯や違法操業など、あらゆる行為について、毅然とした外交交渉を推進し、拿捕を含む実効的な対抗措置を講じることなどについて国に対し要望したところでございます。 (浅野)漂着船を装った外国人の不法上陸についての懸念も示していただきましたが、この問題につて我々が恐れるべきは、「狼少年」のお話の様に、慣れてしまうことと思います。 今後もいつこういうことが起こるかも分からない、我々が慣れた頃に武装集団などがやってくることも考え得る、そのことを頭に入れた上で、引き続き道としても政府との協議の上、市町村とも協議の上で、万全の対応を強いていただきたいと思います。

二 クロマグロ漁について

(浅野)第二定例会でも伺いましたが、第3管理期間の小型魚の漁獲状況が本道に割り当てられた上限111.8トンを大幅に超える769.5トンとなったこと等を受けて、今の第4管理期間は勿論ですが、向こう6年間、本道においては、小形魚の漁獲が出来ない見込みとなっております。 これについては、私の地元の留萌管内は配分枠をしっかり守ったものの、他地域の方々がやむを得ない事情があったのはわかるんですけども、大幅に超過してしまっています。守った地域と超過した地域が一律禁漁という扱いを受けていることに対して、非常に地元からこれからどうしたら良いのだろうかと言う不安と憤りの声が寄せられております。

(一)道への提訴について

(浅野)そのことを受けて、私の地元の漁業者の方々を始め9名の方が国や道に対して、是正を求める訴訟を起こしていると承知しております。このことに対して道の認識と対応をまず伺います。 (矢本漁業管理課長)提訴に対する認識等についてでございますが、今般、留萌管内の漁業者9名が、平成29年7月から1年間の第3管理期間に配分されました小型クロマグロの漁獲枠を遵守するため、漁期中に操業を切り上げ、漁獲を自粛したにも関わらず、北海道全体として漁獲枠を超過したことから30年7月から31年3月までの第4管理期間の漁獲枠が実質ゼロとなり、更に、今後6年間漁獲できなくなるとして、国と道に対し損害賠償を求め、提訴したものと認識しております。 なお、道に対しましては、10月29日に札幌地方裁判所を通じ、訴状が届いたところであり、今後、内容を精査した上で、適切に対応してまいる考えでございます。 (浅野)訴訟に関してはこれから裁判の中で対応されていくと思いますけども、なぜ訴訟に至ったのか、幡宮部長をはじめ水産林務部担当者の皆様、重く受け止めていただきたいと思います。 決して誰かが憎いという恨み辛み憎しみではなくて、どうやって我々これから生活していけばいいのだろう、まじめに浜を守って来た我々がなぜこのような扱いを受けなければならないんだろう、今後どうやって地域を守っていけばいいのか、そうした同じ事を二度と繰り返してはいけない、その思いからこのような行動を取らざるを得なかった苦渋の選択であると言うことをしっかり受け止めていただき、対応して頂きたいと申し上げます。

(二)都道府県相互の漁獲枠のやりとりについて

(浅野)小型魚の配分に関しては、先月あたまに新聞記事等に出ておりましたけれども、都道府県相互で漁獲枠の融通をする仕組みを国が考えていると言う報道がありましたが、この仕組みに対する道の認識を伺います。 (遠藤水産局長)漁獲枠の融通に対する認識についてでありますが、クロマグロは、小型魚と大型魚の来遊が年によって変動いたしますことから、それぞれの資源を個別に管理することが非常に難しく、漁業者の負担も大きくなっているところでございます。 このため、国では、水産政策審議会資源管理分科会に新たに「クロマグロ部会」を設置し、来遊状況に応じて、都道府県間やまき網や定置網、釣りなどの漁業種類間で、小型魚と大型魚の漁獲枠の融通に関する具体的な仕組みを検討しているところでございます。 道としては、この仕組みが導入された場合、本道の大型魚と他県の小型魚の漁獲枠の融通により道内において小型魚の利用が可能となると認識いたしております。 (浅野)向こう6年間、小形魚が獲れないという見込みがありますけども、それが是正される可能性が今出てきたということで、しっかりと本道の実情を踏まえて国にも意見を言っていただきたいと思います。

