9月17日、道議会本会議で一般質問を行いました。
6月の定例会に続き、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と本道経済の振興を両立させるための方策について、地元留萌管内の皆様をはじめ道民の皆様から伺った課題を基に質問致しました。
質問項目は以下の通りです。特に地元留萌管内に関わる課題として、
・留萌市立病院をはじめ感染症指定医療機関に対する長期に渡る支援のあり方
・増毛町にある日本最北の酒蔵「国稀酒造」をはじめ道内各地の酒蔵の出荷量の回復が道外と比較して遅れていることへの対応
・増毛町漁協が始めた民間企業の知見を活用した密漁防止への支援
・留萌管内の森林組合が取得を目指している森林認証制度の意義並びに取得に向けた道の支援のあり方
等について触れました。是非ご一読頂き、ご意見を頂けますと幸いです。
一 新型コロナウイルス感染症対策について
(一)感染症指定医療機関への支援等について
(二)介護事業所への支援等について
1 情報共有について
2 クラスター感染への対応について
(三)少子化対策について
(四)休業要請等について
1 飲食店等への支援について
2 雇用調整助成金の特例措置の延長について
(五)改正新型インフルエンザ対策特別措置法について
二 本道の経済振興等について
(一)公共交通政策について
1 JR北海道の経営問題について
2 バス事業者への支援について
(二)米価対策並びに日本酒・酒米の振興等について
1 米価対策について
2 令和3産米の「生産の目安」について
3 日本酒の振興について
4 酒米の振興について
(三)魚価低迷への対応並びに密漁対策について
1 魚価低迷への対策について
2 密漁対策について
(四)道産木材の需要低迷への対応並びに森林認証制度について
1 道産木材の需要の低迷について
2 森林認証制度について
(浅野)
一 新型コロナウイルス感染症対策について
(一)感染症指定医療機関への支援等について
本年8月末に道は、道内の24医療機関を重点医療機関に指定をいたしました。 私の地元留萌管内で唯一の感染症指定医療機関である留萌市立病院は、コロナ禍において毎月1億円を超える赤字が生じ、このままでは減収補てんを目的とした特別企業債を発行せざるを得ない状況にあったものの、緊急包括支援金により、医療環境を整備し、救急や小児、周産期といった地域にとって必要不可欠な医療を止めることなく維持、充実することができると、院長はじめ関係者はひとまず安堵しているところであります。しかし、次なる感染拡大の波が来ることを想定した自主的な病床確保の取組は今後も継続せざるを得ない状況は続くため、より多くの人員が必要となる看護スタッフの確保等、新たに対応せざるを得ない課題も増え、今後も厳しい経営状況となることを覚悟しているとのことです。このような事情を抱える道内の各医療機関に対し、今回の指定のみならず、長期に渡る支援が求められると考えますが、このことに対する道の認識を伺うと共に、国への要望のあり方を含めた今後の取組について伺います。
(知事)
最初に新型コロナウイルス感染症対策に関し、まず、医療機関への支援についてでありますが、新型コロナウイルス感染症患者の方の受入医療機関では、病床の一部休止、不急の手術の延期など医療体制を見直して患者に対応してきたことなどにより収益確保にも影響が出ているものと承知をしております。このため、道では、本年度の緊急包括支援交付金を活用し、医療機関の空床確保や設備整備への支援、感染拡大防止対策の強化などを図ることとし、交付金の速やかな執行に努めているところであります。現在、国においては、本感染症に関する今後の取組として、法に基づく入院勧告等の権限の運用見直しや地域の医療提供体制を維持・確保する取組や支援について検討が進められていることから、道としては、今後とも地域の医療機関が必要な機能を維持できるよう国に対し、医療機関の経営支援に資する財政措置の充実などを強く要望してまいります。
(浅野)
(二)介護事業所への支援等について
1 情報提供について
