北方領土における日ロ共同経済活動に関し、現地官民調査団が派遣されることとなりました。どのような方々がメンバーに加わるのか、何時から何時までどこに派遣され、どの様な調査がなされるのか等、質問しました。また道が今年度の本格運航を目指しているメディカルウイングを四島における医療支援に活用することは今後検討されるのかについても、道の見解を問いました。
平成29年北方領土対策特別委員会開催状況
開催年月日 平成29年5月17日(水)
質問者 北海道結志会 浅野貴博 委員
答弁者 北方領土対策本部 本部長、局長、課長
4月の日ロ首脳会談を受けての今後の道の取り組みについて
1.質問 : 首脳会談の全体的な評価について
4月27日、ロシアの首都モスクワで行われた首脳会談においては、元島民が行う墓参に航空機を活用することや、共同経済活動に関して四島に官民調査団を派遣することなどが合意されておりますが、今回の会談に対する道の評価、認識を伺います。
答弁:中野本部長
先般の首脳会談の結果に対する評価についてでございますが、先月の日露首脳会談におきましては、航空機を活用した墓参を6月中に実施することや8月末の歯舞群島への墓参時に出入域ポイントを追加すること、また、共同経済活動に関する四島への現地調査団を5月中にも派遣することについて合意がなされたところでございます。
道といたしましては、これらの項目につきまして、元島民や隣接地域の皆様のご意見を伺った上で、3月の政府要請や4月の岸田外務大臣への要請において要望してきたところでございまして、今回の合意は、北方墓参の改善や共同経済活動の実施に向け、具体的な進展が図られたものと受け止めているところでございます。
今後、両国間の交渉が一層加速いたしまして、北方領土の一日も早い返還の実現につながっていくことを期待しているところでございます。
意見:
北方墓参の拡充などが合意された一方で、今日、新聞報道もされておりますが、今年最初の国後島への自由訪問団が目的地に入られないという事態が、残念ながら開始早々に生じてしまっております。
今週末からのビザなし交流に私も参加させていただくのですが、今後、こうした四島との交流事業が安定的に実施されるよう、道におかれましても、政府に対してロシア側と交渉するように、また、交渉した内容がロシア政府、地方の出先機関の隅々まで伝わるような交渉をするように、道としての意向をしっかりと伝えていただきたいと思います。
2.質問:官民現地調査団について
官民現地調査団についてですが、どの様な専門知識を持つ方を、日ロのどちらから何名程度選ぶのか、四島のどこにいつ頃派遣して、どの程度の期間、どの様な調査を行うのか、そもそも調査団員の選定並びに組織に関して、道はどの程度の関与をできるのか、これらの点について道の認識を伺います。
また、調査団による調査結果は道民はじめ日本国民にきちんと公表されるべきだと思うのですが、どのような形で公表されるのか、更には調査結果が共同経済活動の実施にどのように活かされるのか、現時点で道が把握しているものを伺います。
答弁:山田課長
現地調査団についてでございますが、道におきましては、国の求めに応じ、訪問団メンバーに相応しい道や隣接地域関係者からなるリストを提示したところでありますが、国においては、現在、現地調査の時期や場所、団員の構成など実施に向けた詳細な検討を行っているものと承知しており、引き続き、隣接地域や道内の関係者が調査に参加できるよう必要な働きかけを国に行ってまいる考えでございます。
また、調査結果の取扱いにつきましては、現時点においては明らかにされておりませんけれども、共同経済活動の実施に向けた具体的な検討に活用されるものと受け止めておりまして、公表のあり方につきましても、国において検討されるものと考えているところでございます。
再質問:
先ほどの橋本委員からの質問への答弁にもありましたが、国の求めに応じて、道はリストを提示したとのことでありますが、国から道に対して訪問団メンバーに相応しい人のリストを作成する求めはいつあったのか、他都府県にも同じような要請をなされているのか。
また、先般、辻副知事や長谷川根室市長も訪問団に含まれるような新聞報道がありましたけれども、そのリストを道として公表するお考えはあるのか、まとめて伺います。
答弁:由川局長
現地調査団についてでございますが、道では、これまでの政府要請で、調査団の派遣につきまして要望を行ってきたところであり、先月の日露首脳会談での合意を受け、今月上旬に、国から道に対しまして、候補者リストの提示が求められたところでございます。
国におきましては、現在、現地調査の団員構成など実施に向けました検討を行っているものと承知しておりまして、他都府県への訪問団メンバーに関する照会につきましては明らかにされていないところでございます。
また、道が国に提示いたしましたリストにつきましては、情報管理の徹底を図る観点から、公表しないよう求められているところでございます。
3.質問:墓参における航空機活用について
首脳会談では墓参に航空機が活用されることでも合意がなされておりますが、それはもしかしたら本年度限りではないのかとも言われております。