(三)今後の見通しについて

(浅野)この件に関して最後に伺います。ルールに従った者が一方的に禁漁を通達されて生活の糧を奪われるこのような状況があり、守った者と守らなかった人達と同じ扱いを受けることは、やはり公正公平の観点から非常に問題があると思います。道としてはこの点に対して今後どのように対応していくのか具体的に伺います。 (遠藤水産局長)今後の対応についてでありますが、クロマグロの小型魚の利用につきましては、第3管理期間に配分枠を残して操業自粛を余儀なくされた漁業者がおりますことや、今期の第4管理期間では、本道への漁獲枠の配分がないことから大型魚を対象とする漁業以外はマグロ漁を休漁せざるを得ないなどの影響が出ているものと認識いたしております。 このため、道としては、今期から開始された都道府県管理の大型魚にきまして、操業を自粛して小型魚の枠を残した地域に配慮し、大型魚の配分を行ったほか、関係漁業者の意見を十分にお聞きしながら、小型魚と大型魚の漁獲枠の融通も視野に入れ、操業自粛に至った経緯なども勘案し、適切な配分に努めてまいる考えでございます。 (浅野)是非とも、地域の現場の方々に寄り添った丁寧な対応をして頂きたいと思います。 本庁からも私の地元焼尻の方にも足を運んで頂いたことは承知しております。そこでいろんなお話をしていただいたことも承知しております。しかし、その対応が果たして丁寧で地元の人に寄り添ったものであったのかどうか、今一度振り返って頂きたいと思います。

三 漁業法の改正について

(浅野)次に漁業法等の改正について伺ってまいります。この問題も多くに議員の方々が既に質問しておりますが、私からも改めて伺って参りたいと思います。

(一)改正内容並びにこれまでの経緯に対する道の認識について

1.改正法の趣旨並びに内容について

(浅野)この漁業法の改正というのは、漁業に従事者する方々が高齢化している、従事者数も減少している、漁業資源も少なくなっている、こうした本道漁業が抱えている厳しい状況を是正していくため、水産業、漁業を成長産業としていくための改革だとの趣旨は理解しているところでありますが、そもそも本道漁業の現状がこのようになっている背景には、何があるのか、今回の漁業法改正並びに水産政策の改革というものは、そうした本道の事情を正確に反映しているものなのか、本道漁業のこれからの問題の解決に資するものとなり得るのかどうか、まずは道の認識を伺います。 (遠藤水産局長)水産政策の改革に対する認識についてでありますが、国は、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就業構造の確立を目標とした水産政策の改革を実現するため、今回、関連法の改正を進めているところでございます。 これは、漁獲量の低迷や漁業就業者の減少、高齢化など全国的に水産業が抱える課題の解決に向け、我が国周辺海域におけます諸外国と協調した資源管理の高度化や、効率的で生産性の高い漁業の実現が必要という考えが、背景にあるものと承知いたしております。 本道におきましても、同様の課題を抱えておりますことから、道といたしましては、改革の方向性に沿って、漁業者の十分な理解のもとで、各種の施策に取り組むことにより、漁村地域の発展に資するものと受け止めております。