これは道内のある地域で訪問介護を行っている事業者から伺った話です。その事業所の利用者が通っているデイサービスの職員が陽性になったとのうわさに接し、正確な情報を得るためにその地域の保健所に電話したところ、どこで発生したかはお答えできない、そのような話が出ている施設に直接聞くようにとの回答しか得られなかったそうです。誰かれかまわず感染者の状況を伝えることは当然ながら厳に慎むべきでありますが、訪問看護等の専門機関とはきちんとした情報提供・共有をすべきであり、それが適切になされなければ、職員、利用者の接触を通じ、クラスター感染の発生を引き起こしてしまうことに繋がりかねないことを、先の定例会で指摘したところであります。この間、事業所、市町村、医療機関及び関係団体等と具体的に情報共有の形はつくられているのか伺います。
(保健福祉部長)
関係機関との連携についてでございますが、道では、介護事業所などとの情報共有は、感染防止対策を進める上で有効な方策の一つであると考えてございまして、事業所の利用者等に感染が確認された場合や積極的疫学調査の結果、濃厚接触が疑われる場合には、事業者や関係者と情報共有をしながら、感染拡大防止のための措置を講じているところでございます。今後も、患者等の人権の尊重や、個人情報の保護等、情報管理については、引き続き慎重な対応を行いました上で、平時から、関係機関に対し情報提供を行いますとともに、感染症対策について丁寧に説明するなど、より一層、連携を強化して、新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策に取り組んでまいります。
(浅野)
2 クラスター感染への対応について
次にクラスター感染への対応について伺います。本道を含め全国各地で高齢者施設でのクラスター感染が発生しており、それらへの対応事例を積み重ねる中で、各保健所等では既に迅速な対応を可能とする知見がつくられていると考えます。しかし、それらの知見が介護事業者と十分に共有されておらず、いざクラスター感染が発生した際、介護事業所はあくまでも保健所の指導に従うだけになっています。事前にどのような対応を取るべきか、適切な情報提供があれば、各事業所による対応もより迅速かつ効果的なものになり、クラスターの規模を小さく収めることも可能となるとの声を聞きます。道として、今までの対応事例から、クラスター発生時の対応について、介護事業者に事前に周知し、訓練を含めて事前の準備ができるようにするべきと考えますが、道の認識並びに今後の取組について伺います。
(保健福祉部長)
集団感染への対応についてでございますが、社会福祉施設等におきましては、集団感染が発生した中にありましても、継続したサービスの提供が求められており、そのための事前の準備が重要であると考えているところでございます。道では、これまで、各振興局での感染症拡大防止に向けました研修会や専門家の派遣による指導・助言のほか、介護職員等の事前登録による応援派遣のシステム化や帰宅困難となる介護職員への宿泊支援、さらには現地支援対策本部の設置の検討など、集団感染発生に備えた多角的な取組を進めてきたところでございます。今後、集団感染に対応するために必要な情報を体系的に整理をいたしまして、できるだけ早期に周知を図るとともに、集団感染発生を想定した訓練や情報共有体制の確認等にご活用いただくなどして、社会福祉施設等におけます感染拡大防止対策の一層の充実に努めてまいります。
(浅野)
(三)少子化対策について
次に、少子化対策について伺います。2019年の我が国の出生数は86万5,234人となり、初めて90万人を割りこみました。少子化の進行は、本道のあらゆる施策に影響する最も根本的かつ深刻な課題であると考えます。コロナ渦がさらにそれに拍車をかけている状況があります。厚生労働省からもいわゆる里帰り出産を控えるようにとの考え方が示されており、コロナ禍により妊娠、出産を巡る状況は制限がかけられていると考えます。他には収入減なども加わり、本道のみならず日本全国で更に少子化、人口減少が加速する懸念があります。9月4日付読売新聞は、新型コロナウイルス感染症の流行で、妊娠中の感染リスクや収入減等による産み控えが広がっているのではないかとの指摘を受け、厚生労働省が全市区町村の妊娠数の推移を確認するため、都道府県を通じた緊急調査を始めたと伺っております。
道は今年度より第四期「北の大地☆子ども未来づくり北海道計画」を策定し、主に親にとって子育てしやすい、子どもにとって育ちやすいという両面から少子化を食い止めるための各種施策を展開していると承知します。道として本道はどのような状況にあると考えているのか伺うとともに、本道にとって最も深刻な課題である少子化が更に進行することを防ぐため、どのように対応する考えでいるのか伺います。
