8月31日、今年最後の北方墓参団が歯舞群島に上陸できず、墓参を断念せざるを得ない事態が生じてしまいました。
報道ではその原因について触れられていますが、交渉に当たった外務省は何も明言せず、明確な説明を道に対してもしていません。
「今年が最後という思いで参加したのに」という、高齢化した元島民の方々の嘆きは、いか ばかりでしょうか。
来年以降、円滑に実施できるよう、外務省・政府にロシア側としっかり交渉するよう、道としてどれほど求めているのか質問しました。
平成27年北方領土対策特別委員会開催状況
開催年月日 平成27年9月7日(月)
質問者 北海道結志会 浅野 貴博 委員
答弁者 北方領土対策局長
北方領土墓参中止の経緯について
1.質問:
篠原局長におかれましては、先週の金曜日、東京に行っていただきまして、緊急の要請をしていただいたこと、本当にご苦労さまでございました。
今ご報告いただいた点について、何点か質問をしたいと思います。
今回8月31日に出発した北方領土墓参団の第二陣、結果として上陸がかなわず墓参が出来ませんでした。篠原局長が4日上京されて、岸田外務大臣、菅官房長官はじめ政府関係者の方々と面談をされて要請をされたと、今後の円滑な実施について強い要請をされたとのことですが、実際に、何故今回墓参ができなかったのか、詳細についての説明は政府からなされたんでしょうか。
答弁 : 篠原局長
外務省からの説明についてでございますが、私から、德田ロシア課長に対して、再度、詳細な説明を求めたところ、「日本側が従来と同様に準備していた入域手続きに関して、現場において一方的に日本側として受入れ困難な、今回初めてとなる内容の修正を求めてきたことが原因である。外交ルートのやりとりにつきましては、お答えすることは差し控える」との、これまでと同様の回答があったところでございます。
2.質問 :
その詳細な内容なのですけれど、今答弁にありました「一方的に日本側として受入れ困難な、今回初めてとなる内容の修正を求めてきた」と。
では、その内容の修正とは具体的にどんなものなのか、というところが問題なんですけど、実際にこの件につきましては、9月2日付けの北海道新聞にも記事が出てましたし、前回の委員会が終わった日の夕方のHBCさんのニュースでも報じられてましたし、9月6日付けだったと思うんですが、北海道新聞の社説にも出てました。要するに多楽島をロシア語の表記「ポロンスコボ島」と書くことを求められた経緯があったと報じられています。
こうした報道について道として詳細を承知されてますか。答弁 : 篠原局長
墓参の中止理由に係る報道についてでございますが、ご指摘の報道内容については承知しております。
3.質問 :
これらの報道の内容は事実なんでしょうか。篠原局長の認識をお聞かせください。
答弁 : 篠原局長
記事の内容についてでございますが、外務省から詳細な説明を受けておりませんことから、記事の内容について判断することはできない、ということでございます。
4.質問 :
9月4日に局長が上京された際に、政府側にその記事が本当かどうかという問い合わせはされたかと思うんですが、その辺のやりとり、政府側の回答はどうだったんでしょうか。
答弁 :
記事の内容についての確認についてでございますが、9月4日の要請の際に記事の内容について德田課長に説明を求めたところ、「外務省として、詳細についてお答えしない。」という回答でございました。
5.質問 :
外務省としてお答えしない、という回答ですけど、これだけ報道が出回れば、誰もが実際は多楽島の表記をめぐるトラブルがあって出来なかったんだな、ということがわかると思うんですけど、実際に道としてはその辺どのような認識を持っていますか。
答弁 :
道としての認識についてでございますが、北方墓参は人道的観点からいわゆるビザなしという特別な方式により日露政府間の合意により行われているものであり、北方墓参に限らず全ての四島交流事業の入域手続きにつきましては、外務省の責任において実施されているものであることから、今後、道といたしましては、北方墓参が着実に実施されるよう、引き続き外務省に要請してまいりたいというふうに考えてございます。
6.質問:
外務省の責任において実施されるべきものであると考えますけれども、道が実施、主催の事業が北方墓参でもあります。今回いただいた資料の中に中段のところに「道といたしましては、現地で一方的にロシア側から日本として受入れ困難な手続きを求められ、それにより今回の北方墓参が中止となりましたことは極めて遺憾です」と書かれています。
ロシア側の一方的な措置によって中止となったことも遺憾なんですけど、その詳細な事実、これだけ世の中、マスコミが報じている中で、せめて道に対しては
答弁 :
道としての認識についてでございますが、私も先日9月4日に外務省に訪問をした際に、今後もこの件については詳細について説明していただくことはありませんか、と再度確認したところ、今後も予定がないと、するつもりがないと外務省からも言われておりまして、引き続き実施主体である道としても詳細な説明について機会をみて要請してまいりたいと考えてございます。
きちんとした説明が未だに外務省からない、ということについても、私は極めて遺憾だと思うんですね。実際のところは道として説明を受けているけど外交上の問題があるからよそには言わないでくれ、ということならまだ分かるんですけど、そうした説明もない中で、