2.これまでのプロセスについて

(浅野)今、漁業者の十分な理解のもとで、と答弁がありましたけれど、これまでのプロセスについて伺います。 改正内容の周知や説明について、都道府県はもとより漁協、漁業者への国からの説明は十分であったと言えるのでしょうか。道として十分でなかったと考えているのならば、国にどのような意見をこれまで伝えてきているのか、そうしたことに対して、漁業関係者や現場の方々からは、改正の内容だけではなく、提示される以前の手続きなど、そのプロセスにきわめて問題があったと考えている方が多い。そういう声を私も多く聞いております。改正法に関して漁業者に直接説明する場は、これまで本道においていつ、誰が主催する形で、どこで開催されてきたのか、それに対して道はどのような関与をしてきたのか伺います。 (矢本漁業管理課長)漁業者に対する説明などについてでありますが、本年6月以降、全国各地において、水産庁や漁業団体が主催する水産改革の考え方や漁業法改正案の概要に関する説明会が漁業者や漁協関係者などを対象に開催されております。 道内におきましては、札幌市で水産庁の主催により6月25日に、漁業団体の主催により7月26日と10月11日の計3回開催されたほか、各地区の漁協代表者への説明も行われております。 道といたしましては、これらの説明会にあたり、事前に漁業団体と改正案に対する問題点などに関して、意見交換を行うとともに、オブザーバーとして参加し、漁業者の意見などの把握や必要な助言などを行ってきたところであります。 (浅野)開催されてきたと言っても、不十分だと思います。そもそも、改正案が成立してから丁寧な説明をしますと水産庁の長官などは国会答弁で仰っていますが、法律を決めるまでに事前に丁寧な説明を先にする、順序が逆だったのではないかと私は感じております。

(二)漁業権の付与について

1. 本道における漁場の活用状況について

(浅野)次に漁業権の付与について伺ってまいりますが、法改正の中で一番クローズアップされているのが、漁協に対して優先的に付与されてきた漁業権、この仕組みが変えられることであると思います。 既存の漁業権者が漁場を適切かつ有効に活用している場合はその者に免許されると。既存の漁業権がない漁場については、地域水産業の発展に最も寄与する者に免許されると。そういうような改正内容となっていると承知しますが、そもそも、本道において、既存の漁業権者によって適切に管理されてないと道が認識をする、認識している漁場はあるのか、あるならどれくらいあるのか、現時点での道の認識を伺います。 (矢本漁業管理課長)漁場の活用状況についてでありますが、本道においては、ウニ、ナマコのほかホッケなどの前浜資源を対象とする沿岸漁業の共同漁業権並びにホタテやコンブ、カキなどの養殖業を対象とする区画漁業権は、全て漁業協同組合に免許され、また、サケなどを対象とする定置漁業権については、漁業者の法人や漁協などに免許されております。 漁業権の免許は、現行の漁業法に基づき、5年から10年ごとに免許の切替が行われ、道では、漁業権行使の状況や今後の営漁計画をもとに、関係漁協や漁業者と協議のうえ、改めて、それぞれの漁場の利用計画などを検討し、必要な見直しを行ったうえで免許の切替を行っており、道内における漁業権漁場は、適切に管理されているものと認識しております。

2. 法改正後の対応について

(浅野)本道における漁業権漁場は適切に管理されているとのことでありますが、仮に今後、管理されていないといった漁場ができた場合、そして改正法が成立した際に、そのような場所はどのような扱いを受けるのか、更には本道の沿岸漁業と養殖業にどれだけの新規参入があると道として見込んでいるのか伺います。 (矢本漁業管理課長)養殖業などへの新規参入についてでありますが、改正案では、免許を取得した漁業権者に対し、漁場の活用状況などに関して、都道府県知事への報告を義務付けし、報告を受けた知事は、免許取得者が他の漁業者の生産活動に支障を与えたり、海洋環境を悪化させたとき、また、合理的な理由がなく漁場を利用していない場合などは、必要な措置を講ずるよう指導・勧告を行い、さらに、これに従わない場合は、免許の取り消しを命ずることが可能となってございます。 なお、道内においては、免許を受ける漁協が主体となり漁場の利用調整を行い、適切かつ有効に漁場が活用されておりますことから、現時点においては、新たに可能となる養殖業への企業単独での新規参入は見込んでいないところでございます。

