北海道は本年4月以降、高齢者施設における虐待を防止するため、これまで数年に一度事前に通告してから行ってきた実地指導を抜き打ちで行うとの意向を示しています。同じく施設職員による虐待が増えている障害者施設についても、こちらは国の指針改定を待たずに道独自の判断として、抜き打ちの実地指導を行うとのことです。それだけでなく、根本的な虐待防止のために何をすべきか、道の見解を質しました。この質問を3月24日付け北海道新聞が取り上げてくれました。
平成28年第1回北海道議会定例会
保健福祉委員会(最終日前日)開催状況
開催年月日 平成28年3月23日(水)
質問者 北海道結志会 浅野貴博 委員
答弁者 保健福祉部長 村木一行
福祉局長 坂本明彦
施設運営指導課長 大平幸治
障がい者施設での虐待防止に向けた道の取組について
おはようございます。北海道結志会の浅野貴博でございます。私からは障がい者施設における虐待を防止する道の取組について、以下質問してまいります。
介護施設における虐待が近年多発をしまして、大きく報道でも取り挙げられ、深刻な社会問題となっていることは皆様ご承知のとおりかと思います。そのような中で、厚生労働省が、都道府県などが介護施設へ定期的に行っている実地指導を今後は事前通告なしの抜き打ちでも行えるようにする方針を示しております。このことに対しては、昨日終わりました予算特別委員会でも、各会派の委員の皆様から質問がありました。事前通告なしの実地指導について、道としては「施設等の日常におけるサービスの提供状況が確認できるほか、施設などに対しても抑止的な効果が期待できる」として、4月以降行う意向を示しておられます。
施設職員における利用者への虐待については、介護施設のみならず、障がい者の方々の施設においても近年増加傾向にあると承知をしております。私の手元にある資料で言えば、平成24年度から26年度までの数字で言えば、高齢者の施設は平成24年度が5件、25年が10件、26年が24件、障がい者施設においても、平成24年が2件、25年7件、26年9件と増加傾向にあります。
これを受けて高齢者並びに障がい者への虐待を防止するための法整備については、それぞれ平成18年4月、24年10月に防止法が施行されております。介護施設における虐待状況などについては、当委員会ではなくて特別委員会の所管となることですから、この場では障がい者施設における虐待状況並びにその防止に向けた道の取組について、以下質問してまいりたいと思います。
1.質問 : 虐待防止等の対応について
介護施設並びに障がい者施設における虐待件数は、先ほど申し上げたように増加傾向にありますが、虐待が起きる理由並びに虐待が起きた時の対応、また、日頃の実地指導、監査はじめ虐待防止の対応等について、両者に違いはあるのか、まずはご説明をいただきたいと思います。
答弁 : 施設運営指導課長
介護保険施設と障がい者施設におけます虐待防止の対応についてでございますが、障害者虐待防止法に基づく市町村報告におきましては、道内の障がいのある方への虐待の発生要因は、直近の3年間で見ますと、「教育・知識や介護技術等に関する問題」が全体の5割を占めております。高齢者の場合、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が最も多くなっているのと比べまして、違いはありますものの、いずれも一つの要因ではなく、様々な要因が複合的に重なり、発生しているものと考えているところでございます。
また、高齢者、障がいのある方いずれの場合におきましても虐待を発見した、もしくは虐待を認識した際には、速やかに市町村に対し通報などを行うこととされており、通報を受けました市町村は、訪問調査などによりまして、その事実確認を行い、虐待があると判断した場合は、道に報告をし、報告を受けた道では、市町村と連携をしまして、虐待に至った経緯や不適切な処遇の継続性などについての調査・確認を行います監査を実施することとなっております。
2.質問 : 事前通告を行わない実地指導の導入について
既に触れましたが、介護施設に対しては4月以降、意義あるものとして抜き打ちの実地指導を行う意向を道として示されておられますが、障がい者施設に対しても同様に、抜き打ちの実地指導を今後行う考えでいるのでしょうか。行うのならば、その理由は何か、説明を願います。
答弁 : 施設運営指導課長
