前回の委員会で質問した、道立病院への地方公営企業法の全部適用実施の是非について、ついに高橋知事が明言をしました。
2017年度からのスタートを目指して、必要な手続きを進めるとのことです。
これを行うだけで、道立病院の経営が一足飛びに改善するとは考えにくいのですが、事業管理者の人選によっては、新たな道が拓けるかもしれません。
その人選をどうするか、他県の成功例、失敗例をどう学び、活かしていくのか等、質問しました。
平成27年第4回北海道議会定例会 保健福祉委員会(前日) 開催状況
開催年月日 平成27年11月25日(水)
質問者 北海道結志会 浅野 貴博 委員
答弁者 道立病院室長 山中 博
道立病院室参事 志賀 利美
道立病院室参事 竹澤 孝夫
道立病院の経営形態見直しについて
これまで様々な議論がなされておりました、北海道立病院の地方公営企業法全部適用について伺ってまいりたいと思います。今月12日の決算特別委員会において、高橋はるみ知事が、この道立病院の経営形態見直し関して「2017年度を目指して具体的な作業に着手したい」と2017年度から事業管理者を置く方針を明言をされました。このことを踏まえ、以下質問させていただきます。
1.質問 : 全部適用決断の理由について
当委員会でも何度か質問させていただきましたが、2017年度から道立病院に事業管理者を置くことを決断するに至った理由は何でしょうか。改めてそのメリット、どのようなものを見込んでいるのか、説明を願います。
答弁 : 道立病院室長
経営形態の見直しについてでありますが、医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、道立病院の経営改革を進めていくためには、病院経営の自由度を高めて経営の効率化を推進していかなければならないと考えているところでございます。
経営形態を地方公営企業法の全部適用に移行した場合には、病院事業を専掌する管理者を設置し、その専門的な知識や経験に基づいて経営改革が実践できること、病院事業独自の手当など勤務条件の設定が可能となることで医療従事者確保策の強化が図られること、多様な職種の職員を柔軟に採用・配置することで、収益確保の充実が図られることなどの効果が期待でき、新たに策定する改革プランの下で経営改善の実効性を高めていくためにも、経営形態の見直しが必要であると判断したものでございます。
2.質問 : 事業管理者の人選について
ただ今、病院経営の自由度、経営の効率化というお話がありましたけれども、これらを進めることができる事業管理者、誰を選ぶのかその人選が最大の課題になると思うんです。
これまで何度も質問させていただきましたが、道内にある6つの道立病院それぞれ異なった使命を帯びております。高度医療を担う病院もあれば、私の地元の羽幌のように少子化、高齢化が進んで人口減少著しい地域の広域医療を担うところもあれば、様々な役割をそれぞれ担っているわけです。そうした道立病院を統括して、経営を立て直していくには、どのような経験、能力を有している人を、いつまでに選ぶのか。また、選んだ事業管理者は特別職の身分になると思うんですけど、報酬はどのくらい充てるのかだとか、道職員経験者から選ぶのかだとか、人選に関してのスケジュール感、今どのような想定をしているのか説明を願います。
答弁 : 道立病院室参事
病院事業管理者についてでございますが、直近で全部適用に移行しました9県を対象に昨年実施しました各県調査では、マネジメント体制の強化や迅速な意思決定のために、全ての県で病院事業を専掌する管理者を設置し、そのうち7県で管理者に医師が選任されているところであります。
また、管理者が医師である場合には、医療に関する知識を病院経営に生かしながら、医療ニーズへの迅速な対応、医療現場と一体となった経営改革の推進、医育大学との連携強化が図られるとい
った回答が得られたところであります。今回、プラン改定検討会議からも病院経営に従事した経験を有する医師を管理者に設置することが望ましいとのご意見をいただいたところでありまして、今後、管理者の処遇や人選については、他県における直近の状況を更に調査するとともに関係者のご意見を伺うなどして検討を進めていく考えであります。
3.質問 : 移行に向けた準備期間について
事業管理者の人選だけではなく、様々な諸手続を2017年度からの全部適用への移行開始ということであれば、残された期間約1年4カ月ありますけれど、この期間の中で済ませていかねばならないと思っております。
これらの手続きをどのようなスケジュール感を持って済ませていくのか、おおよその見通しで構いませんので説明願います。
答弁 : 道立病院室参事
移行に向けた今後の作業についてでございますが、全部適用への移行に向けましては、現在、検討を進めております地域医療構想や新たな病院事業改革プランの検討の中で、道立病院が地域で果たすべき役割など、病院事業の今後の体制のあり方について、方向性をとりまとめることが必要であります。
今後、こうした検討と並行いたしまして、管理者の設置や組織体制などの検討を進め、平成28年度中に、病院事業条例の一部改正や関係規定の整備など、所要の手続きを進めてまいりたいと考えております。