3. 漁協への優先配分について

(浅野)今の答弁であるように、漁協を通じて本道の漁場が適切かつ有効に活用されているとのことでしたが、いろんな新聞誌によってはですね、漁協に対して漁業権が優先的に配分されてきたことが、今日の日本の水産業の衰退の一因となっていると書いているところもあります。本道と他府県との違いというものが、農協改革などでも言われたように、北海道と他が違うということをしっかりとこれからも我々も訴えていかなければいけないと思うんですが、地元漁協が漁業権の付与最優先と規定されていること、この弊害を指摘する声に対して、道はどのように認識をしているのか、道としては従来の漁業法の中でこのような規定がなされてきたことをどのように評価しているのか伺います。 (矢本漁業管理課長)漁業権免許の優先順位についてでございますが、現行の漁業法においては、区画漁業権のうち、資本の規模や技術的な面から比較的参入が容易で、狭い漁場において多数の漁業者が営んでいるコンブやホタテガイ養殖業などについては、漁業者間における漁場の利用調整が重要なことから、特定区画漁業権として漁協が優先される制度となっております。 道内においては、限られた漁場を多種多様な漁業が輻輳して利用しているため、従来から漁協を中心として、養殖業に加え、他種漁業も含めた漁場の利用調整が行われ、円滑な操業が確保されておりますことから、現行法の規定が有効に機能してきたものと考えております。

4. 「適切かつ有効」の定義について

(浅野)次に伺いますが、そもそも漁場を適切かつ有効に活用していると道が判断する基準、今後どのように決定されるのかが、非常に気になるところであります。水産庁としては都道府県に対して一定の基準を今後示すとのことでありますが、それが本道と他の都府県が一律のものであった場合、本道漁業の状況が正確に反映されなかった場合、道としてどのように対応するのか、現時点での認識を伺います。 (矢本漁業管理課長)運用に関する判断基準についてでございますが、国は、漁場を適切かつ有効に活用していることの具体的な判断基準は、今後、漁業者や漁業団体などの意見を聞いたうえで、政省令などで規定するとしております。 このため、道といたしましては、漁業団体と連携しながら、本道漁業の実情が反映されるよう、引き続き、国に働きかけるとともに、今後、示される具体的な基準をもとに、これまで漁協を中心として、資源管理や海面の利用調整を円滑に実施してきました本道漁業の実態を踏まえ、適切に判断していくことが重要と考えております。 (浅野)本道漁業の実情が反映されるようにという答弁をいただきましたので、しっかりとその対応をお願いしたいと思います。全国一律でも困りますし、この広い北海道の全道一律という基準でも難しい状況でるかもしれませんので、日本海、オホーツク海、太平洋と複数の海に囲まれている北海道において、それぞれの地域で適切かつ有効な、そういう判断基準が作られるようにしっかり国と協議をしていただきたいと思います。 5. 未利用の海面の有効活用について (浅野)改正法の中では、利用されていない海面の有効活用についても謳っております。現時点で利用されていない海面について、一見未利用海面と見なされたとしても例えば、実際は地元の漁業者が長年の人間関係の中で根付資源の繁殖用に禁漁区として設定して守ってきたもの、そういう実情もあると思います。 こうした地域特有の実情を踏まえない形で法改正がなされた後に、こうした未利用の海面がどのような扱いを受けるのか地元の現場の漁業者が不安であると考えます。 本道において、未利用の海面がどれくらいあるのか。それぞれの未利用の背景について、道はどの程度把握しているのか。法改正後、そのような背景を踏まえた対応を取ってくれるのか伺います。 (矢本漁業管理課長)海面の有効活用についてでございますが、道内の漁業権漁場におきましては、資源保護を目的とした禁漁区の設定や航路確保のために、海面の一部利用を制限している事例はございますが、これらは、資源管理や円滑な操業に資するために、合理的な理由に基づき行われておりますことから、道といたしましては、漁場は適切かつ有効に活用されていると考えております。 このため、今後におきましても、漁場の利用形態は、現行と大きな変更はないものと想定されますが、引き続き、本道の漁業実態を踏まえ、海面の有効活用が図られますよう、対応してまいる考えでございます。