障がい者施設に対します事前通告を行わない実地指導の実施についてでございますが、国では、続発する介護保険施設等における高齢者虐待の重大性を踏まえまして、虐待が疑われるなど、事前通告では、日常におけるサービス提供の状況を確認することができないと認められる場合は、通告なく実地指導を行うことができるよう、「介護保険施設等指導指針」を見直すことといたしましたが、障害福祉サービス事業所等に対する指導指針の見直しの予定はないと聞いております。
しかしながら、事前通告を行うことなく実地指導を行いますことは、身体拘束の有無や食事の介助方法など、施設等における日常のサービス提供状況などを確認でき、施設等に対する抑止的な効果も期待できますことから、道では、介護保険施設等と同様に、障害福祉サービス事業所等に対する指導監査要綱等を改正をし、事前通告を行うことなく実地指導ができるよう検討してまいる考えでございます。
3.質問 : 事前通告を行わない実地指導の対象について
介護施設に関しては、国の指針の改定の見直しを受けて、抜き打ちの実地指導を行うと、障がい者施設に対しては、国の指針の改定はないけども道として抜き打ちの実地指導を行うように、そういう方針を定めると、これは道としての虐待防止に向けた危機感の現れだと私は思うんですが、一方で、この抜き打ちの実地指導ですが、基本的なことを確認させてください。介護施設については、「日常における介護サービスの提供状況を確認する必要が生じた場合」、そういう施設に対してのみ実地指導を抜き打ちで行うとしておりますが、障がい者施設に対しても同じような見解なんでしょうか。のべつ幕無しにすべての施設に抜き打ちの指導を行うものではないと思うんですが、この点確認を求めます。
答弁 : 施設運営指導課長
事前通告を行わない実地指導の対象施設等についてでございますが、道では、これまで、市町村から虐待の報告を受けた場合、市町村と連携をし、速やかに施設等に対する監査を実施しているところでございますが、虐待は命に関わるものでございまして、市町村報告以外からも、虐待が疑われるといった入所者に対する不適切な処遇についての情報があった際などは、日常におけるサービスの提供状況を確認する必要がありますことから、このような場合についてのみ、事前通告を行わない実地指導の対象とする考えでございます。
4.質問 : 虐待が疑われる事案への対応について
それでは、そもそも、いま答弁にもあった日常におけるサービスの提供状況を確認する必要が生じた場合、どんな方法でその状況を確認しているのか説明を願います。
答弁 : 施設運営指導課長
事前通告を行わない実地指導を行った際の調査・確認方法についてでございますが、具体的には、複数の指導担当職員が同時に施設内に立ち入り、通報のあった事柄に力点を置きまして、まず、施設等における身体や食事の介助方法などの、利用者の様子や職員の対応等、日頃のサービス提供の実態を把握いたしますほか、利用者や施設職員の聞き取り、関係書類の審査などによりまして、また、状況によりましては、日をあらためて、ご家族の方々からの聞き取りを行いまして、事実確認を行うこととしております。
5.質問 : 事実関係の把握について
介護施設にしても障がい者の方々の施設にしても、そこで起きる虐待で最も問題なのは、虐待を受ける方が明確にそれを外に向けて訴えることができない状況が多々あると、そこにあると思うんです。そういう意味で、本当に悪質な虐待が行われているというのならば、抜き打ちで実地指導を行い、場合によっては監査に切り替えて再発防止を図るというのは意義があると思うんですが、そもそも、そこで虐待が行われているんじゃないかと、そうした事実確認、いろんな情報が道に寄せられると思うんですが、明確な事実関係を正確につかんだ上のものでなくては意味がないと思うんです。虐待が疑われると、その正確な事実関係の把握をどのようにするのか、道の見解を示してください。
答弁 : 施設運営指導課長
事実関係の把握についてでございますが、道では、実地指導におきまして、著しい運営基準違反が確認され、利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあると判断した場合などには、その場で直ちに監査に切り替えることとしておりまして、今後、事前通告を行わない場合も同様とする考えでございます。
監査では、利用者や施設管理者等職員、さらにはご家族などから処遇の状況などの詳細な聞き取りを行いますとともに、介護記録や職員研修の実施記録などの関係書類の審査の中で、不適切な処遇の反復、継続性の有無、運営基準遵守のための管理体制などについて確認をしまして、より正確な実態把握に努めているところでございます。