(知事)
少子化対策の取組についてでありますが、新型コロナウイルス感染症の拡大が社会経済情勢に大きな影響を及ぼしており、家庭や子どもを持ちたいと希望している方々が、経済的、精神的な不安から、結婚や出産に消極的になることが懸念されているところであります。道では、これまでも、「北の大地☆子ども未来づくり北海道計画」に基づき、出産や子育てを取り巻く経済的負担の軽減や地域全体で子育てを応援する仕組みづくりなど各般の施策の推進に努めてきたところであり、今後は、新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識の啓発や感染を心配する妊産婦に対するサポート、さらには、生活資金や再就職などに対するきめ細やかな相談支援を積極的に展開し、結婚や出産を望む方々の希望をかなえる地域社会の実現に向けて取り組んでまいります。
(浅野)
(四)休業要請等について
1 飲食店等への支援について
クラスター感染の発生等もあり、接客を伴うものも含め、飲食店全てが感染リスクの高い危険な場所であるというイメージがつき、新北海道スタイルの実践をはじめとする感染防止措置を真面目に講じているところに対してもこのような風評被害が生じていると考えます。飲食店等を経営する多くの事業者は感染防止対策を取っていますが、その原資の多くは日々の売り上げであり、資金面を含めた経営状況が強固なところばかりではないと承知します。そのような事業者に対し、道はこれまでも持続化補助金の上乗せや休業要請に応じた事業者への支援金の交付を実施してきていますが、感染防止措置を継続する上で必要となる費用に対する、道からの助成を望む声もあります。このことに対する道の認識並びに今後の対応について伺います。
(知事)
飲食店等への支援についてでありますが、道では、事業者の皆様に、感染リスクを低減させながら、社会経済活動を行う「新北海道スタイル」を実践していただくため、周知・普及の取組はもとより、設備・備品の導入支援や、経営指導・助言の強化に向けた専門家派遣などの支援策を講じているところであります。特に、8月と9月を「新北海道スタイル集中対策期間」として設定し、接待を伴う飲食店への個別訪問による働きかけや支援策の説明とともに、先進的な取組を行う店舗・ビルの事例発信のほか、道のホームページを活用した、飲食店の皆様が取り組んでいる感染症対策のPRなどを実施してきており、道として、引き続き、事業者の皆様に対し、補助制度の活用を促すとともに、需要の喚起や経営の安定に向けた伴走型の支援に取り組んでまいる考えであります。
(浅野)
2 雇用調整助成金の特例措置の延長について
コロナ禍による苦境においても従業員を解雇せずに雇用を守った事業者に対して支給される雇用調整助成金の特例措置の延長が、本年末までなされることが決まりました。先の定例会でも指摘しましたが、日本のカズノコの生産の約5割を占める私の地元留萌管内の水産加工会社の多くは、ニシンの原材料の輸入が本年大激減しており、通常は年が明けてから行っていたニシンから卵を取り出す仕事を従業員にさせるだけの原材料が確保できておらず、仕事量を減らすか、雇用調整助成金を活用して雇用を維持するしかないと考える事業者が多くあります。コロナ禍の影響が遅れて生じる業種があること等にも鑑み、道として政府に来年以降の特例の更なる延長を今の時点から要望する必要があると考えますが、これらの点に対する道の認識並びに今後の対応について伺います。
(経済部長)
雇用調整助成金についてでありますが、感染症の長期化は、様々な形で、道内企業に大きな影響を与えておりますが、その影響の程度や出方については、業種や規模、提供する商品・サービスなどにより、一様ではないと認識しております。このため、道では、地域の経済・雇用情勢を的確に把握し、経済団体や企業等からの要望もお聞きしながら、引き続き、無利子融資や支援機関等による経営相談、どうみん割などによる企業の経営基盤の強化や需要喚起に取り組むほか、雇用調整助成金など雇用の維持・安定に必要な対策の充実・強化について、適時、国に求めてまいる考えでございます。
(浅野)
(五)改正新型インフルエンザ対策特別措置法について