6. 道の審査について

(浅野)漁場の適切かつ有効な活用に関する審査並びに判断は、道の水産林務部の方が担当すると思いますが、どなたが判断されるのか。水産行政並びに各地の漁場の実情等に精通した職員の方に判断していたがけるのか。 そうした人員を今後しっかり、確保していけるのか、本庁と各振興局の役割分担はどのようになるのか、現時点での認識を伺う。 (矢本漁業管理課長)漁業権の審査についてでございますが、漁業権の切替については、各振興局並びに地区の漁業に精通した漁業者などで組織されました海区漁業調整委員会と連携をし、漁場の利用実態や漁協の意向などを把握し、各種の調整を行ったうえで、当部におきまして免許を行っているところでございます。 改正案では、知事は、免許した漁業権者から、漁場の活用状況などに関する報告を求め、海区委員会の意見を聞いたうえで、審査し判断することとなります。 このため、法改正後においても、引き続き、関係振興局や海区委員会と連携をし、今後、国が示す具体的な基準をもとに、適切に判断をしていくということが重要と考えております。

7. 漁業権行使規則について

(浅野)現在の漁業権には「漁業権行使規則」があり、どの魚種をどの時期にどれだけ漁獲するか、またどれだけの漁具を何隻の船が使用できるか等の取り決めがなされ、それぞれ管理されていると承知いたしますが、漁業権の漁協への優先付与が撤廃され、企業等による新規参入がなされた時、新規参入者に対して行使規則は適用されず、これまでの漁業秩序、浜の秩序が乱れて魚価の乱高下や漁業資源の更なる減少等が起こることへの懸念の声を聞いたことがあります。  道として現時点でこの点に対してどのような認識をしているのか、どのような対応をしていくのか伺います。 (遠藤水産局長)新規参入についてでありますが、本道におきましては、これまで、特定区画漁業権として漁協が免許を受け、これに基づき漁業者はコンブやホタテガイなどの養殖業を営んでおり、今後とも、地区の漁業者の総意のもとで漁協が区画漁業権を取得することが見込まれているところでございます。 この場合は、漁協以外は漁業権を取得できないことから、企業の新規参入によります漁業秩序の乱れ等の懸念は生じないものと考えております。

(三)沿岸漁業の振興について

(浅野)先に述べたクロマグロ漁のことにも関連するのですが、また今回の漁業権の質問にも繋がるのですが、改正内容を見ても例えば、大規模漁獲の多い沖合漁業、資源減少に大きな影響力を持つ沖合漁業について、大規模化を進めるという改正内容となっております。 一方で、沿岸漁業については既に述べたように漁業権付与のあり方を変える等、漁業者の不安を増大させるような改正内容が盛り込まれている。 このことに対しての道の認識を伺うと共に、改正法が成立した後に、沿岸漁業の振興に向けてどのように取り組んでいくのか伺います。 (遠藤水産局長)沿岸漁業の振興などについてでありますが、今般の改正案では、漁業権の免許に際し、現在の優先順位を廃止する代わりに、漁場を適切かつ有効に活用している場合は、既存の漁業権者が優先されることが明記されておりますが、具体的な運用が不明なことから、不安の声も聞かれているところでございます。 このため道といたしましては、引き続き、漁業団体と密接に連携し、政省令などの策定に際し、本道の沿岸漁業の実情が反映されますよう、国へ働きかけるとともに、漁業団体と連携し、国が措置する施策も有効に活用しながら、水産資源の維持・増大に努めるなど、今後とも、沿岸漁業の振興に向けて取り組んでまいる考えでございます。 (浅野)沿岸漁業は漁村を形成して、雇用を生み、多面的機能の発揮に大きな貢献をしております。規模では沖合漁業にかないませんが、北海道の漁業のみならず、地域経済を守る非常に重要な役割を果たしております。 政省令の策定に際して、本道の沿岸漁業の実情が反映されるよう国に働きかける答弁をいただきましたので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