他県における先行事例の研究について
4.質問 : 他県における経営改善事例について
所要の手続き、事業管理者の人選を進める中でも、私たちは幸いにして他県における先行事例がありますので、そこから様々な成功要因などを研究することができると思うんです。新聞報道を見ても24の県で事業管理者を置いた事例があると伺っております。道としても既にその研究は始めておられると思うんですが、その24県の中でどれほどの県で経営が改善したという事例があるのか、またその要因は何であるのか、道として今の段階までに研究して把握しているものについて教えてください。
答弁 : 道立病院室参事
他県における事例についてでございますが、平成27年4月1日現在、全部適用により病院事業を運営している県は24県ございまして、昨年度、直近で全部適用に移行しました9県について調査を実施し、そのうち6県で収支改善が図られるとともに3県で一般会計負担金が減少するなど一定の経営改善が見られたところであります。
その要因といたしましては、多くの県で、全部適用後も患者数が減少傾向にある中で、診療報酬加算の積極的な取得促進等により、平均診療単価が増加したことや、勤務環境に応じた様々な手当の設定や採用条件の緩和等によりまして医師・看護師等が確保されたことなどから、医業収益が増加したことが考えられます。
5.質問 : 制度設計に向けた検討の進め方について
他県の成功事例を参考にと申し上げましたけど、相反するようですが、我が北海道は他県と比較しても広域分散化という際立った特徴を持っています。他県の成功事例が必ずしも本道に馴染まない、適さない場合もあると思うんです。
他県の成功または失敗事例を参考にした上で、本道の特徴を踏まえた事業管理者の選定等、今後の対応が求められると思うんですが、このことについて、道の見解を教えてください。
答弁 : 道立病院室参事
今後の検討の進め方についてでございますが、昨年度実施しました他県調査におきまして、精神病院を含む複数の病院を運営していること、県立病院が県庁所在地になく、各病院が県内に分散していることなど、北海道に似た経営環境にあります鹿児島県については、平成18年4月に全部適用に移行し、入院・外来患者が減少する中で、単価増により収益を増やし、平成21年度以降単年度黒字化を実現しております。
道といたしましては、鹿児島県の取組はもとより、全部適用に移行し、収支改善に成果を挙げている他県の取組についても更に調査を実施しながら検討を進めていく考えであります。
事業管理者と知事部局との連携について
6.質問 :
事業管理者についてですが、経営の自由度、効率性を高める過程でですね、例えば極端な事例かもしれませんけれど、地域として必要とされている医療を削減したりだとか、または病院スタッフの人件費など報酬を抑えるなどの、道立病院にふさわしくないと思われる合理化を進めた場合、道立病院本来の使命が揺らぐことも懸念されるんじゃないかと考えております。そうしたことが無いように全部適用移行後も知事部局として道立病院、事業管理者と適切な関与が必要だと思うんですが、その辺についての考えを教えてください。
ぜひ適切な知事部局の関与のもとで、事業管理者と連携をした新しい経営がなされればと考えております。
答弁 : 道立病院室参事
全部適用後の知事部局との関係についてでございますが、地方公営企業法の規定では、病院事業を専掌する管理者を設置した場合、管理者には、職員の任用、組織編成や人員配置、勤務環境に応じた独自手当の設定など一定の権限を付与できるものの、予算の調製や議案の提出権などは知事に留保されておりますことから、道の基本的な施策の方向に沿って病院事業を運営していくこととなります。
移行に向けた準備期間について
7.質問 : 累積欠損金の解消について
続きまして、全部適用以降後の累積欠損金の解消について伺います。言うまでも無く道立病院の最大の課題は約522億円にものぼる累積欠損金をどのように解消していくかということだと思うんです。まず、前提としてこの累積欠損金の解消、通常どのような手段を持って解消されるのか、その基本的なところを教えてください。
答弁 : 道立病院室参事
累積欠損金の解消についてでございますが、道立病院の累積欠損金は、平成26年度末において、これまで地元自治体へ移管した病院や廃止した病院に係る分も含め約521億8,700万円となっているところでございます。 累積欠損金を縮減するには、地方公営企業法の規定において、毎年度の純利益をもって充てる、資本剰余金を取り崩す、又は資本金を減資するのいずれかの方法によることとされているところでございます。
8.質問 : 累積欠損金の解消に向けた対応について