6月の定例会で我が会派の大越農子議員が、緊急事態制限下における私権制限の権限、休業要請に関連する保障等についても、法的裏付けがなされていない現行の特措法が抱える課題を取り上げ、同法の改正を真剣に議論するならば、憲法のあり方についても真剣に議論する必要があることを指摘し、同法改正の必要性並びにそれを裏付ける日本国憲法改正の必要性について知事の見解を問うたところ、「同法改正については、憲法をはじめ各関係法令との関係性に鑑みながら検討が必要な面も生じると考える」としつつ、「私権の制限は必要最小限であるべきであり、休業対象者への補償も含めた十分な議論が必要であり、同法の見直しについてはこれらの点も含めた必要な検討が政府において進められることを期待する」旨の答弁がありました。
特措法の改正を考えるならば憲法のあり方についても議論することは避けられないという同様の考えを私も持っております。具体的には、私権制限に関して罰則規定を設ける際には憲法の第三章第13条、22条等で触れられている個人の権利と公共の福祉の関係について、休業要請に対する補償については第29条3項に基づく損失補償について何らかの修正加筆がなされた上で初めて実効性のある法制度化などが必要となることなどが想定されます。
特に休業要請に対する補償は、知事が記者会見等の場で何度も指摘されていた通り、都道府県が行うのではなく、本来であれば国の責任の下に行うべきものであります。しかし、本年4月24日に閣議決定された政府答弁書では、「第29条3項は経済活動の自粛要請に対する政府補償の根拠となり得るかとの問いに対し、特措法第24条並びに45条に基づく要請は、当該要請を受けた者の自発的な行動を即すものであり、同条項適用の可否は問題とならない」との答弁がなされています。政府が発令する緊急事態宣言を受け、都道府県知事が経済活動の自粛を要請したとしても、現行憲法はそれに対する補償を政府に義務づける法的裏付けとはなっていないのが現状と考えます。
全国に先駆けて二度の感染拡大の波を経験し、私権制限や休業補償のあり方等の難しさを、全国47知事の中で最も経験され苦労された鈴木知事として、特措法の改正について全国知事会での議論を率先して深め、政府に強く働きかけるなどして、次なる感染拡大の到来に、今こそ備えるべきと考えますが、知事の認識並びに今後の取組はどの様なものか伺います。
(知事)
特措法等についてでありますが、全国知事会では、実効性ある感染拡大防止対策の強化を図る観点から、特措法に基づく必要な協力を行う上での知事の裁量権の拡大やいわゆる休業要請に関して、要請に応じて取組を進めた事業者の方々への補償や支援を特措法に位置づけることや知事の指示を履行しない場合の罰則適用など、法制度の改正を含め、早急に実効性ある措置を講じるよう、機会あるごとに繰り返し、国に提言してきており、こうした趣旨や考え方については、道としても、賛同しているところであります。
私としては、こうした法制度の改正に際しては、その内容の如何によっては、憲法をはじめ、各関係法令との関係性も鑑みながら、検討が必要な面も生じてくるものと考えるところであります。特に、私権を制限する措置は、必要最小限のものとすべきであるとともに、その実施に当たっては、措置の対象となる事業者の方々に対する補償の取扱いも併せて議論すべきであると考えており、これらの面も踏まえながら、政府において検討がなされるよう、全国知事会を通じ、さらに働きかけてまいる考えであります。
(浅野)
二 本道の経済振興等について
(一)公共交通政策について
1 JR北海道の経営問題について
次に、本道経済の振興等について、はじめに公共交通政策について伺って参ります。
JR北海道が8月19日に発表した2020年4月から6月期連結決算は、四半期ベースでは比較可能な2003年度以降で最悪となる、純損益126億円の赤字を出すものとなりました。
国が同社を支援する根拠となっている国鉄清算事業団債務等処理法は今年度で期限切れを迎えます。来年度以降の新たな支援の法制化について、道としてもオール北海道で国に求めてきているものと承知をしますが、かつてない経営危機に見舞われている同社の現状を踏まえ、今後どのように取り組むのか伺います。
(知事)