なお、監査後は、確認内容を踏まえまして、当該施設等を運営する法人に対しまして再発防止に向けた取組の指示を内容といたします改善勧告などの行政指導及び処分を行うこととしております。
6.質問 : 今後の実地指導体制等について
さきの予算特別委員会でも明らかにされておりました、例えば、介護施設に対して実地指導や監査を行う道職員の体制としては、14振興局各地に合わせて163名の職員さんがいて、本庁から9名の職員がいて、合わせて172名の職員が対応すると、対応しなくてはいけない施設の数は合計で7,026であるとのやり取りが予算特別委員会でありました。
一方で、障がい者施設は、道内ではだいたい施設数としては、3,500あると伺っております。その3,500に対して、実地指導等を行わなくてはいけない職員の体制は、14振興局各地で50名、
本庁から9名、合わせて59名と、職員数は、1人当たり、ぱっと計算できればいいんですけれど、今できないんですが、介護施設に対しては、7,000に対して172人、その半分の障がい者の施設を3分の1の職員で対応しなくてはいけない、これだけでも障がい者施設の虐待防止に向けた対応については、職員1人1人の負担が大きいということが、単純計算ですけれど、言えると思うんです。今後、介護施設のみならず障がい者施設に対しても抜き打ちの実地指導を新たに行うのならば、こうした疑わしきケースの確認等の作業も含めて、職員さん1人1人の負担は更に増すことと、それが懸念されます。この点をどう解決して、虐待防止につなげていくのか、道の見解を示してください。答弁 : 福祉局長
今後の実地指導体制等についてでございますが、道では、虐待事案はもとより障害福祉サービス報酬の不正請求事案に対しまして、担当職員が速やかに、かつ適正な指導監督が行えますよう、道が作成しております「監査事務処理マニュアル」の充実や、振興局職員を対象といたします各種会議におきまして指導方法を徹底いたしますとともに、必要に応じて本庁職員を実地指導に同行させるなどして、施設等に対する指導の強化を図りますほか、事前通告なく行います実地指導の実施などによりまして、指導業務の質や量の拡大に伴って求められます指導監督体制についてのあり方を検討してまいる考えでございます。
指摘 :
指導業務の質や量の拡大、それによって対応できなくなり、虐待が見過ごされてしまう、本末転倒なことがないように、職員の皆様の負担が増えると思いますが、その増えた負担をこなせるだけの体制の強化といいますか、その点をしっかり取り組んでいただきたいと思います。
7.質問 : 虐待防止に向けた今後の取組について
最後に伺いますが、この抜き打ち指導も意義あるものと思いますけど、私が申すまでもなく、虐待が起きる本当の根本的な理由というものを解決していかなくちゃいけないと思うんです。虐待が許される訳じゃありませんが、職員さんが虐待と思われるような行為をしてしまう要因は様々あると思うんです。過度なストレスなり、なかなか技術が追いつかない、そういう悩み、苦しみ、そうした背景が様々あると思われます。単に抜き打ちの実地指導を行うだけではなくて、そのような職員の虐待へと走っている根本的な理由の解決に向けて、今後、道としては、根本的な取組をどのようにするのか、最後に村木部長の見解を伺いたいと思います。
答弁 : 保健福祉部長
虐待防止に向けた今後の取組についてでございますが、虐待は、障がいのある方々の尊厳を傷つけるとともに、その自立と社会参加への大きな妨げとなりますことから、道におきましては、施設職員はもとより、障がいのある方ご自身につきましても、虐待に関する理解を深めていただくために、啓発用パンフレットを作成し、配布するなど、虐待防止に向けた意識啓発などに努めてきているところでございます。
また、毎年度、施設設置者を集めて行う集団指導や定期的に実施をしております実地指導におきまして、施設等に対し、虐待の未然防止の必要性の説明や発生時の速やかな報告を徹底するほか、施設職員等を対象とした事例に基づく実践的な研修会を開催するなど、虐待の防止に取り組んできているところでございます。
道といたしましては、今後とも、こうした取組の充実に努めてまいりますほか、新年度から、高齢者と同様に、虐待の兆候を把握し、安全で適正なサービス提供につなげることを目的といたしまして、利用者やご家族を対象とするアンケート調査を実施することを予定しておりまして、障がいのある方々が住み慣れた地域で安心して暮らしていくことができますよう、虐待の根絶に向けた取組を積極的に行ってまいる考えでございます。