新しい事業管理者が選定をされて2017年度から新しい経営体制がスタートしたとして、様々な工夫を凝らして利益を出したとしてもですね、その利益が例えばスタッフのモチベーション向上に繋がるような待遇の改善に向けられるよりもこの累積欠損金の解消、今教えていただいた三つの方法を持って解消に充てられるということであれば、なかなか働く皆さんのモチベーションの向上に繋がらなくて、結果として病院経営の充実、改善には繋がらないんじゃないかなという懸念もあるところでございます。累積欠損金の扱いについて、例えば、我が会派の議員がさきの決算特別委員会でこのような質問をしました。「一般会計が病院事業会計に対する長期貸付の債権放棄をする。そのような方法で解消してまっさらな状態で道立病院の新体制を新たな事業管理者の下でスタートを切れる状態を作るべきではないか」と。これについて高橋知事は11月12日の知事総括の場でですね「新たな改革プランの実効性を高めていくためにも、累積欠損金の扱いも踏まえ、経営形態を見直すことが必要である。」と答弁をされております。この答弁を踏まえて、今、道としてこの累積欠損金の扱いどのようにするのか考えているところを説明してください。
答弁 : 道立病院室参事
累積欠損金の解消に向けた対応についてでございますが、道といたしましては、病院事業の経営改革に向けて、道立病院の役割や経営効率化の取組などを明確にした新たな改革プランを来年度中に策定することとしており、その実効性を高めていくためにも、経営形態を見直すこととしたところでございます。
経営改革に向けては、累積欠損金の解消は大きな課題と考えておりますので、その扱いにつきましては、今後、新たな改革プランの策定を進める中で、プラン改定検討会議のご意見も伺いながら検討してまいる考えでございます。
再質問 :
今のご答弁にプラン改定検討会議の意見も伺いながら検討するということですので、我が会派が主張するようなこともまあ否定はされないとは思うんですけど、あくまでさきに答弁いただいた三つの方法をもって累積欠損金の解消を考えていくのが第一であると、そういう認識を示されたものと理解してよろしいでしょうか。
答弁 : 道立病院室参事
累積欠損金の解消に向けてでございますが、病院経営の効率化を図るためには、経常収支比率や医業収支比率などを経営指標として、適切な数値目標を設定することが必要であると考えており、特に、経常収支比率につきましては、公立病院が担っている不採算医療等を提供する役割を確保しつつ、経常収支の黒字化を目指さなければならないと考えております。
道といたしましては、経常収支の改善に向けた適切な数値目標の設定も含め、プラン改定検討会議から、ご意見をいただいた上で、累積欠損金の取扱についても検討してまいる考えでございます。
再々質問 :
累積欠損金の解消について、あくまでプラン改定検討会議に伺いながら検討していくということなんですけど、522億ある累積欠損金を例えば何年度までにどの程度の水準まで減らすだとか、今ご答弁いただいた病院経常収支比率や医業収支比率など、経営指標をどの時点でどれくらいまでもってくるかだとか、具体的な数値目標を今後定めるんでしょうか。
答弁 : 道立病院室参事
経営指標に係る数値目標の設定についてでございますが、病院経営の効率化を図るためには経常収支比率や医業収支比率などの経営指標として適切な数値目標を設定することが必要であると考えております。
特に経常収支比率につきましては公立病院が担っている不採算医療等を提供する役割を確保しつつ経常黒字化を目指さなければならないと考えておりまして、道といたしましては、プラン改定に向けて設置をいたしました検討会議から、道立病院が果たすべき役割や機能についてご意見をいただいた上で、経営効率化の取組を確実に進捗させていくことができる適切な数値目標を設定していく考えでございます。
質問 :
はい。わかりました。
地域医療構想策定との関連について
9.質問 :
最後に一点伺います。先般道として、2016年度内を目途にして策定が求められている地域医療構想。これに合わせる形で、2025年における本道の各二次医療圏域で必要とされると見込まれる病床数の推計値を出されました。 これについてはこの委員会の中でも各委員の先生方からその推計に従った機械的な病床数の削減がされるんじゃないかという懸念、声が上がったところで各地域の皆様は心配されていると考えていると思うんです。新たな事業管理者が置かれる形となって病院経営の効率化が進められる中でこの推計に沿った病床数の削減が実際に事業管理者によって行われる、または定義をされて実際にそのような削減がなされることがあるんじゃないか、という心配の声も私の地元からもあげられているところです。この懸念が現実のものになるんじゃないかという恐れがあるんじゃないかと思うんですが、道としての見解を最後に伺って質問を終わります。
答弁 : 道立病院室長
地域医療構想策定との関連についてでありますが、本年7月に公表いたしました病床数の推計につきましては、病床を強制的に削減していくためのものではなく、地域医療構想策定に向けた議論の基礎となるものとして、2025年において必要とされる医療の規模について推計したものでございます。
現在、二次医療圏毎に医療機関や市町村など関係者で構成いたします圏域調整会議におきまして、28年夏頃を目途に地域の必要病床数や医療提供体制の構築に向けた地域医療構想の策定作業を進めているところでございまして、道立病院につきましては、全部適用への移行にかかわらず、各地域におけます議論を踏まえ、引き続き、その役割を果たしていく考えでございます。