今後、本当に来年度以降、北方墓参が円滑に実施されるかどうか、道の皆様としても墓参に実際に参加される元島民の方々だとか、道民、元島民の皆さんに対する説明のしようもないと思うんです。
そうした点について、道として遺憾に思われませんか。認識を伺います。
7.質問:
大変苦しいお立場の中で国に対してもきちんと要請をされた篠原局長に本当に労をねぎらい申し上げたいと思います。
一方で、来年度以降の墓参は実現可能でしょうか、道の認識を、見通しを述べていただければ、と思います。
答弁 : 篠原局長
今後の墓参の見通しについてでございますが、北方領土問題に対する最近のロシア側の様々な動きがございますが、道といたしましては、今後、北方墓参が円滑に行われるよう、様々な機会を通じて政府などに対して、引き続き申し入れを行うこととしており、外務省をはじめ、関係機関と連携を取りながら、墓参事業の機会確保について努めてまいる考えでございます。
指摘:
9月4日の上京の際にも、最後に質問しようと思っておりましたけれど、来年度以降同じようなトラブルが生じないように十二分に篠原局長としては要請をされているとのことですので、今後も道をあげてですね、残された時間があまり多くない元島民の方々、今回も最後のつもりで参加したけど墓参できなくて残念だったという声が色んな新聞報道等にも出てますので、その想いが踏みにじられることがないように、外務省にきちっとした交渉をするように、道からも強い後押しをしていただければと思います。
ロシア外務次官の発言について
8.質問:
9月2日、ロシアの外務次官のモルグロフさんという方が北方領土問題について「私たちは日本側といかなる交渉も行わない。この問題は70年前に解決された」との発言をした旨、インタファクス通信が報じております。それを受けて日本の各メディアも報じているところですが、道はこの発言にかかる一連の報道内容を把握されてますでしょうか。
答弁 : 宗万参事
ロシアのモルグロフ外務次官の発言についてでございますが、新聞報道やインターネットの速報ニュースなどで、承知をしております。
9.質問:
このモルグロフ次官の発言に対して、道はどのように感じましたか。
答弁:
道の見解についてでございますが、 菅官房長官が、「両首脳間の合意やこれまでの交渉経過に明らかに反しており、断じて受け入れることはできない。」と発言されているとおり、道としても、モルグロフ次官の発言やロシア外務省の表明は、到底容認できないものと考えております。
10.質問:
只今、宗万参事が答弁の中でおっしゃったようにこの発言は、領土問題の存在そのものを否定するものでありまして、最終的な解決に向けて国内世論を向上するという道の取組すらも否定されるようなものであると考えます。
道としてですね、その発言内容、本当にどんなことを言ったのかだとか、どんな意図でこれを発言なされたのだとか、日本の外務省に対して確認をし、さらにロシア側にちゃんと抗議してくれとそうしたことを外務省に対して求めてますでしょうか。
さらに加えて言えば、篠原局長が9月4日に上京された際にですね、岸田外務大臣や菅官房長官とのやりとりの間でこのモルグロフ次官の発言についても触れられてますでしょうか。
答弁:
道の対応についてでございますが、先ほどご報告申し上げました北方墓参の要請の際に、モルグロフ次官の発言について抗議の申し入れを行ったところ、その当日、駐日ロシア大使を外務省に呼び、厳重に抗議を行ったとのことであり、「ロシア側には日露関係前進のため建設的な対応を強く求める。」といった外務省の考えが示されたところでございます。
11.質問:
ロシア側では最近いろいろな動きが続いていますが、今後、政府首脳のこうした領土問題の日露のこれまでの枠組みを壊すような発言がなされた際には、道としても直接交渉に関われないからという立場ではなく、今回のように、その都度、どういう真意で向こうは言っているのか、日本政府としてちゃんと抗議をしているのかという事を、その都度きちんと確認するという作業をこれからもしていただければと思います。
道としても黙っていないできちんと北方領土を行政区域として抱える自治体としてもこうした問題には敏感に反応していくんだというですね今後も態度で示していただきたいと思うんですが、このことについて、最後に、笠置本部長のお考えを聞いて私の質問を終えたいと思います。
答弁 : 笠置部長
先程来、お話が出ておりますけども、最近のロシアの様々な姿勢といいますか、発言でありますとか、そういったものはかなり強行的なものでございまして、日本側の立場といいますか、これまでの交渉の経過、枠組みといったものからも逸脱するような発言までなされているということもございます。極めて残念であるし、遺憾であると思っています。そういうこともございまして、先週には、篠原局長にも外務省ロシア課長のところにいっていただきまして、その際こうしたことにつきましても抗議の申し入れ、外務省からロシア政府にですね、抗議の申し入れをするといったこともお願いをしたところであり、今回の次官の発言について申し上げますと、既にその時にはですね、ロシア駐日大使を呼んでですね、厳重に抗議をしたということでございます。
今後とも、そういった形でロシア側の発言なり、そういったものについては、北方領土を所管いたします北海道としても時期を捉えながら、遅れることなく、外務省への申入れということが中心になろうかと思いますけども、そういったことをやっていきたいと思っております。