JR北海道の路線維持に係る法改正に向けた取組などについてでありますが、持続的な鉄道網の確立とJR北海道の経営自立に向けては、JRの徹底した経営努力と国の実効ある支援に加え、地域としても可能な限りの協力や支援が重要との認識のもと、現在、道では、関係市町村とともに、JRが単独では維持困難とする8線区における鉄道の利用促進に資する設備投資に対し、地域独自の支援を行うとともに、鉄道活性化協議会において、市町村や企業の皆様と連携し、全道的な利用促進の取組を展開しているところであります。
私としては、本道の鉄道網を持続的に維持していくためには、JRの収益構造の安定化やコスト負担のあり方の見直しなど、先般行った国への提言を実現することが何より重要と考えており、多様な媒体の活用など、訴求効果の高い手法を駆使し、広域分散型の地域構造といった本道の特殊性や、鉄道網の重要性を全国に発信しながら、所要の法改正が行われ、実効ある支援が講じられるよう、引き続き、国に求めてまいります。
(浅野)
2 バス事業者への支援について
次にバス事業者の支援について伺います。留萌管内羽幌町に本社を構える沿岸バスをはじめ、公共交通を担うバス会社の経営も極めて困難な状況にあります。全道の乗り合いバス事業者の運送収入は、本年の5月前年同月比マイナス60%をピークに、回復傾向にあったものの、8月以降は減少幅が再び拡大傾向にあります。これらの乗り合いバス事業者は利用者が激減している中でも運行を継続しており、従業員を休業させることができないことから雇用調整助成金の特例措置の恩恵を受けることもできません。
バス路線の維持のための方策の一つとして、固定経費面での支援を望む声があります。例えば軽油引取税は、バス協会等に対して交付されている運輸事業振興助成交付金の原資の一部ともなっておりますが、1リットル当たり32.1円の税率のうち、暫定税率分17.1円が減免されるだけでも、バス会社にとっては直接的な固定経費への非常に大きな補助となるという声を聞きます。そうした方策などを通じて、固定経費面からの支援を行うことも有効であると考えますが、この点に対する道の認識を伺います。また、バス事業者への支援については、国による支援が第一義的に重要ではありますが、路線の維持に向け、国に対して更なる財政支援を求めることに加え、地域においても支援を講ずる必要があると考えます。この点に対する道の認識並びに今後の取組について伺います。
(知事)
地域交通の確保についてでありますが、地域の生活を支える足として重要な交通機関である乗合バス事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に伴う移動自粛などにより利用者が大幅に減少していることに加え、車両維持などの固定経費の負担が大きく、経営を取り巻く環境は厳しい状況にあると認識をしております。このため、道では、バス事業者の方々の声を踏まえ、公租公課を含む固定経費の軽減措置などについて、国に対して、要望を行うとともに、補助金の概算払の実施や割引乗車券等の販売への支援などに努めてきたところであります。道としては、今後とも、生活バス路線の補助に向け調整を図るなど、バス事業者の方々や市町村と連携しながら、地域の実情を踏まえた支援が講じられるよう、様々な機会を捉えて、国に働きかけてまいります。
(浅野)
(二)米価対策並びに日本酒・酒米の進行等について
1 米価対策について
令和2年産米に関し、コメを出荷する農家に対する農協の仮払金であり、卸売価格の目安となる「概算金」をホクレンが6年ぶりに引き下げることが決まりました。ゆめぴりかはほぼ前年並みを維持したが、ななつぼしは対前年比300円減の60キロ当たり1万3200円となりました。コロナ禍により外食産業が大打撃を受けたこと等が背景にあるものと思われますが、米価の下落は稲作農家並びに関連産業の経営に影響し、地域経済の更なる悪化を招く懸念があります。道として米価の推移についてどのように認識し、米価の下落を防ぐべく、どのような対応をする考えでいるのかを伺います。
(農政部長)