(四)密漁防止について

(浅野)次に密漁防止について伺います。改正法の中で密漁防止のための罰則強化が謳われております。 私の地元留萌管内もそうですが、日本海側、全道各地で密漁による被害に本当に頭を悩ませているところでありますけども、今回の密漁防止についての規定がどの程度効果を上げ得るのか、道としての認識と今後の密漁防止に向けた取組について伺います。 (遠藤水産局長)罰則強化に対する認識などについてでありますが、改正案では、近年多発している悪質で組織的な密漁を抑制するため、新たにナマコやアワビなど、特定の水産動植物を対象としました所謂密漁罪を新設し、その罰則を3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金とするなど、密漁に対する罰則強化が図られているところでございます。 特に3,000万円という金額は、個人に対する最高額の罰金であり、密漁の抑止に極めて大きな効果があると認識しているところでございます。 道といたしましては、今後とも関係機関や漁業団体と緊密に連携をし、合同パトロールを行うなど、改正案による密漁対策の効果が最大限に発揮されますよう、取り組んでまいる考えでございます。

(五)今後の対応について

(浅野)以上、改正法に対する懸念を縷々質問して指摘して参りました。漁業改正法、これを確かなものにする、改正趣旨を的確に反映させるためには、まず、答弁いただきましたように本道漁業の実情をしっかりと国に伝えて、政省令等に正確に反映されるよう取り組んでいただくことと、何よりも現場の方々の声をしっかりと聞いてこれからどうなるだろうと不安に思っている方々に寄り添った対応をしていただくことが重要と思います。これを踏まえて、道として改正法の成立を見据え、今後具体的にどのように対応していくのか伺います。 (幡宮水産林務部長)今後の対応についてでございますが、国は、今般の法改正にあたり、全国各地で開催した説明会等を通じて、改正案の主な論点に対する懸念は、相当程度払拭されたものの、浜の隅々まで理解を得るためには、更に努力が必要との考えを示しています。 このため道としては、引き続き、国の動向を注視し、漁業者への説明を浜レベルで、きめ細かく行うよう働きかけ、漁業者の理解をさらに深め、不安を払拭するとともに、これまで漁協が果たしてきた役割を十分尊重し、既存漁業者や地元漁協との調整に努めるなど、漁業者の皆さんが安心して漁業を営んでいけるよう取り組んでまいる考えであります。 (浅野)今、幡宮部長から「浜レベル」という言葉を聞きました。平成30年の漁業センサスによると全国で2,800を超える漁港があるとされています。 本道でもたくさんの漁港がありますが、その1つ1つで説明会を行うくらいの細かなレベルと認識しておりますので、これからも国と一緒になって、また、国が現場の声に耳をかす態度が十分でないと感じた時は、きちんと指摘をして行く、そのような態度で丁寧な説明に取り組んでいただきたいと思います。

四 漁業資源の変化について

(浅野)次に漁業資源の変化について伺います。 今年の第二定例会でも伺いましたが、私の地元で漁業者が取り組んでいるホタテガイの養殖などについて、その稚魚がへい死をする事例が最近増えている。これに対しては、第二回定例会の予算特別委員会で、道としては、かごの傾きや振動による半成貝のへい死の影響を把握する等の調査を4月から11月にかけて行い、データ収集した結果、一定の分析結果等について順次、関係者への周知や指導を行うなどの答弁をいただいておりました。これらの調査の進捗状況について伺います。 (佐藤水産振興課長)調査の進捗状況についてでありますが、 沿岸の潮流の速さや向き、養殖かごの振動や傾きが、ホタテガイへ与える影響を確認するため、水産試験場と水産技術普及指導所が連携し、平成30年度から3カ年の計画で、留萌管内などで調査を行っているところであります。 今年度につきましては、4月から11月まで小平町と苫前町に設置した流向流速計で潮流の向きや速さを計測した結果、小平町は苫前町と比べて流れが速いこと、秋には、低気圧の影響などにより、強い流れが起きることが確認され、これらの観測結果については、先月、漁業者に対し、中間報告を行ったところであります。 また、かごの振動や傾きを計測する水位計の結果については、現在、解析を進めているところであり、今後、得られた知見について、関係者等へ周知していくこととしております。 (浅野)漁業資源の変化は、ホタテガイのみならず様々な魚種で起こっておりますが、ホタテガイは私の地域にとってエース的な存在でありますので、今年度からの3カ年の中で、しっかりとした今後の対応の基準となるような分析結果を出していただきたいと思います。