道としても、先ほどご報告いただいた要望の中にもありましたけれども、従来より航空機を用いた高齢化している元島民の方々などの負担が限りなく減らされる形での墓参の実施を求めていたと承知します。今後も継続して航空機の活用がなされるよう、更には墓参のみならず航空機を用いて幅広く四島へ渡航できる範囲が拡大できるように、ロシア側と交渉することを政府に求めるべきだと思うのですが、その考えはありますでしょうか。
答弁:由川局長
北方墓参における航空機の利用についてでございますが、先月の日露首脳会談におきましては、航空機を利用した元島民による特別墓参の実現が合意されまして、6月中にも実施される予定となっているところでございますが、以後の取扱いにつきましては定かではございません。
道といたしましては、元島民の方々の平均年齢が82歳を超える中、北方墓参等の移動時間を短縮し、訪問団員の負担軽減が図られますよう、これまでも航空機等による往来につきまして、政府へ要請を行ってきたところであり、来月に見込まれる特別墓参の実施結果を踏まえつつ千島連盟とも連携の上、航空機等の利用の継続につきまして国への要望を検討してまいる考えでございます。
4.質問:メディカルウイングの活用について
四島交流事業における航空機の活用に関連して伺いますが、4月末の首脳会談に先立ちまして、3月18日に東京で開催された日ロ政府による北方領土における共同経済活動に関する公式協議の場では、日本側より観光、漁業、医療等についての提案がなされております。
また、その協議に先立って取りまとめられた道の「北方墓参等の改善及び共同経済活動に関する提案・要望書」においても、医療分野への参入が謳われております。今回の首脳会談でも、日本側から遠隔医療をはじめとする医療分野での協力を呼び掛けていると承知しております。
今後、北方領土との医療分野での協力が進み、更に墓参のみならず飛行機を活用できる範囲が広がっていけば、今日の道新にも出ておりますが、本年度から道が本格運用を目指しているメディカルジェットも四島の方々にも活用するということもあり得ると思いますけれども、この点に関する現時点での道の認識を伺います。
答弁:山田課長
航空機の活用についてでございますが、北方四島の住民に対する医療支援につきましては、これまで、国の事業として行われており、患者の搬送は、船舶を利用しているところでございます。
北方四島から本道への患者搬送に当たりましては、長距離の移動となることから、空路での搬送も有効と考えているところでございます。
意見:
メディカルウイングに関しては、実際に本格運航がなされてから、そして本道での運航実績を積み重ねてから四島に活用できるかどうかという検討が始まるのではないかと思いますが、一つの有効な手段となり得ると思いますので不断に検討を重ねていただきたいと思います。
5.質問:「北海道・ロシア地域間協力チーム」の役割について
5月9日、道本庁で「道・ロシア地域間協力チーム」の発足会議が開かれております。この会議は、日ロ間の人的交流や情報交換、ビジネス協力をより活発化させることを目指すものとされておりますが、北方四島における共同経済活動に対して、この会議はどのような関与をすることが想定されているのか、現時点での道の認識を伺います。
答弁:山田課長
北海道・ロシア地域間協力チームについてでございますが、道におきましては、昨年の日露首脳会談で、両国政府が、「8つの協力プラン」の具体化に向けて合意したことを受けまして、極東地域や欧露部を含めたロシアとの幅広い地域間交流を促進することを目的に、道内企業や金融機関、更には大学などをメンバーとする「協力チーム」を発足させたものでございます。
この取組におきましては、我が国の領土である北方四島における共同経済活動については、関与することはないものと認識しております。
6.質問:今後の周知のあり方について
昨年末の首脳会談から約5カ月が経過いたしました。共同経済活動の具体像は、徐々には固まってはきているものの、未だ完全に明らかにはなっておりませんし内容も固まっておりませんが、日ロ双方の協議も着実に進められていると思います。
一方で、様々な報道を見ても、共同経済活動がどのように領土問題の解決、つまり日本への四島への返還につながるのかが明らかでないことから、その意義を疑問視する論調も所々見られる訳であります。
道としては、改めて共同経済活動の意義と重要性について道民への周知、広報活動を、今年度は更に今取り組んでいただいているものに加えて、より強化をしていただきたいと思いますが、今年度予算で400万円が計上され、実施が予定されているセミナー等を含め、今後の道の具体的な広報活動としてどのようなものがあるのか最後に伺います。
答弁:由川局長
今後の周知のあり方についてでございますが、共同経済活動の意義などにつきまして、幅広く周知を行うことは、地域住民に加え、企業やビジネス関係者などが北方領土問題への関心を高めていくことにもつながっていくものと考えているところでございます。
このため、道が設置しております署名コーナーに、首脳会談の合意事項を記載いたしましたパンフレットを備え付けたほか、「北方領土の日」ポスターコンテストの作品募集の中でも周知を図ることとしたところでございます。
今後も、各種啓発事業の中で、共同経済活動に関する協議概要を紹介するパネル掲示を行いますとともに、SNSの活用も図るなど、積極的な周知に努めますほか、日露両国間の協議の進展などを踏まえながら、共同経済活動を広く周知するため、道内複数箇所での効果的なセミナーの開催について、検討してまいる考えでございます。