北海道米の価格などについてでございますが、昨年産の業者間取引価格を見ますと、新潟コシヒカリをはじめ主産地のブランド米は大幅に値を下げている中、北海道米につきましては、ゆめぴりかが高止まり、ななつぼしの下げ幅も小幅で推移するなど、実需者からの高い需要に支えられているものと認識しております。一方で、6月末現在の全国の民間在庫量は、外食の需要減などにより、適正とされる180万トンを大きく超える201万トンとなり、本道など主産地の作柄も、国の8月15日現在の調査において「やや良」や「平年並み」となっていることなどから、今後、一層の需給緩和や全国的な米価下落も懸念されるところであります。このため、道といたしましては、生産者団体と一体となって、北海道米のブランド力強化に取り組むとともに、主食用米から他用途への転換や、団体による長期販売の取組などを通じ、北海道米の価格安定や、需要に応じた米生産を推進してまいります。
(浅野)
2 令和3年産米の「生産の目安」について
米の生産は、平成30年度より各地域が独自に生産の目安を設定する現行制度へと変わりました。本道の稲作農家、また農協関係者からは、本道の令和2年度産主食用米の生産の目安は約53万トンとされていますが、令和元年7月から令和2年6月までの需要実績が約55万トンあったこと、このことに鑑みても、令和3年の生産目安を増やし、生産農家の意欲を守ることが重要ではないかとの声があります。この点に対する道の認識並びに今後の対応について伺います。
(知事)
来年産の米の生産についてでありますが、本道の稲作は、「ゆめぴりか」をはじめとする良食味米を中心に、外食向けの業務用米、さらには酒米や加工用米など、多様なニーズに対応しており、今後とも、我が国有数の米産地として、安定的に発展していくことが重要であります。このため道では、関係機関や団体の皆様と一体となって、全国の需給状況や作付動向などを踏まえ、実効性ある来年産米の「生産の目安」を設定し、需要に応じた米生産を進め、水稲作付面積を維持・確保していく考えであります。また、水田活用の直接支払交付金などの効果的な活用と併せ、スマート農業や直播などの省力技術の導入、新品種の開発、水田の大区画化、さらには、北海道米のブランド力強化や輸出拡大などを総合的に推進することで、「日本一の米どころ北海道」の実現に向け取り組んでまいります。
(浅野)
3 日本酒の振興について
私の地元の増毛町には日本最北の酒蔵である「国稀酒造」があり、地元は勿論道内外各地にコアなファンがあり、映画撮影の舞台としての協力を惜しまない等、林眞二社長はじめ社員の皆さまは幅広く地域振興に尽力をしています。その日本酒の消費量は、緊急時代宣言による外出自粛等により大きく減少したものの、ここのところ回復を見せてきています。しかし、北海道酒造組合が示した本年4月から6月までの清酒出荷数量の対前年比のデータを見ますと、全国の出荷数量は4月が78.7%、5月が78.5%、6月が94.9%と着実な回復を見せている一方、本道は4月が39.9%、5月が44.2%、6月が62.5%と、全国平均を大きく下回っていることが示されています。
日本酒の消費量の減少は、酒蔵の経営に厳しさを増すのは勿論、酒米農家の来年の作付けを減少させ、地域経済に負の影響を長引かせる一因ともなり得ます。道として、道内の日本酒出荷・消費量の現状をどう把握し、道外と比較して回復が遅れている要因に何があると認識しているのか伺うと共に、今後コロナ禍が収束した後に再び本道の食文化の魅力を支え、本道観光の振興を担いうる日本酒の振興をどのように図っていく考えでいるのかを伺います。
(知事)
日本酒の振興についてでありますが、日本酒は、豊かな食文化を育み、地域の活性化や観光振興に重要な役割を果たしておりますが、今般の感染症の拡大により、観光需要の比率の高い本道にあっては、インバウンドや飲食店での消費、お土産需要の減少などが大きく影響し、道産日本酒の出荷量は、全国に比べて大きく落ち込み、北海道酒造組合の調べによると、対前年同月比で4月には6割減、7月には2割から3割減と未だ回復が遅れている状況にあります。このため、道では、関係機関や団体、酒蔵の皆様と連携し、道民の方々の家庭での消費拡大を目指し、道内百貨店やネット通販等での販売促進に加え、海外での日本酒展示会への出展を通じた輸出の拡大などに取り組んでいるところであります。また、今年度から、酒米の品種開発の加速化や道内蔵の醸造技術向上を図る講習会の開催、国内外での販路拡大に向けたプロモーションの展開など、道産酒米の生産振興と道産日本酒のブランド力の強化に向け、積極的に取り組んでまいります。
(浅野)
4 酒米(さかまい)の振興について