五 トドによる漁業被害対策について

(浅野)オホーツクや太平洋側と比較して、厳しい漁業環境に置かれている日本海側において、追い打ちをかけるように、トドをはじめ海獣による漁業被害が出ております。これについては、先月、日本海側の19の漁協で構成する「北海道日本海沿岸漁業振興会議」から、漁業資源の回復などと併せてトド等の海獣による被害対策について、道議会に要請があったと承知をしております。 依然として、地域の漁業者にとって海獣被害対策は、喫緊の課題となっています。 平成29年度の漁業被害額は15億6千万円に上っており、75%を占めるトド被害について、その対策の中心となっている採捕事業は、26年に国が定めた「トド管理基本方針」に基づいて行われていると承知をしております。 来年9月からは、新たな方針の下で事業が行われるとのことであり、このことを踏まえ、以下、質問します。

(一)被害等の減少要因について

(浅野)道が公表した29年度のトドによる漁業被害額は、前年度の約16億円から26%、4億2千万円減少して、11億8千万円となっており、トドの採捕数についても、540頭から14%減少して、464頭となっていると承知します。捕獲数が減少しているにもかかわらず、被害額が大きく減少しているのは、トドの個体数が適正な水準に近づいてきているとの見方もできます。このような状況の要因を、道として、どのように認識しているのか伺います。 (佐藤水産振興課長)被害額などの減少要因についてでありますが、被害額や採捕数の減少について、正確な原因は判明していないものの、トドの研究者からは、平成26年度以降の採捕数の増加や追い払いの効果とともに、トドの餌となるニシンなどが沖合域に豊富にあったことなどが要因の一つと聞いております。 また、平成29年度は、トドの沿岸への来遊、いわゆる寄り付きが減ったとの報告もされており、これらのことから、トドによる被害額や採捕数が減少したと考えているところであります。

(二)被害対策について

(浅野)ここ10年間の状況を見ますと、被害のピークが25年度の約19億8千万円、特に、ここ2年間は、被害額が大きく減少していると承知します。 トド被害の増加を受けて、26年に基本方針が策定され、採捕数は倍増の500頭規模とされてきていますが、29年度の採捕数が採捕枠を下回っている状況は気になるところであり、道としてこれまでどのような被害対策を講じてきたのか伺います。 (佐藤水産振興課長)被害防止対策についてでありますが、道では、これまで、漁業団体や市町村と連携し、海上作業に慣れた漁業者ハンターの育成や猟友会への要請によるハンターの確保、ニシンの漁期前の集中駆除や離島と連携した一斉駆除など、実施体制の整備に努めてきたところです。 また、トドに破られにくい小型定置網や底建網の強化網の導入支援のほか、国が進める強化刺し網の実証事業や漁船から水中で大音響を発生させてトドを追い払う忌避試験への協力など、駆除以外の被害防止対策にも取り組んできたところであります。

(三)基本方針の見直しについて

(浅野)既に述べましたが、現在のトド駆除の考えの基本となっている基本方針、これは来年8月までとされております。5年が経過する来年8月までには、様々な点検・見直しが行われて、次の期間の採捕枠が示されることになると承知をしますが、トド管理基本方針の見直しに関して、どのような検討が行われることになるのか伺います。 (佐藤水産振興課長)「トド管理基本方針」の見直しについてでありますが、国が定めた現行の管理基本方針では、見直しに当たって、トドの管理状況を点検することが規定されております。 このため、国では、これまでの漁業被害や採捕の状況などの検証作業を行うほか、11月に開催された現地意見交換会における漁業者などからのトド被害の実情や専門家からの意見などを踏まえ、新たなトドの管理目標の設定や採捕枠などの見直しが行われることとなっております。