酒米は、他の品種と比較して転用が困難であると言われており、収穫した酒米が売れ残る懸念がある場合、農家さんは作付けを減らさざるを得なくなり、経営に直接の影響が出ることが予想されます。道として、日本酒の出荷・消費量の現状を踏まえ、酒米農家の経営をいかにして支えていく考えでいるのかも併せて伺います。
(農政部長)
酒米生産農家への対応等についてでございますが、この度の感染症の影響を受け、飲食店での消費の減少やイベントの縮小などにより、 一時的に大きく減少した道産日本酒の出荷量は、未だ昨年の水準まで回復していない状況にあります。一方、酒米は、酒蔵ごとの需要量に応じた契約栽培により生産されていることから、今年産米につきましては概ね全量が契約締結されたものの、今後、日本酒消費の回復状況によりましては、来年産の酒米生産への影響も懸念されるところであります。このため、道といたしましては、今後とも日本酒の出荷状況や酒米の需給などの情報収集を行うとともに、関係機関・団体と連携しながら、道産日本酒の消費拡大により、酒米の需要拡大に取り組むほか、水田活用の直接支払交付金の活用などを通じた、需要に応じた米生産を推進し、道内の酒米生産農家の経営安定に努めてまいります。
(浅野)
(三)魚価低迷への対策並びに密漁対策について
1 魚価低迷への対策について
コロナ禍の影響の一つとして魚価の低迷が続いています。私の地元では殻付きのウニの価格が昨年の半分程度となり、漁獲したものを畜養する施設もないため、今年度の出荷を見合わせた例がありました。また北海道の三大魚種である秋サケ漁が既に始まっていますが、飲食店等外食需要が十分に回復しなければ生鮮の流通がスムーズに行かなくなることを漁業関係者は大変危惧しております。ホタテに関しては、海外への輸出が停滞し、自社の冷蔵庫が満杯になり、安くない運賃と保管料を負担して他地方の冷蔵庫に保管した漁協もあると伺っています。道はこれまで四弾に渡る新型コロナウイルス感染症対策の中で、対策をうってきていますが、漁獲したものを畜養して出荷時期をずらす為の施設の建設や、他地域の冷蔵庫を用いて保管する際の運賃や保管料を補助する等、魚価を下支えするための事業を望む声が聞かれます。この点に対する道の認識並びに今後の対応について伺います。
(知事)
道産水産物の価格低迷への対応についてでありますが、本道では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い水産物の需要が低迷し、外食向けの高級なウニ、ツブをはじめ生鮮水産物の価格が大きく下落しており、一部の漁業者の方々の操業調整や休漁を余儀なくされるなど、漁業を取り巻く状況は厳しさを増しております。このため、道としては、引き続き関係団体の皆様と連携のもと、国の事業などを活用し、ホタテなど漁獲時期が限られている水産物を、一定期間、畜養や冷凍保管し、消費の動向に応じて出荷する取組を進めるとともに、需要の回復に向けて関係団体の皆様が取り組むインターネットによる販売促進や道内外への広告宣伝のほか、中国等を対象としたプロモーション活動に支援するなど、道産水産物の価格の回復と安定に向けた取組を着実に進める考えであります。
(浅野)
2 密漁対策について
全道各地の漁業者にとって最も頭の痛い問題の一つが密漁の横行です。2018年12月に成立した改正漁業法では、密漁の厳罰化が明記されたものの、同法の施行は本年末が見込まれており、同法が密漁を抑止するどころか、逆に厳罰化する前に密漁を行おうとするかけこみ需要的な動きを誘発しているとの見方もあります。私の地元留萌管内でも、漁業者が自ら自警団を組織し、夜ごと浜をまわり、密漁者と思われる集団を見張る等の対策を取っている方々もいますが、それにも限界があります。改正漁業法の一日も早い施行を待つだけではなく、民間の知恵を活用した密漁対策も進めるべきと考えます。
この度、留萌管内増毛町と、後志管内泊村の漁港で、沖電気工業が開発したナマコ密漁防止のための水中音響センサーの運用評価試験が始められました。密漁が現行犯逮捕でなければ摘発ができないとされている中、海上の密漁船または海中の密漁ダイバーとおぼしき怪しげな音が聞こえた時、漁協の担当者に通知がなされ、警察や海上保安部に通報して密漁者を摘発することが可能となることが期待されております。このシステムの最大のネックは最小構成でも約2千万円となる導入経費であり、実際の効果が確認されたとしても各漁協や漁業者が単独で導入することは困難と言われております。道として、このような民間の知見を活用した密漁対策についてどのような認識を持ち、今後どのように推進していく考えでいるのか伺います。
(水産林務部長)
近年、道内では、高価なナマコなどを狙った組織的な密漁が横行し、貴重な漁業資源が減少するなど、大きな被害が発生していることから、道としては、漁業者をはじめ、海上保安部や警察と連携した取締や、密漁が多発している地域に漁業取締船を重点的、機動的に配置するほか、漁業団体が設置する監視カメラや改正漁業法の罰則強化を周知する啓発用看板に支援するなど、密漁防止対策に取り組んでいるところであります。道としては、このたび試験的に導入された「水中音響活用による密漁監視システム」は、現在、漁業者などが行っている監視業務の労力の軽減や密漁を抑止するといった有効な取組に繋がるものと考えており、これまでの対策に加え、漁業者や漁業協同組合の意向を充分に踏まえながら、国費などを活用した導入支援を検討するなど、密漁の防止に取り組んでまいる考えであります。
(浅野)
(四)道産木材の需要低迷への対応並びに森林認証制度について
1 道産木材の需要の低迷について
コロナ禍による木材需要の低迷に対応するため、今定例会では「道産木材保管・利用拡大等対策事業費補助金」が提示されています。同補助金は国の「輸出原木保管等緊急支援事業」と連携し、「川上対策」として広域分散、積雪寒冷等の本道特有の事情により道内林業従事者が負担せざるを得ない各種経費を補助すると共に、「川下対策」として道産木材の利用を促進するものと承知しますが、木材需要の低迷は長期間に渡ることが予想され、息の長い支援が必要です。道として本道の原木需要の低迷の現状並びに今後の影響をどのように捉え、森林組合をはじめとした林業事業体に向けて、今後どのように取り組んでいく考えでいるのか伺います。
(知事)
本道では、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、輸送や住宅用をはじめとする製材需要の減少に歯止めがかからず、こうした状況が続くと、関連企業の経営はもとより、地域の基幹産業である林業や木材産業の振興にも大きな影響が生じると考えております。このため、道としては、今後、業界団体の皆様と連携し、住宅や民間施設における道産木材の利用促進を図るほか、川上を担う林業事業体の方々に対し、除雪など滞留している原木の管理・保管する経費に支援するとともに、森林管理局と情報共有を図り、木材需要の把握等に努めながら、引き続き、国有林と道有林が協調し、原木の安定供給を行うなど、林業事業体の方々の経営が持続し、地域の森林づくりが着実に進むよう取り組む考えであります。
(浅野)
2 森林認証制度について
1970年代に熱帯雨林の減少が世界的な問題となり、森林保護の重要性に対する国際的な意識が高まったことを受け、持続可能な森林経営を支援する民間主体の制度である森林認証制度が確立されました。これまで本道においては、7つの流域で森林認証の取得がなされてきていると承知をしています。私の地元留萌管内でも、4つの森林組合と管内8市町村に宗谷管内幌延町を加えた9市町村が共同して私有林と市町村有林の森林認証取得を目指すべく、「るもい森林認証検討会」の設立が予定されています。道として森林認証制度の意義等に対しどのように認識しているのかを伺うとともに、留萌管内の取組をはじめ今後森林認証の取得を目指す地域に対し、どのような支援を講じていく考えでいくのかを伺います。
(水産林務部長)
森林認証に対する認識などについてでありますが、森林認証の取得は、伐採後の着実な植林や環境に配慮した森林経営を通じた森林資源の適切な管理、認証森林から産出される木材のブランド化など、地域の林業、木材産業の活性化につながる取組と考えております。本道では、オホーツク、十勝、渡島、上川地域などにおきまして、森林認証が取得されており、道としては、留萌地域をはじめ、認証取得を目指す地域に対して、森林組合等で構成する協議会での検討や、地域の関係者による合意形成の取組などに積極的に支援するとともに、セミナーの開催などにより、森林認証の意義や地域の実情に即した認証材の活用について、理解の促進を図るなど、森林認証の取得を促進する考えであります。
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