(四)現地意見交換会について

(浅野)特に被害の深刻な宗谷総合振興局管内では、先月、漁業者等との現地意見交換会が開催されたと承知をしております。そこでの出席者の方々からはどのような意見が出ているのか、またそれらに対してどのように認識しているのか伺います。 (佐藤水産振興課長)現地意見交換会についてでありますが、11月に稚内市などの3か所で国が開催した意見交換会には、地域の漁業者や市町村などが出席し、稚内市での意見交換会の出席者からは、「宗谷岬の弁天島など、近年、トドの来遊が多く見られる地域では、採捕枠を増やしてほしい。」、「今後とも、漁業者ハンターの育成など、採捕数の増加につながる取組を進めてほしい。」、「刺し網など、依然として被害が集中し、トドの来遊期には網を入れられないこともあることから、さらに被害対策を充実・強化してほしい。」などの意見が出されたところであり、道としては、トドによる漁業被害を受けている地域の実態を反映した意見と受けとめているところです。

(五)今後の来遊状況について

(浅野)現行の基本方針で示された採捕数についてですが、来年8月までの最後の年度を今迎えています。最終となる今期の駆除が、今後に繋げていく上で、非常に重要な意味を持つと思います。 今年度はトドの沿岸への来遊が減っており、石狩市のトド岩では上陸数が少なくなっていると。一方では、稚内市の弁天島には、これまで見られなかった多数のトドが上陸するなど、来遊状況が非常に変化しているとの関係者の話も聞かれます。 私の地元留萌管内の漁業関係者は、例年トドが今時期、北の方から南におりてくると、今年はどれほどの来遊があるのかを心配している声を聞かされることもあります。留萌管内への来遊を含めた今後のトドの来遊状況について、道はどのような分析をし、認識を有しているのか伺います。 (生田水産基盤整備担当局長)今後の来遊状況についてでございますが、トドの来遊状況については、毎年、国の研究機関が本道周辺海域について航空機や目視などにより調査し、その結果を取りまとめているところでございます。 平成29年度の調査結果では、トドの上陸場について増毛町と石狩市の境界の雄冬地域では、前年の2分の1に減少したのに対し、稚内市の弁天島では増加が続き、最大上陸頭数が3,500頭となったこと、日本海側へ南下していた群の北上が早かったことなどが報告されております。 道では、近年の来遊状況が変化していると考えておりまして、引き続き、関係機関と連携しながら、来遊状況の把握に努め、漁業関係者への情報提供を行ってまいります。 (浅野)ぜひ漁業関係者へのきめ細やかな情報提供に努めていただきたいと思います。

(六)今後の取組について

(浅野)ただ今答弁のあった来遊状況や現地意見交換会などでの漁業者のみなさんの意見なども踏まえて、今後、道は、トド管理基本方針の見直しに向けてどのように対応し、どう被害防止に取り組んでいく考えなのか伺いまして、質問を終わります。 (幡宮水産林務部長)今後の取組などについてでございますが、道としては、トドによる被害の軽減を図るため、現行方針の最終年となる今期の駆除については、トドの集中駆除や一斉駆除などの取組、来遊状況に応じた地域間の採捕枠の柔軟な配分やハンターの派遣を行うなど、採捕体制の整備を進めてまいります。 また、管理方針の見直しに向けましては、現地意見交換会における漁業者の意見が反映されるよう、関係団体と連携し、漁業被害の軽減につながる採捕枠の充分な確保はもとより、被害に対する補償など新たな支援制度の創設を国に働きかけるほか、忌避試験での国への協力や強化網の導入に支援するなど、被害防止対策を着実に推進し、漁業者が安心して漁業を営めるよう取り組んでまいる考えであります。 (浅野)今、ご答弁にありました、被害に対する補償など新たな支援制度の創設、これは現場の漁業者が切に望まれていることでありますので、ぜひ1日も早い創設に向けて、これからも国に働きかけていただきたいと思います。]]>

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